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オーストラリアのプロ野球リーグABLとは~後編~北半球と季節が逆ゆえに花開いた国際色豊かなプロリーグ【WORLD BASEBALL vol.16】

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 プロ参入後の2000年シドニー五輪以来、日本代表とオーストラリア代表はこれまで12度対戦している。そのうち日本が負けたのは2度のみ。しかし、この2敗はともに金メダルを期して臨んだ2004年アテネ五輪でのものだった。

 当時、「日本のエース松坂からアマチュアのトラック運転手が決勝打を打った」と驚きをもって報じられたが、彼らオーストラリア代表のメンバーのほとんどはプロ経験をもっていた。

 彼らがアマチュアながらも大会プレーレベルを保っていた背景には、かの地独特の野球システムがある。今回は、日本とは一味違う、オーストラリアの野球のシステムを紹介する。

今なお代表チームの主戦投手として活躍するライアン・サール(ブリスベン・バンディッツ)。2015-16年シーズン、ABL記録の17セーブを挙げた彼は、これまでアメリカ、カナダ、ベネズエラ、イタリア、台湾でもプレーしている。2015年シーズンは日本の独立リーグ、石川ミリオンスターズで先発投手を務めていた。

今なお代表チームの主戦投手として活躍するライアン・サール(ブリスベン・バンディッツ)。2015-16年シーズン、ABL記録の17セーブを挙げた彼は、これまでアメリカ、カナダ、ベネズエラ、イタリア、台湾でもプレーしている。2015年シーズンは日本の独立リーグ、石川ミリオンスターズで先発投手を務めていた。

 2010年秋に再興されたプロリーグ、オーストラリアン・ベースボール・リーグ(ABL)は、11月半ばに開幕し、1月末からポストシーズンに入り、2月初めにファイナルシリーズを終える。今年はプレミア12に代表チームが出場するとあって、例年より1週間遅れた11月21日に開幕を迎える。

 昨シーズンから8球団となり2地区制を採用しているレギュラシーズンは、同地区チームとホームアンドアウェイの4連戦、計24試合に加え、他地区チームとも同じく4連戦を行うが、こちらはホームもしくはアウェイのいずれかしか行わないので計16試合、総計40試合を消化する。

 4連戦制を採用しているのは、遠征費用の節約のため、各地への遠征を各々1回限りで済ませてしまうための工夫だ。

 各地区の1位チームがポストシーズンに進出するが、そのうち勝率の低い方は、各地区2位以下の最高勝率チームと一発勝負のワイルドカードゲームを行うことになる。その勝者が5戦3勝制のファイナルシリーズに進出し、1934年以来オーストラリア野球の頂点に立ったチームに与えられるクラクストンシールドを争う。

 このプロ野球が日本のそれと大きく異なるのは、アマチュアとの垣根の低さと国際性だ。ABLを管轄するのは、アマチュア野球を統括するオーストラリア野球連盟(ABF)。プロリーグの運営は、ナショナルチーム強化のためと言ってよく、そのため、ABLはレベルアップのため、プロリーグをもつ世界各国から多くの選手を受け入れている。

元メジャーリーガーのルーク・ヒューズ(メルボルン・エイシズ)は、現在ABFのスタッフとして働きながらABLで現役を続けている。

元メジャーリーガーのルーク・ヒューズ(メルボルン・エイシズ)は、現在ABFのスタッフとして働きながらABLで現役を続けている。

 かつて資本関係のあったMLBからはマイナーのA~2A級の有望株がABLに派遣されるほか、日本、台湾からも例年プロ選手が参加している。昨シーズンからは、学卒後の選手の受け皿が少ない韓国からジーロン・コリアがチームごと参加した。

 また、各クラブチームの若いアマチュア選手が、力試しにABLにスポット参戦することもあり、ABLは、オーストラリア野球界において、ナショナルチームの育成、国外プロリーグ、オフシーズンの事実上のファーム、若手アマチュア選手の登竜門という様々な役割を担っている。

 ABL各チームの多くは、MLBのスカウトも兼ねていることが多く、その才能を認められた選手は、アメリカをはじめ世界各国のプロリーグに旅立ってゆく。そして、国際大会となれば、国内はもとより、世界中でプレーしている選手がオーストラリアという国の威信をかけてナショナルチームに忠誠を尽くすのだ。

 この秋のプレミア12に向けても、決勝ラウンドの行われる日本行きを目標にオージーたちは世界中のプレー先で爪を研いでいる。

文・写真=阿佐智