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社会人野球

退部乗り越えた巨人ドラ1と週5アルバイトのエースが掴んだ大学日本一

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★退部乗り越え、ドラフト1位に

「あっという間の4年間でした。最高の春(日本一)を経験でき、秋も全員で神宮に行きたかったですが、チームメートと指導者の方々に感謝しています」
 前日に巨人からドラフト1位指名を受けた吉川尚輝内野手(4年・中京高)は清々しい表情で語った。
 ドラフト翌日の22日に行われた東海地区大学野球秋季選手権の初戦で中京学院大は皇学館大に3-4で敗戦。明治神宮大会出場はならなかった。だが、春の日本一戦士たちに涙は無かった。

 このユニフォームに袖を通した3年前には、想像すらつかなかった状況に吉川は置かれている。都内の強豪大に推薦入学が決まっていたものの、練習や生活に馴染めず退部。1度は野球を続けることさえ諦めたが、恩師や両親の説得で中京学院大に入学した際も、プロ野球への意識はほとんどなかった。だが、2年冬に大学日本代表の選考合宿に招集されると、「自分の居場所がないほど周囲の選手に圧倒されました。そこから、“この人たちを超えたい”と思うようになりました」と意識が大きく変わった。
 そして今春には自らの決勝打で、自身と大学にとって初となった全国大会に出場すると、本人や周囲も驚く日本一。その後の日米大学野球では侍ジャパンのユニフォームを着て、MLB予備軍と対峙した。
 最後の試合となったこの日は、3打数無安打ながら瞬発力に優れた守備や走塁で持ち味を発揮した。6回には、四球で出塁すると「捕手が球を捕ってから長く持つクセがあったので、打者に集中する場面では行けると思いました」と相手心理を読み、三盗を成功させるなど持ち味を見せた。
 今後の抱負については「気持ちで負けたら終わり。積極性を持って戦っていきたいです」と力強く語った。

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★週5日のアルバイトで得たもの

 吉川と同じく清々しい表情で「やりきったという気持ちです」と試合後に語ったのは、エース左腕の柳川優太投手(4年・大垣日大高)だ。
 もともとは経済的な事情もあり、大学で野球をするつもりはなかった。だが、中京学院大の近藤正監督が声をかけてくれたこともあり、生活費を稼ぐための週5日のアルバイト、野球、学業すべてに力を注いで、ハードでありながらも充実した日々を送ってきた。
 そして、今春は自身も最優秀投手に選ばれる活躍で日本一に。「自信になりましたし、支えてくれている人がこんなにいるんだなと思いました」と野球に対する意識はさらに上がった。一方で、「全国大会や大学日本代表選考合宿でレベルの違いを感じました」とプロ志望届は提出せず、社会人野球の東邦ガスへの入社を決めた。
「社会人で腕を磨いてプロに行きたいです」と決意を語る。また、日本一を自分のことのように喜んでくれたアルバイト先には「野球だけでは出会えない人たちと出会うことができ、コミュニケーションを取ることの大切さを学びました」と感謝の気持ちを話した。

 吉川と柳川ともに、高校を卒業する際には夢にも思わなかった今がある。ここに至るまでに、多くの苦労があったからこそ、周囲への感謝の気持ちも人一倍感じているように思えた。
 プロ野球と社会人野球、フィールドは異なるが、新天地でのさらなる飛躍を期待せずにはいられない。そして、いつか2人の対戦をトップレベルの舞台で見てみたい。

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文・写真:高木遊