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高校野球

【THE INSIDE】古豪復活へ燃える熊谷商、単独商業校の代表格としても頑張る


少し高校野球に詳しい50代以上の人であれば、甲子園で熊谷商が下関商との乱戦を制した戦いを覚えている人もいるだろう。

1981(昭和56)年夏、2年連続出場を果たしていた熊谷商だが、初戦の下関商戦では両チームともに19安打を打ち合うという大乱戦。その挙句に熊谷商が12対11で9回サヨナラ勝ちを果たす。監督室には、当時スポーツニッポン紙に高校野球の連載コラムを詩のような形で提供していた阿久悠氏が、この試合を称えて詩に綴ったものが掲げられている。その直筆が熊谷商の甲子園でのインパクトの強さを示しているとも言えよう。それだけでも、歴史の重みが感じられる。

81年夏、下関商との激戦を称えた阿久悠氏の直筆書
実は、熊谷商はその9年前にも平安(現・龍谷大平安)とも延長10回に及ぶ凄まじい打撃戦を演じて13対12で勝利している。甲子園では、そんな乱戦を制する熊谷商というイメージも定着していた。

学校創立は1920(大正9)年で、2年後には創立100年を迎える伝統校である。今年で八潮南が異動して5年目となる新井茂監督は、「100周年の年には、何とか伝統校が復活したという形を示したい」という思いも強い。そのためには、今年のチームもしっかりと伝統校らしい戦いをしていけるようになっていなくてはならない。そんな思いも込められたチーム作りである。

現在、埼玉県下ではかつての商業科が情報科や総合科とともに校名変更して単独商業校が減ってきている。そんな中で、所沢商と共に甲子園出場実績のある商業校としての意地も示したいところである。

熊谷商・中島寛汰君
今年のチームはエースで4番を任されることになるであろう中島寛汰君が軸になっていく。新井監督も、「大黒柱として、どこまで持ちこたえられるか…持ちこたえてくれないと困るんですけれども、それを支えていく周囲も成長してきているので、何とかいい感じにはなってきています」と、「ある程度は行けるぞ」という感触を強く持っている。

新井監督のチーム作りの基本は八潮南時代から変わらず、「野球の面白さは、自分の描いたシナリオ通りになって行くところ、併殺を取ろうとして取れたこと、飛球を打たせようとして打ち取ったところ」ということを目指している。それは、それだけしっかりとしたシナリオを準備できる日々の練習をしていかなくてはいけないという考えにもつながる。だから、部としてのモットーでもあり、自身も座右の銘として掲げている「継続は力なり」という言葉にたどり着くのである。外野後方には、その文字も掲げられている。

昨夏、準々決勝では甲子園出場を果たした花咲徳栄に完封負けして叶わなかったものの、ベスト8に進出して、着実に「強い熊商」の時代に近づきつつあるという成果を示した。

そんなチームを受けて、今年の3年生は19人。さらには1年生26人、2年生も26人でマネージャーも含めると、全77人という人数だ。公立商業校としては、十分と言っていい人数である。しかも、ほぼ専用で使用が可能なグラウンドもある。右中間こそやや膨らみがないものの、試合を行うには十分のスペースである。

夏の大会前の最後の週末となった7月2日の日曜日、高崎経済大附を迎えての最後の調整となった。1試合目では、お互いがほぼ大会用のベスメンバーを組んで挑んだ。

高崎経済大附としても小池美徳監督が期待する左腕・高橋知大君を、どのタイミングでどのような形で送り出していくのか、ということをシミュレーションとして試していきたいところだった。この日の試合では、先発の植原君から6回二死一塁という場面でリリーフ。きっちりと牽制球で刺し、その後の3イニングも抑えてチームの逆転を導いた。

高崎経済大附と熊谷商の試合風景
熊谷商は、7回までは中嶋君が1失点で踏ん張ったが、7回に高崎経済大附の代打の切り札・近藤君に二塁打を浴び、さらに1番の武井君にも二塁打を浴び同点。ワンポイントで送り込んだ高城君は何とか抑えたものの、再びマウンドに戻った中島君が高橋周君に安打されて逆転を喫し、やや課題を残した。

結果としては、この回の逆転で高崎経済大附が逃げ切った。それぞれがテーマを持って臨む中、僅差の競り合いでのしのぎ合いは、公式戦並みの緊張感の伴ったものとなった。

●7月2日(日)熊谷商グラウンド

高崎経済大附は昨夏はシード校として挑みながら、3回戦で高崎工に敗れた。それでも、今年の新チームは昨秋ベスト4に進出という実績を残し、力を示している。公立の高崎市立高崎経済大の附属校という形だが、実質は高崎市立校という位置付けに近い。いわば、公立進学校である。地元では、高崎と高崎女子という独立した男子校と女子校のそれぞれ名門進学校があるが、共学校としてそれらに続く存在と言っても過言ではない人気校でもある。

81年夏、下関商との激戦を称えた阿久悠氏の直筆書
グラウンドルールを説明する
グラウンド整備は手際よく
監督室に掲げられている部訓
熊谷商・雨宮君
熊谷商・岡田大樹君
熊谷商・関口君
熊谷商・高城君
熊谷商・秋山君
熊谷商・中島寛汰君
熊谷商シートノック
熊谷商ベンチ
高崎経済大附・熊谷商試合終了後の挨拶
高崎経済大附・高橋知大君
高崎経済大附・小池美徳監督
高崎経済大附・植原君
高崎経済大附と熊谷商の試合風景
試合前のグラウンド整備
正門を入ると各部などの成果か掲げられている
伝統校らしく、数々の賞状が監督室に掲げられている
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