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大学野球

高校時代は1回戦敗退、大学3年間未勝利から駆け上がるシンデレラストーリーはまだまだ終わらない 荘司康誠(立教大)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 大学生編】

荘司康誠(しょうじ・こうせい)
●守備 内野手 ●身長・体重 188cm・90kg
●生年月日 2000年10月13日 ●所属 立教大
●球歴 新潟明訓高→立教大
●出身地 新潟県 ●投打 右右

 中学時代は控えの外野手、高校時代はエースとなるも最後の夏は「僕の乱調で負けました」と1回戦敗退。どこの大学からも誘いは無かったが「このままでは終われないと思っていたし、東京六大学野球に憧れていたんです」と立教大には指定校推薦でやってきた。それゆえに溝口智成監督も「第一印象を聞かれても、まったく覚えていないんです」と苦笑い話す。

 荘司自身も入部当初は「トレーニングに全然ついていけなくて“これはまずいな”と思いました」と振り返るほどだった。右肩の状態もずっと悪く四軍にあたるDチームにいることすらあり、学生コーチへの転身を言い渡される危機も感じ取っていた。

 それでもへこたれないのが荘司の最大の強みだろう。投げられない分、様々な学びを得ようとした。最初は肩を治すことに注力していたが、だんだんとフォームについても研究を進めていった。

 さらに外部にも指導を求め「藁にも縋る思いでした」と、先輩が通っていた北川雄介トレーナーのもとに通うことを決めた。すると右肩の痛みも癒え、コミュニケーションを重視したフォーム指導で眠っていた才能が開花し始める。

 2年秋に静岡で開催されたオータムフレッシュリーグで149キロを計測。このあたりから首脳陣にある程度の評価を受け始めると翌春からベンチ入り、秋からは2回戦の先発に昇格とステップアップしていく。また、食事と地道なトレーニングによって70キロ台前半だった体重は86キロにまで増え、150キロ台のストレートを計測することも珍しくなくなった。

 そして、今年はエースとしてチームを牽引しリーグ戦初勝利をようやく記録。その恵まれた体格と力強いストレート、スプリットやカットボールなどのキレの良い変化球で評価は急騰した。

 侍ジャパン大学代表にも選出され、オランダで行われたハーレムベースボールウィークでは2試合で先発を任され、予選リーグのアメリカ戦では4回3安打無失点と、MLB予備軍とも言える全米大学代表チームを相手に快投を見せた。

 国際大会で貴重な経験を積むとともに、同世代のトップ選手たちと生活からともにし「これまで選抜チームにさえ選ばれたことが無かったので慣れない部分もありましたが、それ以上に吸収することがたくさんありました」と大きな刺激を受けた。特に青山美夏人(亜細亜大)や菊地吏玖(専修大)のセルフコントロールの上手さには感心したという。

 さらに8月下旬の東京六大学オールスターゲームでは自己最速を更新する157キロを計測。今秋のドラフト会議では押しも押されぬドラフト上位候補となっている。

 学生生活最後の秋は0勝3敗、防御率3.62と悔しい結果に終わっているが、そのポテンシャルは誰もが評価するところだ。

 理想の投手像については「どんな時も自分の思い描いたようなピッチングができるピッチャーになりたいです」と語る。まだまだ不安定な部分も多いが、自他ともに数年前には想像だにしなかった急成長を続けているだけに、そのシンデレラストーリーはまだまだ終わりそうにない。

文・写真=高木遊