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2017.12.18 12:14
【最終学年に飛躍を誓う甲子園のエースたち①】福島孝輔(大阪桐蔭→同志社大)
★大学でも不動のエースに
2014年夏の甲子園で優勝した大阪桐蔭の歓喜の輪の中心にいたのが、エースの福島孝輔だった。あれから3年、甲子園で優勝した瞬間を振り返ってもらうと「勝ったというよりは、苦しかった練習や寮生活からやっと解放されたという感じでした」と苦笑していた。
「高校3年間はしんどかった思い出しかありません。日本一になれるからもう1回やれと言われても絶対にやらないです」と言うほどの厳しい環境。特に福島の世代は秋の大阪大会4回戦で履正社に5回コールド負けを喫している。西谷浩一監督からは「史上最弱の世代」と言われ、例年以上の練習量だったという。
中学時代は福岡・飯塚ボーイズで高濱祐仁(日本ハム)らとともに、2011年のジャイアンツカップを優勝、高校3年の夏にも全国制覇と、一見するとエリート街道を歩んできたようにも見える。しかし、「個人では自信がなくて、関西なら少しは活躍できるかな」とプロや関東の大学に進んだ同級生とは違い、関西学生野球連盟の同志社大に進学を決めた。
福島の入学と同時に就任した渋谷卓弥監督は「関西学生野球を牽引してくれる選手に育てないといけないという責任感と、やってくれるだろうという期待感がありました」と福島の入学当時を振り返る。大事に育てる方針だったため、リーグ戦のデビューは1年の秋を予定していたが、エースの柏原史陽(JX-ENEOS)の不調などで苦しい投手事情もあり、入学早々から登板機会を与えられた。その後は投手陣の柱としてフル回転し、3年間で通算16勝を挙げた。
★主将として目指す低迷打破
福島の奮闘とは裏腹に近年の同志社大は低迷が続いている。復権を図るべく部員との話し合いで、新チームの主将に任命された。「主将の経験がなかったので決まった時は不安の方が大きかったです」と本人は話すが、渋谷監督は福島が主将になると予感していたそうだ。
その理由について「経験やリーダーシップもありますが、一番大事なのはゲームになると凄く熱くなるところ。投げている時だけでなく、ベンチからも声を出してチームを引っ張ってくれていましたので、彼しかいないだろうと思っていました」と語る。
「試合になると独特のスイッチが入る」という福島は試合になると闘志を前面に押し出している姿が印象的だ。その熱さはスタンドから見ていても十分に伝わってくる。副主将の西林幹貴(3年・清教学園)は「口でも言えるし、行動でも引っ張ってくれています。着いて行きたくなります」と主将としての福島を評する。彼の熱さは徐々にチーム全体に浸透しているようだ。
中学、高校と日本一を経験した福島が掲げる目標はもちろん日本一。同志社大は6年間優勝から遠ざかっており、今年は春秋ともに5位と低迷したが、「高校の時も秋のコールド負けから始まっていて、今のチーム状況と似ている部分があります。高校が全て正解だったわけではないですが、全国制覇した時の雰囲気でできるようにと考えています」と意気込む。
どん底から頂点を経験した福島イズムがチームに浸透すれば躍進が期待できるだろう。
1年生からチームを支えてきた右腕もラストシーズンを迎える。「結果が思うように出なかった3年間なので、最後は自分もチームも結果を出せるように日本一を目指し、ピッチャーとしても主将としてもやり切りたいと思います」と決意を語った。再び日本一を目指す福島の挑戦が始まる。
文・写真=馬場遼