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日ハム勝因は中島卓「あの四球がすべて」 劇的勝利も「まだ状態は広島が上」


広島は1点リードで8回を迎えたが、2死二塁の場面でセットアッパーのジャクソンが大谷を敬遠し、続く中田に逆転打を浴びた。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野球解説者の野口寿浩氏は、この回の先頭で四球を選んだ中島卓也が「この試合のMVP」と称えた。

■土壇場8回の大谷敬遠は「間違っていない」も…逆転打の中田が「すごく冷静だった」

 25日の日本シリーズ第3戦(札幌ドーム)は日本ハムが広島を4-3で破り、1勝2敗とした。土壇場の8回に中田翔が逆転打を放つと、9回に同点に追いつかれたものの、延長10回に大谷翔平が劇的サヨナラ打。今季限りでの現役引退を表明している広島の黒田博樹投手は4安打1失点と好投も、6回途中にアクシデントで緊急降板し、日本シリーズ初登板初勝利はならなかった。

 広島は1点リードで8回を迎えたが、2死二塁の場面でセットアッパーのジャクソンが大谷を敬遠し、続く中田に逆転打を浴びた。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野球解説者の野口寿浩氏は、この回の先頭で四球を選んだ中島卓也が「この試合のMVP」と称えた。

 中島は見逃し、ファウルと2球で追い込まれたが、ここから最大の持ち味である粘りを発揮。シーズン中と同じようにストライクゾーンに入ってきたボールはカットしてファウルとし、ボール球は見極めた。3球目はファウル、4、5球目はボールで、ここから3球連続ファウル。1球見送りフルカウントとすると、最後は高めの直球にバットを止め、10球粘って四球を選んだ。

「勝敗を分けたポイントは中島。8回先頭の四球。あれでジャクソンを崩したのが勝因です。その後に中田が逆転タイムリーを打ち、延長10回には大谷がサヨナラヒットを打ちましたけど、中島のフォアボールがなければ勝てていなかった。ジャクソンはあそこで四球になったらガタガタ行ってしまうのではないかと思って見ていたんです。そのままガタガタ行ったわけではないですけど、一時は逆転を許したわけですし、あの四球がすべてでした」

■『体は熱く、頭は冷静に』逆転打を放った中田

 延長10回も、1死で西川が大瀬良から四球を選び、二盗を決めたことで大谷のサヨナラ打を呼び込んだ。「大瀬良の西川へのラストボールはいいボールでしたけどね…。ただ、フォアボールでランナーを許すと、失点につながるということですね」。結果的に2つの四球が広島にとっては痛かった。

 もちろん、8回は中島の四球の後に中田の2点タイムリーが出ていなければ、試合は終わっていた。目の前で大谷を敬遠され、“怒りの一打”を放った4番の打席について、野口氏は「冷静だった」と称えた。

「大谷に対してはベンチが敬遠の指示を出したわけですし、あれはあれで正解。間違っていたとは言えないと思います。ただ、中田がすごく冷静だった。ジャクソンに対しては真っ直ぐを待ちたい。ただ、(ボールとなった)最初の2球を見たことで、冷静にスライダーに合わせられた。中田は直球のタイミングで待っていたかもしれませんけど、スライダーを捉えられた。それは落ち着いていたからです。(阪神のコーチ)平田勝男さんがよく選手に言っていたんです。『体は熱く、頭は冷静に』と。あの打席の中田は、まさにそんな感じでした。『俺の前で敬遠しやがって』と熱くなっていたら、2球目までに手を出してしまっていたと思います」

 一方で、広島では6回途中で緊急降板した黒田の投球術が光ったという。現役最後の登板となる可能性もあったマウンドで見せた気迫の投球に、日本ハム打線は抑え込まれた。

■光った黒田の「両サイドから両サイド」への変化

「日本ハムのバッテリーに比べると、黒田、広島のバッテリーの方が1枚も2枚も上手でした。黒田は両サイドから両サイドに投げ分けられる。内外角から、両サイドに変化させるボールを持っている。それを早い段階に一通り見せて、打者に意識させた。日本ハム打線はどちらに来るか分からなくなってしまった。

 逆に、日本ハムバッテリーはカットボールを軸に攻めていこうということだったと思いますけど、『そんなにいくか』というくらいカットボールばかりになってしまった。カットボールで抑えられるから、他のボールを投げるのが怖くなってしまったのかもしれない。そうなっていなければ、エルドレッドのホームランはなかったかもしれないですね」

 最終的には、日本ハムが終盤に粘りを見せ、広島は救援陣が踏ん張りきれずに勝敗が分かれた。マツダスタジアムでは広島が2連勝と力を見せつけたが、本拠地に戻って日本ハムが劇的勝利を飾ったことで、流れは変わるのか。野口氏は「まだ分からない」と予想する。

「まだ日本ハムのほうが本調子じゃない選手が多い。逆に、広島は鈴木誠也にいいヒットが出て、新井にも最後にヒットが出ました。エルドレッドは3戦連発で、丸も状態がいい。これで田中の調子が上がってくればすごくいい状態です。札幌ドームのファンの力も借りて日本ハムが劇的な勝利を飾りましたけど、まだカープの方がチームの状態は上だと思います」

 第4戦は日本ハムが3年目の高梨、広島がルーキー岡田と若手同士の投げ合いになる。大舞台でしっかり力を発揮できるかもポイントになりそうだ。シリーズの行方を左右する対戦が続く。

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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