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「ホームランラグーン」はロッテの野球を変えるのか?【NISSAN BASEBALL LAB】

ロッテの選手がハイタッチしている所

写真提供:共同通信社

■ロッテ打線が本塁打を量産

図1 2015~19年ロッテ1試合当たりの本塁打

 1試合あたり2.08本の本塁打が飛び出している今季のNPB。これは過去10年で最多だった昨季の1681本を上回るペースだ。そんな中で、今季本塁打数を大きく増やしているのがロッテである。

 ロッテは昨季まで4年連続でリーグ最少の本塁打数に終わるなど、慢性的な長打力不足に悩まされていた。特に深刻だったのが日本人スラッガーの不在で、これは昨季井上晴哉がチーム最多の24本塁打を放ったが、チームの生え抜き選手で20本塁打をクリアしたのは、09年のサブロー以来9年ぶりだったことからもうかがえる。

 しかし、今季は本拠地・ZOZOマリンで行われた開幕3連戦で6本塁打が飛び出すなど、交流戦前の時点で昨季1シーズンの約85%にあたる66本塁打を記録。このペースで打ち続ければ、チーム本塁打が9年ぶりに100本に到達するのも時間の問題だろう。

■「ホームランラグーン」の新設

2018・19パ・リーグ本居地:本塁打パークファクター表1

 本塁打が増えた要因は、今季新たに設置された「ホームランラグーン」の存在が大きい。本塁打の多寡は選手の力量もさることながら、球場の大きさ・性質によって左右される。
 
 参考までに、2018・19年のパ・リーグ本拠地球場における本塁打の出やすさをパークファクターで示したのが表1だ。

 パークファクターとは球場ごとの数値の偏りを表す指標で、今回の場合は1を上回れば本塁打が出やすく、下回れば出にくいことを表す。昨季までロッテの本拠地・ZOZOマリンは、両翼99.5メートル、中堅122メートルと標準的な大きさだったものの、外野スタンドの場外に広がる東京湾から吹く風のあおりを受け、外野への飛球が押し戻されるシーンが多々あるなど、打者不利の球場であった。

 つまり、ロッテの本塁打数がなかなか伸びなかったのは、“本塁打の出にくい球場”が本拠地という環境面も大きく影響していたと考えられる。そんな状況の中で、今季は左中間と右中間に既存のフェンスから最大4メートルせり出した観客席「ホームランラグーン」を新設。

 本塁打パークファクターも、今季のZOZOマリンは1を超えており、比較的“本塁打の出やすい球場”であることを示している。実際に今季ZOZOマリンで生まれた66本塁打のうち、14本は「ホームランラグーン」に飛び込んだもので、この中には昨季までであれば外野へのフライアウトとなっていた打球も少なくない。

■ロッテの外野フライ割合が激増

2015~19年ロッテ:外野フライ割合図2

2018・19年ロッテ:主な打者の外野フライ割合の差表2

 しかし、ロッテの本塁打増加は「ホームランラグーン」の存在だけでは説明できない。いくら球場が狭くなったからとはいえ、打球がゴロになれば柵越えとなる可能性はゼロであり、本塁打を放つためには外野へ飛球を飛ばす必要がある。

 そこで注目したいのが、全打球に占める外野フライの割合だ。今季のロッテは開幕から2カ月の時点ではあるが、過去10年のNPBで最も高い外野フライ割合44.2%を記録。

 昨季は39.2%と決して高くなかっただけに、昨今メジャーリーグでフライボール革命が浸透するなど、フライの有用性が実証されたタイミングと本拠地が狭くなったタイミングが重なり、チームとして意図的にフライを狙う方針を掲げている可能性も考えられる。

 特に中村奨吾や角中勝也といった中距離ヒッターの外野フライ割合が大きく上昇しており、キャリアハイのペースで本塁打を記録。彼らを筆頭にロッテの選手は、総じて狭くなった本拠地球場に適した打撃スタイルへ変貌を遂げており、本塁打の増加に拍車をかけている。

■一方で投手受難の球場に…

 一方、プレーする条件は相手も同じで、投手の視点からすれば、本塁打を打たれやすい環境に変わったということを忘れてはならない。実際に今季の被本塁打率は、昨季の0.91から1.12に悪化したが、被本塁打が増えることは球場が狭くなった以上、ある程度予想されていたことで、投手にできることは、いかに長打のリスクを抑えるかということである。

■長打のリスク軽減に必要なのは、三振とゴロ

2015~2019年ロッテ:奪三振率図3

2015~2019年ロッテ:ゴロ割合図4

 長打を未然に防ぐ方法は、大きく分けて2つある。まずは、打球を前に飛ばされないことだ。つまり、奪三振を増やすのである。ロッテはもともと、奪三振の多いチームではなかったが、今季は奪三振率を昨季の6.40から7.60に上昇させており、打者を確実に打ち取るケースが増えている。

 もう1つがゴロを打たせ、打球を上げさせないことだ。ロッテは15年からリーグ平均水準のゴロ割合をキープしており、今季も一定の割合でゴロを打たせている。上記の数値を踏まえると、ロッテの投手陣は球場が狭くなったマイナス面をある程度食い止められる投球内容を見せており、これらの要素だけではないものの、結果としてZOZOマリンでの防御率は、現時点で昨季の3.92から3.60へと改善させている。

■球場の大きさは野球を変える

 野球におけるグラウンドの広さや形状は、本拠地球場の特徴によって、各球団のチームカラーに影響を及ぼすほど、重要な要素である。例えばソフトバンクは15年に「ホームランテラス」が設置されてから本塁打が増え、広い札幌ドームを本拠地とする日本ハムは、本塁打を多くは望めないため、四球を選び、足を絡めながら、得点を積み上げていく攻撃スタイルだ。

 今季、本拠地・ZOZOマリンに「ホームランラグーン」が設置されたロッテも、ここまでの戦いぶりを見ると、狭くなった本拠地を味方につけているようだ。さらにロッテはここ数年、平沢大河、安田尚憲、藤原恭大といった将来有望な野手をドラフト1位で獲得しており、彼らが能力を発揮しやすい環境になったともいえる。

 「ホームランラグーン」の存在は、ロッテ待望のスラッガー誕生を後押しするかもしれない。

※データは2019年6月3日時点

文:データスタジアム株式会社 山内 優太