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高校野球

【最後の夏に臨む逸材】187cm&146km/hのプロ注目右腕・布川雄大(武南)

「憧れています」という安樂智大(楽天)のように足を高く上げ、恵まれた体格を生かして投げ下ろすストレートの最速は146km/h。
 中学時代は無名に近い存在だった男は、この2年でいかに頭角を現したのか。布川雄大本人や監督、同僚に聞いた。

布川雄大(ふかわ・ゆうだい)
出身地: 埼玉県川口市
球歴:川口市立芝中(軟式)→埼玉・武南高3年
身長・体重(ポジション):187cm・87kg(投手)
最高球速:146km/h
球種:ストレート、スライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップ
悩み:足が30cmと大きく、なかなかサイズの合う靴が無いこと

★中学時代はほぼ無名
 父・茂さんは浦和学院高校の一塁手としてプレーした経験があり身長180cmを超える。母も165cmほどという遺伝に加え、「食トレとかは意識していない」という大食漢ですくすくと成長し、ひときわ存在感を放つ体格を作り上げた。
 だが中学時代に県大会出場はなく、実績と呼べるのは川口市選抜に選出されたことがあるくらいだ。

 球速もそれほどあるわけではなかったが「体が大きい割にコントロールは良かったですね」と蛭田圭祐監督(当時コーチ)は入部当初の印象を振り返る。ある程度のまとまりはあり、2年夏にはエースとして県4回戦まで導くまでになっていったが、大きな欠点として柔軟性の低さがあった。そして、この時は、フォームのステップ幅を広くしたことで大会前に股関節を痛めてしまい、それを庇いながらの投球だった。
 布川本人は「自信になった大会でした」と振り返るが、秋は股関節の治療を優先し、ベンチを外れ、チームは県大会前の地区予選で姿を消した。

足を高く上げるフォームが特徴的な布川

★急成長の要因
 しかし、これがターニングポイントともなった。蛭田監督は「本人も投げたかったでしょうけど、その我慢が大きな成長に繋がってくれました」と目を細める。
 投球をやめたこの期間に、トレーニングやストレッチに多くの時間を割いたことで、筋力に加え、課題としていた柔軟性が飛躍的に向上。これが球速向上にも直結し、秋に最速で141km/hほどだった球速は、グングンと上がっていった。
 すると、春季埼玉大会で三振の山を築いていく。地区予選初戦の大宮工戦で15三振を奪うと、次の大宮西戦でも13奪三振。さらに県大会初戦の古豪・上尾戦では、NPB8球団のスカウトが見守る前で、三振こそ6個のみだったが、4安打1失点の好投を見せた。変化球には課題を残したが、投球の大半をストレートで押していき、スカウトのスピードガンでは自己最速の146km/h を計測した。
 これで勢いを加速させると、2回戦の鴻巣戦では8安打を浴びながも9回2失点8奪三振を奪い完投勝利。6回からの登板となった3回戦の叡明戦は敗れたが、今夏の埼玉大会のDシードをチームにもたらした。その堂々としたマウンドさばきには、同僚の三嶋優吾主将も「3年生になって、より自覚を持ってチームを引っ張ってくれています」と信頼を寄せる。
 
 卒業後の進路は「春の上尾戦で自信がつきました」とプロ志望を掲げる。そして最後の夏に向けては「目標は甲子園。勝てる投手になりたいです」と穏やかな口調は変わらなかったが、迷わず答えたことに春につけた自信が窺えた。
 怪我の功名から急成長を遂げた大型右腕の投球ぶりに、この夏大きな注目が集まりそうだ。

打っても中軸を務める大黒柱。全国制覇のある古豪のサッカー部に負けじと、野球部にも新たな歴史を刻みたい。

文:高木遊