- 高校野球
2017.07.10 19:26
【父の背中を追って】度会基輝(拓大紅陵)名門の大黒柱は父譲りの野球小僧
★父は元ヤクルトの名脇役
「実力もありますし、明るい性格で物怖じしない。チームを引っ張ってくれています」
拓大紅陵の指揮を執る澤村史郎監督がそう言って目尻を下げるように、主将で「3番・レフト」の度会基輝は、名門復活を期するチームの大黒柱を担い高校通算30本塁打を放つスラッガーだ。
父は、1990年台から2000年代にかけて、捕手の古田敦也氏(現野球解説者)を中心に黄金期を迎えていたヤクルトで、スーパーサブとして欠かせない内野手だった度会博文氏(現ヤクルト球団広報)。ムードメーカーとしてもチームメイトやファンから愛されていた父譲りの明るさや前向きな姿勢もチームに与える影響は大きいと澤村監督は言う。
「悩みだってあるんでしょうけど、それを表には出さない。野球が心から好きでユニフォームを泥だらけにして練習する。今どき少なくなった“野球小僧”という感じですよね」
★「もっと練習がしたい」
父の存在もあり野球は常に身近な存在で、小学校中学年の頃には硬式野球の船橋ボーイズに入団。父の引退試合では弟の隆輝(現佐倉リトルシニア)とバッテリーを組んで始球式の大役を務めた。
小学部全国大会で4強に進み、中学3年になると県内外の強豪校から声が掛かった。その中から「県内の名門でしたし、打撃中心のスタイルが合っていたので」と甲子園出場9回の拓大紅陵へ進学し寮に入った。「自分のプレーをのびのびとさせてくれるチームですし、先輩も優しかった。寮で洗濯なども1人でやるので自立心もつきました」と快活に答える。
そして、「1日が過ぎるのは本当に早いと感じます。もっと練習したいです」と目を輝かせる。
もちろん強豪ゆえに練習は厳しい。毎年11月から1月の授業が無い日には、朝4時から8時までの朝練習があり、その後に夕方まで練習をする。「寒くて起きるのが大変でした」と苦笑いするが、「それを乗り越えたから精神的にも強くなりましたし、トレーニングがもっと楽しくなりました」と笑顔で語る。「目標はプロ野球選手です。大学で活躍して入りたいです」と、どこまでも前向きだ。
昨秋からはチームの主将に就任。「常に自分がポジティブでいることや、グラウンドに出ている者だけでなく全員で勝てるようにと意識してきました」と話し、「サポートに回ってくれている仲間の思いを背負って戦い、報いたいです」と主将らしく力強く語った。
また、今は離れて暮らす家族の存在についても「父は憧れの存在ですし、弟の活躍(今春のリトルシニア日本一に貢献)も刺激になります。母も含めて家族全員がとても明るいので楽しいですね」と笑う。
名門のプライドや家族・仲間への感謝。様々な思いを背負いながらも、度会はどこまでも野球を楽しみ、最後の夏で1回でも多く笑うことを目指し、大会までの残り少ない時間を全力で過ごしている。
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文・写真=高木遊