BASEBALL GATE

プロ野球

2連勝の広島は「ものすごく強かった時の状態」に 勝敗を分けた配球の差


23日の日本シリーズ第2戦(マツダスタジアム)は、広島が本拠地マツダスタジアムで日本ハムに5-1で勝利した。連夜の快勝で2勝0敗とし、25日からは敵地・札幌ドームに乗り込む。

■第2戦はリプレー検証が勝敗を分ける、「増井は気持ちの浮き沈みが出てしまった」

 23日の日本シリーズ第2戦(マツダスタジアム)は、広島が本拠地マツダスタジアムで日本ハムに5-1で勝利した。連夜の快勝で2勝0敗とし、25日からは敵地・札幌ドームに乗り込む。第3戦は今季限りでの引退を表明した黒田博樹投手が先発予定で、チーム一丸となって一気に王手をかけられるか、注目が集まる。

 第2戦では勝敗を分ける大きなプレーがあった。6回に本塁クロスプレーで広島・田中がアウトと判定されたが、日本シリーズ史上初のリプレー検証でセーフに覆り、決勝点が入った。日本ハムの先発・増井は直後にタイムリーエラーを犯して降板。流れは一気に広島に傾いた。

 勝負を分けたプレーについて、ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野球解説者の野口寿浩氏は「増井はあそこで気持ちの浮き沈みが出てしまった。メジャーと違って、チャレンジがない日本では、まだ一般的ではないプレー。ああいうことがあると、選手には動揺があると思います」と分析した。ただ、それを差し引いても、日本ハムを圧倒する広島の強さが目立っている。

 DeNAとのCSファイナルは4勝1敗(アドバンテージ1勝を含む)で勝ち抜いたものの、打線は湿り気味だった。打率.833、出塁率.882と圧巻の数字を残したリードオフマンの田中がいなければ、苦しい戦いをとなっていた可能性もあった。しかし、日本シリーズでは初戦に持ち味の足を使った攻撃で先取点を奪って大谷を攻略し、第2戦はエルドレッドの2戦連発弾などで快勝。菊池は打率.333、丸は.600と、CSでは本調子ではなかった2人にも当たりが出ている。

■バッテリーの配球に差、増井は「クローザーをやっていた時の投球が出てしまった」

 野口氏は「広島は完全に自分たちの野球が出来始めている。DeNAとCSファイナルを戦った時とは全く状態が違います。ペナントレース優勝を決める少し前の、ものすごく強かった時のカープになってきた。DeNAとのCSファイナルでは神がかった人(田中)が1人いて、打線が1試合で1回だけつながって勝ったような試合もありました。でも、今は9イニングで何回チャンスを作るか、という感じになっている」と指摘する。

 また、この試合では最多勝投手の野村の投球も光った。一方で、シーズン中にクローザーから先発に転向して好成績を収めた日本ハム増井は、最終的にはリプレー検証から崩れたものの、両チームのバッテリーには立ち上がりから大きな違いがあったという。

「バッテリーとして比較すると、偏った増井と、満遍なく投げられた野村という感じでした。普段通りの、シーズン中の投球が出来ていた野村と、先発に転向してからのピッチングをし始めるのが遅くなってしまった増井という感じでしたね。石原の配球によって、野村は偏ることなく、チェンジアップ、シュート、カットボール、カーブを投げていました。直球の割合は元々少ない投手ですし、普段通りのピッチングを出来ていました。

 ただ、増井はクローザー時代と同じように、ピンチでは力強い真っ直ぐとフォークで抑えようとしていた。クローザーをやっていた時のピッチングが出てしまい、緩急がなかった。なので、広島の選手は安心して変化球を待っていた感じでした。それでもなかなか点が入らなかったのは、直球を捉えられた選手と打ち損じた打者がいたから。打ち損じなく外野に運んだのが、小窪のヒットでした。また、増井はクローザーをやっていた時は自分のテンポで投げていましたけど、今日はその時と同じで、テンポが悪く、(先発投手としては)投球間隔が少し長かった。これは攻撃にも影響しますし、守備のミスにもつながります。リズムは大事ですから」

 日本ハムバッテリーの配球のまずさは、エルドレッドに対する投球にも出ていたという。広島が6回に3点を勝ち越し、2死走者なしで打席に入ったエルドレッドは、2ストライクと追い込まれてから2番手鍵谷のつり球を捉え、レフトスタンドに特大の一発を運んだ。野口氏は、この1球はあまりにも不用意だったと指摘する。

■第3戦は札幌に舞台を移すも…広島先発は黒田「選手は負けられないと思っているはず」

「エルドレッドにとっては、あそこはホームランコースです。高めに投げるのは百歩譲って悪くないですが、それならばインコースに投げないといけない。アウトコースになれば、エルドレッドのホームランコースです。日本ハムバッテリーはそれをしっかり分かっていたかどうか。ただ高めに投げていたのかもしれない。つり球を使うなら、しっかりコントロールしないといけません。あれだったら、外に逃げていくスライダーの方がエルドレッドは打ち取れます」

 この試合では、この不用意な一球が命取りとなってしまった。

 2連勝で広島が圧倒的有利になったことは間違いない。野口氏は「私も阪神時代の2003年に経験していますが、『内弁慶シリーズ』というのもあります。2連勝したチームが敵地に行くと急に静かになってしまうことがある。2003年は1、2戦と福岡でやられましたけど、ダイエー(当時)は甲子園で急に静かになった。こちらは甲子園で3連勝して息を吹き返して福岡にいったつもりが、また6、7戦とやられてしまった。そういうこともあります」と振り返りながら「ただ…」と続けた。

「広島の第3戦の先発は黒田です。広島の選手は、負けられないと思っているはず。現役最後の登板になるかもしれない黒田を負けさせるわけにはいかない。マツダと同じように来るはずなので、逆に日本ハムはそれを覚悟していないと。短期決戦は本当にちょっとしたことで流れが変わるので、まだ分かりませんが…」

 絶対的な存在である黒田が『内弁慶シリーズ』となることを許さず、快投で3連勝を飾れば、広島は一気に王手。日本ハムは崖っぷちに追い込まれることになる。黒田が投じる1球1球からも目が離せない。

関連リンク