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プロ野球

「鯉の4番」から「侍の4番」へ!鈴木誠也の“一撃必殺”の打撃に迫る!【NISSAN BASEBALL LAB】

  

 第2回目の開催となる「WBSCプレミア12」の開幕(日本戦の初戦は5日)を前に、稲葉篤紀監督率いる侍ジャパンが準備を進めている。宮崎、沖縄で合宿を張った中で調整を続けてきたが、その中で指揮官から「新4番」に指名されたのが、広島の4番打者、鈴木誠也である。25歳となった今季は、自身初の個人タイトルである首位打者に輝き、4年連続20本塁打以上となる28本のアーチも放った。新たな日本の看板打者のバッティングを、改めてデータで迫りたい。

巨人―広島25  4回広島2死、鈴木が左越えに先制本塁打を放つ。捕手炭谷=東京ドーム

【写真提供:共同通信社】巨人―広島25  4回広島2死、鈴木が左越えに先制本塁打を放つ。捕手炭谷=東京ドーム

■「出塁率」×「長打率」

 二松学舎大付属高校から2012年のドラフト2位で広島に入団した鈴木。ブレイクしたのは2016年。“神ってる”活躍でチームのリーグ優勝の原動力となり、以降も進化を遂げながらしっかりと結果を残し、昨季からはカープ不動の4番打者として多くのヒット、そしてアーチを重ねてきた。4番として本塁打数に期待が集まるが、一発以上に打率、そして出塁率で結果を残してきた“現代的”なスラッガーであると言える(表1)。

表1 鈴木雅也の年度別成績

 プロ7年目の今季も、チームが苦しむ中でも実力を見せつけた。結果的に首位打者と最高出塁率の2冠に輝いたが、その一方で長打率も坂本勇人(巨人)に次ぐ12球団の全選手中2位にランクインした(表2)。軽打でヒットを稼いだのではなく、フルスイングした結果の首位打者であり、その威圧感で高めた出塁率であった。

表2 2019シーズン長打率

■12球団で最も「ファウルを打たない」男

 各部門で上位につける鈴木だが、その中で興味深いのが「ファウル率」である。今季の出場140試合612打席の中で、計264本のファウルを放った鈴木だが、その「ファウル率」は12球団ワースト(表3)。最もファウルを打つ確率が少なかった打者であった。

表3 2019シーズンファウル率

 この「ファウル率」の「ワースト」は、決して「悪い」という訳ではない。ファウルで粘って投手の球数を増やす打者というのも評価されるが、それがヒットや本塁打の数に直結する訳ではない。打ちに行ったのならば、確実に打球をフェアゾーンに弾き返す。打ち損じが少なく、ひと振りで確実にバットの芯でボールを捉える。「一撃必殺」。それが鈴木のバッティングの特徴の一つだと言える。

■三振しないホームランバッター=最強?

 鈴木の「打ち損じの少なさ」は、空振りの少なさにも現れている。2019年シーズンの空振り率(表4)を見ると、鈴木は空振り率.066で、12球団で14位タイとなっている。この順位だけを見ると「さらに上がいる」と感じるが、鈴木よりも空振り率の低い打者を見ると、その多くが「巧打」のタイプで、本塁打数は多くない。バットに“当てに行く”形も多い。その中で鈴木は28本塁打と断トツの長打力を誇示している。

表4 2019シーズン空振り率

 この空振り率の低さは、そのまま三振数の少なさに繋がる。2019年シーズンの三振数(表5)を見ると、トップ10にはワースト1位の村上宗隆(ヤクルト)を筆頭に、ホームランバッターの名前が揃う。ホームランを打つためには強くバットを振る必要があり、その結果、当たれば飛ぶが、当たらない確率も増える。過去のホームランバッターたちも、そのほとんどのが多くの三振を喫しいているのだ。

表5 2019年シーズン三振数

 しかし、鈴木は違う。今季の三振数は81。昨季が116三振だったことを考えると、「進化した」とも言えるだろう。三振を奪うことが難しく、スイングすれば確実にフェアゾーンに弾き返され、その飛距離も抜きん出たものがある。投手にとっては、非常に打ち取り辛い打者であることは間違いない。三振しないホームランバッターは、ずばり最強だと言える。

その男が侍ジャパンの4番に座る。世界一への戦いの中で、どのようなバッティングをしてくれるのか、楽しみでならない。