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社会人野球

トヨタ自動車が歴代最多タイの7回目の日本選手権制覇!2024年の社会人野球3大大会を振り返る

年間王者を決める社会人野球日本選手権大会の決勝戦にはトヨタ自動車とHondaが勝ち上がり、トヨタ自動車が2大会ぶり7回目の王者に。2024年度の社会人野球を主要大会ごとに振り返ってみよう。

第95回都市対抗野球大会

2024年7月19日から12日間、全国から各都市を代表する全32チームが東京ドームで激戦を繰り広げた都市対抗野球大会。昨年優勝の豊田市・トヨタ自動車がシードで出場も初戦で浦添市・沖縄電力に1-2で敗れるなど波乱もあり、決勝は横浜市・三菱重工East(西関東第1代表)と仙台市・JR東日本東北(東北第1代表)が初の栄冠を争った。

都市対抗野球は文字通り“都市対抗”ということで、各地区代表のチームが同地区の地方予選で敗退したチームから最大3名まで選手をレンタルすることができる独自のシステムを採用しているが、その補強選手が大活躍した。JR東日本東北は、TDKの小島康明が4試合中3試合で先発し2勝を挙げると、七十七銀行の長嶋亮磨も打率5割をマーク。三菱重工Eastは、東芝から補強の山下悠介が準決勝までで15打数9安打の打率6割超え、同じく東芝の齊藤大輝も2回戦で本塁打を放っている。

決勝戦は三菱重工Eastが終始ゲームをリードし、打ってはキャプテンで1番の矢野幸耶が先頭打者ホームランから2打席連続アーチ、さらに5回には3打点目となるタイムリーを放った。一方の投では、4投手の継投でJR東日本東北を1失点に抑え、1回戦で完封した左腕エースの本間大暉が最後に登板し胴上げ投手となっている。

第95回都市対抗野球大会 決勝戦

JR東日本東北 000010000=1
三菱重工East 10101000X=3
【東】●鈴木、工藤、津高-小鷹
【W】〇大野、畠中、長島、本間-対馬
本塁打【W】矢野(2) 二塁打【W】対馬

三菱重工Eastは、1918年の三菱造船神戸として創部から都市対抗野球には数えて40回目の出場、社会人野球日本選手権では優勝も飾っているが、チームは2021年に体制変更から神戸市・高砂市の三菱重工Westとともに発足後、4年目で快挙を達成した。これで三菱重工Eastは、2025年度の都市対抗野球のシード権と10月に行われる日本選手権の出場権、そして頂点の象徴である黒獅子旗を獲得した。

今回の優勝を受け、取締役社長CEOの泉澤清次氏は次のように語った。「厳しい練習を重ね、各都市・地区を代表する強豪チームの中で互いにすべての力を出し切った戦いの末に、頂点に立つことができた選手たちを誇りに思う。今回の快挙を励みに、East・West硬式野球部2チームは一層精進していく決意です」。

第48回全日本クラブ野球選手権大会

社会人野球は日本野球連盟(JABA)に加盟する344チームが登録されているが、会社登録の「企業(95)チーム」と、基本的には企業に属さない地域密着型のクラブ登録の「クラブ(249)チーム」があり(登録数は2023年8月現在)、3大大会と呼ばれる都市対抗野球と日本選手権はクラブチームも勝ち進めば出場できるが、クラブチームのナンバー1を決める3大大会のもう一つ、全日本クラブ野球選手権大会に企業チームは参加できない。

2024年度の全日本クラブ野球選手権は、8月31日から4日間開催され、ジェットブラックフラワーズS(足利市総合運動場野球場)、太田市運動公園他で16チームが頂点を目指した。決勝に勝ち進んだのは、2大会連続、和歌山箕島球友会時代から数えて出場12回目のマツゲン箕島硬式野球部(和歌山)と2大会ぶり7回目のエフコムBC(福島)。初優勝を狙うエフコムBCに対し、4年前に5回目の優勝を飾っている強豪のマツゲン箕島硬式野球部が9-1、7回コールドで下し6回目の優勝を飾った。

第48回全日本クラブ野球選手権大会 決勝戦

マツゲン箕島硬式野球部 0133002=9
エフコムBC 0000100=1
【マ】〇川畑、森山、山元、森、坂本-藤田
【エ】●佐藤、長根、小川-高野、武藤
二塁打【マ】竹中、臼井【エ】河野

