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プロ野球

ようこそ、株式会社NPB(日本プロ野球)へ 【第5回 球界の名脇役“人材育成・R&D研究開発部”:オリックスバファローズ、千葉ロッテマリーンズ】

前回に引き続きドラフト会議を“株式会社NPB(日本プロ野球)という会社の選手配属先を決定する会議”、と置き換えて
「どのチーム(部署)がどういう特色があるのか?」
「その特色を今回のドラフト会議でどう反映してあるのか?」
「その部署(球団)っぽい雰囲気に合致しているのか?」
という独自の切り口で勝手にお送りしているこの企画。

 5回目の今回は、プロ野球界の名脇役であり、“球界のリサーチ&デベロップメント機関”ことオリックスバファローズと千葉ロッテマリーンズを見ていこう。

※ちなみに今回もこの先の各球団の特徴、役割付けなどは筆者の超主観的な妄想であることも添えさせていただく。

【第1回 球界の人事部:東京ヤクルトスワローズ、埼玉西武ライオンズ】編はこちら
【第2回 球界の人気部署営業本部:読売ジャイアンツ 、阪神タイガース】編はこちら
【第3回 “野球人気再考戦略のマーケティング部”:北海道日本ハムファイターズ、横浜DeNAベイスターズ】編はこちら
【第4回 次世代の“野球選手”の登竜門・広告宣伝部:福岡ソフトバンクホークス、広島東洋カープ】
【第6回 冷静沈着派・自由闊達改革派 “球界の個性的仕事人が集う経営企画室”:中日ドラゴンズ、東北楽天ゴールデンイーグルス】

これまで紹介してきた部署とはパッと見は地味に映るかもしれないこの2つの部署だが、プロ野球人気を影で支える縁の下の力持ちとしては、決して欠かすことはできない。プロ野球の長い歴史においては比較的その “脇役”的な立ち位置が多い部署ではあったが、その歴史の中でチーム全体としても精力的にトライ&エラーを繰り返し、野球界における名勝負・名場面に彩りを加えてきた部署でもあるのだ。
主役がいれば脇役がいる・・。それは、勝負の世界、ことプロ野球という人気商売ならなおのことこのコントラストが強くなるわけだが、この“助演男優賞”的な2部署の特色や姿勢を頭に入れておくとよりプロ野球が面白く映るかもしれない。

 まずは、オリックスバファローズから紐解いてみよう。

みなさんオリックスバファローズと言って、まず思い出すものはなんだろうか?やっぱり我らが日本プロ野球のレジェンド・イチローを生み出した球団という印象が一番強いかもしれない。

または、阪神大震災の復興を願い【がんばろう神戸】のキャッチフレーズを掲げ、躍動していた1995年の姿が今も懐かしく、強烈な印象が残っている人も多いだろう。当時は仰木彬監督という“プロ野球に於いて希代の名プロデューサー”がおり、イチロー、大島公一の“背番号51/52”コンビや田口壮の外野手転向、パンチ佐藤という飛び道具に毎日のように変化する打順は”猫の目打線“と呼ばれ相手を撹乱・・この辺りの振る舞い方が、筆者にとって”R&Dセクション“の印象を刷り込まれたキッカケなのかもしれない。

それ以降は、正直苦しい戦いを強いられるシーズンが多くなっているが
球団の姿勢やドラフト戦略においては、脈々とこの“トライ&エラー”精神が残っているようにも個人的には感じる。
特に、ドラフト戦略においては、毎年新人選手の大量一括採用の傾向が強い。
世の中の企業でもこうした“大量一括採用後に適材適所”という傾向がある会社もあるが、バファローズがこの傾向なのは多岐にわたる事業を展開している親会社オリックスの球団・・ということに起因するのかは偶然の一致か。将来性のある選手を数多く配属させ、時にはポジション転換を図りながらチーム全体として最適化してゆく…というチーム作りという印象で、例外なく今年もその“意思”を感じられる人選となった。

一巡目では、高校生ナンバーワン遊撃手の小園海斗(報徳学園)を指名。この地元関西の目玉選手は重複抽選で外しながらも、高校生としては同等と言っても良い評価、むしろ守備などの堅実性においては小園を凌ぐ評価もあった太田椋(天理)の指名に成功。打撃投手である父親と同じ部署に配属というおまけ付き。群雄割拠が続くオリックスバファローズ内野陣にはまた一つの若い刺激が加わった。そこに立て続けに刺激を加える存在が二巡目指名の頓宮裕真(亜細亜大)だ。この頓宮を本職の捕手ではなく、“内野手”として指名し、引退の小谷野の後釜のホットコーナーに育て上げる目論見らしい。さすが球界のリサーチ&デベロップメント。その他にも小柄ながらも投手ではMAX147km/hを計測、走攻守3拍子揃った五巡目の宜保翔(未来沖縄)やPL学園ラスト戦士とも呼ばれる七巡目中川圭太(東洋大)など豊富な人材が配属。
投手陣は、三巡目の荒西祐大(ホンダ熊本)、四巡目には14人兄弟の三男坊左腕の富山凌雅(日本生命)、六巡目左澤優(JX-ENEOS)の即戦力社会人の3名が“転職”で配属。絶対的エースが不在気味のチーム事情の中で、この3名が新たな化学反応を起こせるかに注目だ。

