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県2回戦投手からの成り上がりはまだまだ続く大型右腕 小川一平(東海大九州キャンパス)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 大学生編】

小川一平(おがわ・いっぺい) ●守備 投手●身長・体重 183cm・78kg ●生年月日 1997年6月3日●所属 東海大九州キャンパス ●球歴 横須賀工高→東海大九州キャンパス●出身地 神奈川県●投打 右右

小川一平(おがわ・いっぺい)
●守備 投手 ●身長・体重 183cm・78kg
●生年月日 1997年6月3日 ●所属 東海大九州キャンパス
●球歴 横須賀工高→東海大九州キャンパス ●出身地 神奈川県
●投打 右右

 全国区では無名だが、スラリとした体格と長い手足を上手にしならせて最速149キロのストレートを投じる大型右腕。変化球もブレーキの効いたチェンジアップと打者の手元で鋭く変化するカットボールはプロでも一級品となっていきそうなキレがある。

 フォームについても「後ろ(テイクバック)が柔らかく使えますし、ボールの角度が良いのも魅力」とスカウトの1人が語るように、その伸びしろはたっぷりとある。

 神奈川・横須賀工時代は2年秋からエースとなったが、最後の夏は県2回戦で敗退。「甲子園に行きたいとは思いましたけど、現実的に難しいと思っていました」と正直に振り返るように激戦区・神奈川では目立つ存在ではなかった。

 それでも、2年の冬あたりから筋力トレーニングと食事の効果で体重が増え、球速が急激に伸び始めた。141キロを計測するまでになり「大学でも野球を続けたい」と思うようになった時、東海大九州キャンパスと縁ができた。「田舎の大学で目立とう」と南部正信監督の口説き文句で、縁もゆかりもない熊本に拠点を移した。

 だが入学直後に熊本地震が起きた。阿蘇キャンパスにグラウンドと寮があったため被害は甚大で避難生活を強いられリーグ戦出場を辞退。さらにグラウンドは安全性が確保されず使用不可に。今も練習は熊本キャンパス内のソフトボール場で行なっている。

 そんなハンデをもろともせずに躍進を遂げたのが2年春。限られた環境の中で体幹や下半身を鍛えていくと148キロを計測。そして抑え投手として11年ぶりの大学選手権出場に貢献。初戦の天理大戦で快速球を次々と投げ込み、12月の侍ジャパン大学代表候補合宿にも召集された。

 その後、3年時は腰痛で思うような成果を残せず、万全を期した今春は部員の不祥事によりリーグ戦出場を辞退。それでもNPBのスカウト陣の注目度は変わらず、春先から練習試合には多数のスカウトが詰めかけた。

 そして現在、調査書は11球団から届いている。不遇にも負けずにたくましく成長してきた男の成り上がりは、こんなものでは終わらない。

文・写真=高木遊