マツゲン箕島硬式野球部は、全4試合で計25得点、3失点。準決勝では10大会連続22回目の出場で過去に5回優勝を誇る大和高田クラブ(奈良)を6-0で下すなど、圧倒的な強さで頂点に立ち、秋に行われる日本選手権への出場シード権を得た。西川忠宏監督は「日本選手権でも目先の1勝を目指して頑張りたい」と意気込みを語った。

第49回社会人野球日本選手権

シーズンの締めくくりとなる社会人野球の年間王者を決める社会人野球日本選手権大会は、10月29日から12日間京セラドーム大阪で開催された。出場チームは、都市対抗野球覇者の三菱重工East(関東)、全日本クラブ選手権優勝のマツゲン簑島硬式野球部(近畿)、そして昨年の日本選手権王者の大阪ガス(近畿)を含む32チームが年間王者を目指した。

全日本クラブ野球選手権優勝のマツゲン簑島硬式野球部は1日目の第1試合に登場し、NTT東日本(関東)と対戦するも0-6で敗戦。過去3例しかない夏春連覇を狙った都市対抗野球優勝の三菱重工Eastは、準決勝で惜しくも敗退した。

決勝戦に勝ち上がったのは、2大会ぶり7回目の優勝を狙うトヨタ自動車(東海)と1985年以来39年ぶり2回目の王者返り咲きをかけたHonda(関東)の対決となった。トヨタ自動車はここまで、8-2、9-1、4-0、準決勝では2018年以来の4強に入ったJFE西日本(中国)も4-2で下し決勝へ。Hondaも4試合中3試合を完封、準々決勝の東芝(関東)戦では代打出場した山本兼三が5回に決勝の満塁本塁打を放つなど盤石の強さを見せつけてきた。

決勝戦も接戦が予想されたが、1回裏にトヨタ自動車にいきなりの一発が出た。1死一、二塁で4番の逢沢崚介が放った打球は右翼席に飛び込む先制3ラン。投げてはエース左腕の増居翔太が今大会2度目の完封勝利を挙げ、トヨタ自動車が大会史上最多タイ(住友金属と同)の7回目の優勝を決めた。

第49回社会人野球日本選手権 決勝戦

Honda 000000000=0
トヨタ自動車 30000000X=3
【H】●片山、福島、中村-辻野
【ト】〇増居-福井
本塁打【ト】逢澤 二塁打【H】鈴木、小口

一昨年は優勝でシード権を得た都市対抗野球では1日目の第1試合で0-0から9回裏にサヨナラ安打で敗れていただけに今大会での意気込みは強かった。藤原航平監督は「都市対抗で連覇を目指したが敗退。この日本選手権で日本一になるとやってきた。素直にうれしいです」と安堵の表情を見せた。これでトヨタ自動車は2025年度の日本選手権出場の権利が与えられることから、次は日本選手権での連覇を狙うことができる。

決勝戦終了後には、巨大なダイヤモンドがモチーフとなっていることから「ダイヤモンド旗」と呼ばれる旗が贈呈され、表彰選手が発表された。最高殊勲選手賞を2試合で完封勝利を飾ったトヨタ自動者の増居が受賞。同じくトヨタ自動車の佐藤勇基は5試合16打数9安打の打率.563で首位打者賞を受賞した。また、最優秀選手にはトヨタ自動車からは投手の増居、嘉陽宗一郎、捕手では福井章吾、二塁手は佐藤、三塁手に熊田任洋、遊撃手でも和田佳大が選出された。都市対抗制覇の三菱重工 Eastからも、本間-対馬和樹のバッテリーらが最優秀選手に選ばれた。

2025年度もいよいよ、JABA各地区連盟主催の大会が始まる。目指すは3大大会出場、そして大会制覇の栄冠だろう。日本における野球の歴史を紐解くと、1872年頃、新橋の鉄道関係者で組織された社会人のクラブチームが確認されている。そして現在でも、社会人野球はそのプレゼンスを保っているのだ。高校・大学時代には埋もれていた才能を社会人野球で開花させた金の卵がプロ野球の世界で躍動している。

これからは地域密着のクラブチームの熱い戦いや、企業チームの華やかな応援合戦など、社会人野球のスケジュールを確認して足を運んでみれば、新たな野球の楽しさが発見できるかもしれない。