プロ野球

【現役NPB選手7人輩出】つくば秀英高から選手が育つ理由

 昨秋のドラフト会議でOBの大山悠輔内野手(白鴎大→阪神1位)、中塚駿太投手(白鴎大→西武2位)、エースの長井良太投手(広島6位)の3人が指名され、つくば秀英高出身の現役プロ野球選手(NPB)は7人となった。甲子園未出場校ながら、これだけ多くの選手を輩出できるのは、なぜなのか? 

多くの好投手を育ててきた砂で作られた周回コース


【つくば秀英高出身の現役プロ野球選手(NPB)】

山田大樹投手(ソフトバンク)
塚原頌平投手(オリックス)  
江柄子裕樹投手(明治大→東芝→巨人)  
野沢佑斗投手(ソフトバンク)
☆大山悠輔内野手(白鴎大→阪神)
☆中塚駿太投手(白鴎大→西武)
☆長井良太投手(広島)
※入団順、☆は今季入団

★独特の練習環境

 つくば秀英高の練習環境は独特なものだ。野球部専用の練習場はあるのだが、それはいわゆる「野球のグラウンド」ではない。砂で作られた周回コース、室内練習場、ブルペンがあり、グラウンドもあるが細長い長方形のものと、内野ほどの広さのもののみで、練習試合はおろかフリー打撃やシートノックもできない環境である。

 だが、その環境を最大限に生かして選手たちは力を伸ばしている。
 阪神にドラフト1位で入団した大山悠輔内野手(阪神)は「(長方形のグラウンドで)多くこなしたロングティーで遠くに飛ばす感覚が身につきました」と話し、広島にドラフト6位で入団した長井良太投手は「(砂で作られた周回コース)たぶん1周200mくらいの周回コースですが、多い時で100周しました。砂に結構足を持ってかれるんで、足腰を鍛えられました」と振り返る。
 実戦練習ができない分、個人練習に多くの時間が割けるのが利点だと話すのは、森田健文監督だ。
「グラウンドを使い、フリー打撃を全員で回したとしたら、1人30球打てたら多い方だと思うんです。でも、うちはこういう環境なので、一人ひとりがロングティーやティーバッティングで1年生から多く振り込むことができます。また、投手も砂場で走り込む環境があって、そこからすぐにブルペンに移ることができます。もちろん、実戦に繋がる練習が不足するデメリットはあるのですが、そのメリットを生かしていきたいなと思います」

寮と練習場が近いため朝や夕食後の個人練習も可能。また、そこから学校までが遠いため、選手たちは毎日往復12kmの道のりを自転車で通い足腰が鍛えられる。

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★「体の使い方」を重点的に指導

 沢辺卓己監督(現教員)が指揮を執っていた頃から続く「体の使い方」に重点を置いた指導も、特に投手育成には大きな効果が発揮されていると森田監督は話す。
「これまでの監督や投手コーチらで“体の使い方”ということを念頭に指導し、今僕らもその部分を最も大切に指導をしています。だから、プロに行ってからも体の使い方を自分で考える子たちが伸びていっているのかなと思います」
 特に意識を置かせるのは股関節、肩甲骨、骨盤の使い方。これを丹念にチェックし指導することで、体を早く開かせずに骨盤を速く回して、大きな出力をボールに与えられるようになる。
 こうしたことを高校の段階で細かく教わるため、選手たちに考える能力もつく。先日、塚原頌平投手(オリックス)と話す機会のあった森田監督は「自分ですごくよく考えてトレーニングしているんですよ。ただ与えられたメニューをこなすのではないからこそ、それが自信にもなっているのかな」と感心したという。

投球動作をチェックする森田健文監督(つくば秀英)

 さらに、数年おきにプロ野球選手が誕生するため、選手たちの向上心にもより火がついている。
「プロ野球選手を夢とかではなく、本当に身近に感じていると思います。あの先輩が“ここまでやったから、こうなれたんだろう”と見えますし、そうした先輩たちが冬にグラウンドに顔を出してくれます。(プロとアマの規定上)一緒に練習はできないですが、キャッチボールから見て学ぶだけでも、意識の高い子たちは、より一生懸命に取り組むようになりますね」(森田監督)
 
 もちろん現状に満足しているわけではない。多くの学校と同じように甲子園出場も目標にしているし、専用球場があるに越したことはないという。
「やっぱり勝負の中で結果を出しながら、選手を育成していきたいですね。みんな野球が好きな子たちなので、自主練習をするために夜もグラウンドに出てきますが、まだまだ“一発で仕留める”とか、そういうところが弱いので」とチームの課題を話す森田監督。
 独特な環境を生かしたトレーニングと卓越した理論で、育成面の大きな成果を挙げている同校は、次なるステップアップに向け、何が足りないかを常に考え、指導陣と選手たちがひたむきに汗を流している。その苦闘もまた選手の成長には欠かせないものとなっている。

文・写真=高木遊

内野の広さほどのグラウンド(つくば秀英)