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高校野球

ヒジ痛の長期苦渋の日々も、大器がプロに挑む
井上広輝(日大三高)【時は来た!ドラフト指名を待つ男たち 高校生編】

井上 広輝(いのうえ ひろき) ●守備 投手 ●身長・体重 181cm・81kg ●生年月日 2001年07月17日 ●所属 日大三高 ●球歴 日大三高 ●出身地 神奈川県 ●投打 右右 【写真提供:共同通信社】

井上 広輝(いのうえ ひろき)
●守備 投手 ●身長・体重 181cm・81kg
●生年月日 2001年07月17日 ●所属 日大三高
●球歴 日大三高 ●出身地 神奈川県 ●投打 右右
【写真提供:共同通信社】

 井上はいつ、投げるんだ。

 今年は春からそんなことを思っていた。春の終わりに取材を申し込んだこともあったが、「ヒジの故障は回復してるけれど、最後の夏に向けて追い込みでもあるので取材は断ってる」と話を聞くことはできなかった。ただ、プロ志望届を提出するというので、一安心だ。

 二つ上の兄、大成の弟として注目され、1年時夏からベンチ入り。西東京大会でも登板した。秋の都大会では修徳戦に先発して完投勝ちするなど7年ぶりの優勝に貢献した。

 そしてセンバツに選ばれて初戦の由利工戦、リリーフで6回を無失点でデビューを飾る。147キロを計測した。続く三重戦では先発。6回3失点と好投したが、チームは敗れた。

 その直後、右ヒジを痛めたのが2年の春の都大会だった。

 夏の西東京大会での登板はなかった。でも、同学年の広沢らの頑張りもあり、チームは甲子園出場を果たす。

 甲子園の2回戦、なんとか奈良大附戦で先発して3回をノーヒット、0点に抑えた。最速も150キロまで伸ばした。準決勝の金足農戦でもリリーフして2イニングを0点に抑えている。

 秋の都大会はまさかの初戦敗退だったが、暮れの東京都選抜メンバーに入ってキューバ遠征は5イニング11個の三振を奪い、復調を印象付けた。

 最後の夏は準々決勝の桜美林戦で満を持してエース登板。

 序盤から3点をリードされて3回、ピンチでマウンドにあがったが追加点を許す。さらに中盤以降も得点を与えた。6回を投げたが8安打を喫した。

 ストレートは140キロ中盤が出るが制球されない。結局、打線もつながらず涙をのんだ。

 試合終了後は目をはらし、うなだれていた。声をかけるのもはばかられるほどうなだれて、声は消え入りそうだった。

「精神的に弱かった。エースなのにピンチで抑えられなくて」

 ただ、3年春の時点では高校代表候補入りするなど、素材は申し分にない。

 腕の振りがしなやかで、ソフトボールで鍛えられたという強い手首が生かされて変化球も鋭い。

 2年の段階で、奥川とともに翌年はドラフト上位候補になるという人がいた。そして現在のスカウトの評価も落ちていない。

「ビッグ4と変わらない。指先が優れていると思う、ボールを操れる感覚がある」

「器用でセンスを感じるピッチャー。フォームもきれいで将来性がある。体格もいいし、球に角度がある」

 ケガの怖さがなくなった時のフルパワーが見てみたい投手なのだ。

 そのケガもあり、日大三の小倉監督には慎重に育てられたはずだ。チームの間近で広沢という好投手をみてきて、奮起もしただろう。大器の開花はこれからだ。

(文・清水岳志)