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社会人野球

田中正義をも上回るアマ球界最速右腕。中塚 駿太(白鴎大)

「時は来た!ドラフト指名を待つ男たち」

中塚 駿太 なかつか・しゅんた
つくば秀英高→白鴎大
投手・右投右打・191センチ102キロ・1994年12月26日生(21歳)
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「1アウトも取れなかった投手が先発して5回まで投げるなんて想像もできなかったですし、考えられないですね」
 まるで他人事のように聞こえるが、それが中塚の偽らざる本音だろう。真剣な表情で、「自分で言うのもおかしいですが、この大学で1番成長したのは僕だと思います」とも話す。
 昨年まで登板機会は少なく、今春にようやく公式戦初勝利を挙げた。まさに未完の大器と言いたくなる大型右腕は、今ようやく長い眠りから醒めつつある。 今春のリーグ戦で叩き出した157km/hは、今回のドラフトの目玉候補に挙がる田中正義(創価大)をも1km/h上回る現アマチュア球界最速の数値だ。

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 一方で、中塚を勝利、いや登板機会から遠ざけていたのは制球力だ。
「高校時代は4番手か5番手。“ただずっと練習しているヤツ”という感じでした」と自身で振り返る。大学入学後もリリースポイントやフォームが安定せず、入学直後は、登板しては試合を壊す状態。「もう辞めようかな」と思うことが何度もあったという。それでも、1学年上の塚田貴之(現オリックス)や両親の励ましもあり、退部を翻意。だからこそ、塚田と同じ舞台に行きたい気持ちと、両親へ「今まで自分のために親がつぎ込んでくれたすべてのお金を、活躍して返済したい」と話す。その恩返しの気持ちが大きなモチベーションとなり、厳しいトレーニングや試行錯誤を繰り返し、徐々に徐々に感覚を掴んでいった。
 そして今春は最終週で初先発初勝利。今秋は初完投を初完封で果たし、ドラフト上位候補左腕の笠原祥太郎(新潟医療福祉大)に投げ勝った。
 この成長に、入学時から中塚を指導してきた黒宮寿幸監督(昨年までは助監督)は「普通の人の努力が10とするなら、努力の概念がなかった彼は4年間で100倍くらい努力したと思います」と精神的成長を称えるだけでなく、「下半身が安定しました。エンジン(ボディ)が大きいからこそ、以前は下半身がブレていましたが、そこが安定し強いボールが行くようになりました」と技術的成長にも目を細める。
 もちろん、まだまだ未完成な部分は多く残す。それでも、その部分が大きな伸びシロに感じるだけのロマンが、中塚の豪速球には詰まっている。

文・写真:高木遊

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