- 高校野球
2019.12.09 17:00
鳥取から高卒プロ目指す文武両道の大型遊撃手 岡本大翔(米子東高2年)【Future HeroesVol.42】
春夏連続で甲子園に出場し、「名門復活」につながる大きな一歩を踏み出した鳥取の米子東高。そのチームで遊撃を守り、センバツでは1番、夏は4番を任されたのが2年生の岡本大翔だった。夏の甲子園で189cmだった身長はさらに伸びて、190cmに到達。中国地区屈指の大型内野手は「高卒プロ」という目標を胸に、日々汗を流している。
190cmの長身で遊撃を守り、投手としてマウンドに上がれば140キロ超え。充実したフィジカルを生かした力強いプレーで、古豪復活の狼煙となる春夏連続の甲子園出場に貢献した。県トップクラスの進学校でもある米子東にあって、岡本大翔は「高卒プロ」という夢を掲げている。
「以前は『大学に行ってからプロに』と考えていましたが、春のセンバツで初めて全国のレベルを味わったことで、『高卒で行きたい』という気持ちが芽生えました。一番いい環境で高校野球をやらせてもらっているとも感じているので、高校からのプロ入りを本気で目指しています」
岡本が米子東に魅力を感じたのは中学3年の夏。「進学の判断材料になれば」と、夏の鳥取大会に足を運んだことがきっかけだった。「1試合見れば十分かな」と軽い気持ちで初戦の鳥取東戦を観戦すると、米子東のチーム全体から発せられる熱量に圧倒された。
「中学生だった自分が見てもわかるくらい、ひとつひとつのプレーから『野球に対する熱さ』が伝わってきました。最初は初戦だけ見るつもりだったんですが、決勝までの4試合すべて球場で見ました」
その年、米子東は26年ぶりに夏の県大会決勝進出。惜しくも甲子園出場は逃したものの、紙本庸由(のぶゆき)監督によるチーム強化が実を結び始めていた。中学時代に所属した米子ボーイズの先輩が進んでいた県外の強豪私立に進学する選択肢もあったが、指揮官の情熱と選手たちから発せられる自立した雰囲気に魅力を感じ、米子東への進学を決意した。もともと学業成績も良かったこともあり、一般受験も突破し晴れてその一員となった。
高校進学後は、1年春から公式戦に出場。秋からは遊撃を任され、同校にとって23年ぶりのセンバツ出場に貢献した。2季連続出場となった今夏の甲子園では、初戦で智弁和歌山に敗れたものの、大会後に侍ジャパンU-18代表に選出された池田陽佑から3安打を放った。
紙本監督が練り上げた練習で順調に成長を続けていたが、夏から秋にかけてひとつ“落とし穴”が待っていた。夏の甲子園では、バットで存在感を示した一方、守備で飛び込んだ際に左肩を負傷。それが尾を引き、秋は遊撃ではなく三塁で出場した。
3季連続出場を目指していたが、県大会の準々決勝で敗れ、センバツの道は絶たれた。万全とは言えないなかで喫した敗戦への悔しさは大きい。
「この秋負けたことで、『もう一度甲子園へ』という思いがより強くなりました。3年夏に甲子園に戻って、自分の持っている力を出し切りたい。その上でスカウトの方々からも評価してもらえたら嬉しいです」
指導にあたる紙本庸由監督も岡本の夢を後押しする。
「鳥取県出身のプロ野球選手は現在ほとんどいないのが現状です。さらに、高卒でのプロ入りとなるとかなり遡らないといけません。こういった状況では野球少年たちが『プロに行く』ことを具体的な目標としてイメージできなくなってしまう。岡本が高卒プロの目標を達成できれば、鳥取の野球界全体にもいい影響を及ぼすと思うんです」
負傷した左肩の手術も終え、経過も良好。春からは慣れ親しんだ遊撃に再コンバートされる予定だ。万全の体勢を整えた中国地区屈指の大型遊撃手は、自身の夢を叶え鳥取野球界希望の星となることを目指す。
文・写真=井上幸太