昨今のオリックスは興南高校(沖縄)で甲子園春夏連覇→立教大学経由で15年ドラフト3位大城滉二も内野手入団だが、その身体能力を活かすために外野手へ、打力を生かして本職のキャッチャー以外にも挑戦させている伏見寅威の例など入団以降の“人材開発”にも余念がない。そのお家芸である人材開発の結果として、オリックスバファローズ発の新たなスター選手の台頭をファンもプロ野球界も望んでやまない。

一方、パ・リーグもう一つの“リサーチ&デベロップメント第2課”こと千葉ロッテマリーンズ。
プロ野球界の中においても、以前は非常に地味な存在としてのイメージが強く“トライ&エラー”といえば、90年代に当時は斬新なピンクとグレー基調の加藤シゲアキもびっくりのユニフォームくらいなもんで、1998年は黒木知宏があと1球からの被弾で17連敗を記録した“七夕の悲劇”などチームとしても不遇の時代を長く過ごした歴史がある。

ただ、昨今においては、ペナントレースで勝ちきれないシーズンが多いものの、背番号26(野球の試合でベンチ入りできるのは25人なので、ファンはそれに次ぐ26人目の選手であるという意味)をファンのために与え、選手とファンが一体となったチームを目指し、チーム運営においても生え抜き選手のコーチ登用や地域に根ざしたチーム組閣、ファンサービスに対しても積極的な取り組みが多い部署ゆえに来季はよりグラウンドレベルでの臨場感を感じられる“ホームランラグーン”と呼ばれるエリアも設置予定など多方面において前向きな“リサーチ&デベロップメント”の動きが目立つ。

そうした地道な活動に野球の女神は微笑んだのか、今年のドラフト会議においても、ファンが喜ぶ人事配属となった。
何よりも一巡目で藤原恭太(大阪桐蔭)を重複指名抽選の結果で引き当てたのは、大きいだろう。ロッテファンにとっては待望のスーパースター候補であり、明るい話題だ。先日背番号2で正式契約を終え、初めて袖を通したロッテマリーンズのユニフォームからは、これからの様々なロッテの未来を想像させてくれる。
春から一軍に帯同させ、開幕一軍に入れるのか?
そうするとやっぱりセンターを守るのか?
打順は何番くらいを打たせるんだろう?
安田と平沢とクリーンナップとかもあるのか?
(もし、これで丸がロッテに来てくれていたらその相乗効果はいかほどかとも…)

この人材開発シナリオには、ロッテファンならずともプロ野球ファンの胸が熱くなる。その他、野手では、七巡目に井口監督の高校の後輩にあたる松田進(ホンダ)が入団。高校、大学時代から注目され続けてきた大型内野手は、昨年度覚醒した井上晴哉とともに右の大砲としての期待がかかる。

また、吉田輝星のライバルとしてしのぎを削った四巡目山口航輝(明桜高)はプロでは打者として勝負する予定。ロッテの人材開発力が吉と出るかに乞うご期待だ。
投手陣も経験豊富な有望株たちが集う配属になった。
二巡目の東妻勇輔(日体大)は、松本航(日体大→西武2018D1位)とダブルエースとして活躍。上背はないものの、MAX155km/hとキレのあるスライダーと負けん気を前面に出すファイティングスピリッツ満載な投球は新たな“幕張の防波堤”となりうる可能性を秘める。三巡目の小島和哉(早稲田大)は浦和学院時代には春選抜優勝を経験、大学でも20勝を挙げる活躍で斎藤佑樹以来の投手主将として活躍。安定感のある実践派の貴重な左腕は今のマリーンズ投手陣に新たなオプションという変化をもたらすだろう。
上位勢の二人に続き五巡目の中村稔弥(亜細亜大)や六巡目の地元習志野高校の古谷拓郎(習志野)、八巡目の土居豪人(松山聖陵)など将来性ある投手が揃った。

日本プロ野球界全体の活性化に向けて、この2つの部署がさらに躍進していくことが、プロ野球をもう一回りふた回り盛り上げていく。両部署とも若手に好人材が多く、その“リサーチ&デベロップメント力”でイノベーションが起こる現場を見届けたい、またはあまのじゃく的にあえて“これからの球団のタイムリーな成長を応援したい!”という方には是非オススメしたい。

次回は、株式会社NPB(日本プロ野球)の中でも冷静沈着、戦略的にきっちり仕事する“プロ野球界の経営企画部”こと【中日ドラゴンズと東北楽天ゴールデンイーグルス】を紹介します。

文・キヅカキラ氏(@KZSK