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巨人VS西武は46.7パーセント? 日本シリーズの対戦カードを予想する【NISSAN BASEBALL LAB】

巨人の選手がみんな駆け寄っている所

【写真提供=共同通信】

 

 優勝、クライマックスシリーズ(以下CS)進出争いがシーズン最終盤までもつれた今年のペナントレース。10月5日からはCSファーストステージが開幕する。

 シーズン3位からCSを勝ち上がった2010年のロッテや、CSの8試合で6勝を挙げ、球団史上初めての2位から日本シリーズ進出を決めた昨年のソフトバンクなど、この短期決戦ではさまざまなドラマが生まれてきた。今回はCS出場を決めた各チームの選手成績などをもとに、CSの試合のシミュレーションをおこない、今年の日本シリーズに進出するチームを予想してみたい。

 はたして今年は「下剋上」はあるのだろうか、日本シリーズはどのチーム同士の対戦になる可能性が高いのだろうか。

■コンピュータ上で試合をおこなう

 今回はコンピュータ上でクライマックスシリーズの各ステージの試合をおこなうことで、勝ち上がりチームを予想する。具体的なシミュレーション手法を以下に示しておく。

図1

1.CSの各試合に出場が予想される選手をリストアップし、各選手の凡打、三振、単打、二塁打、三塁打、本塁打などの打席結果が発生する確率を求め、ルーレットを作成(※)する。

※ルーレットの各打席結果の大きさは、過去30年のプロ野球データを解析し、より現実の試合と近い結果が出るよう、各選手のこれまでの成績に補正をかけることで求めている。

図2

2.各選手のルーレットを回すことで、1回表の無死走者なしの状態から試合終了まで打席結果のシミュレーションおこない、試合の勝敗を求める。実際の野球と同様、走者が生還すれば得点を加算し、3死になったら次のイニングに移る。

また、各打席結果が発生した際の塁上の走者がどこまで進塁するか(例えば走者二塁の状況で打席のシミュレート結果が安打の場合、1点入って走者一塁になるのか、得点は入らずに走者一三塁になるのかなど)は過去10年のデータを参考にした打席結果別の塁状況変化をもとにシミュレーションをおこなう。

3.同一のメンバーで14300回(100シーズン)試合をおこない、そのメンバーで試合を行った場合の勝利確率、引き分け確率、敗戦確率を求める。

4.求めた勝利確率、引き分け確率、敗戦確率をもとにCS各ステージの勝ち上がり率を計算する。CSの勝ち上がり規定に沿って、上位チームのアドバンテージを考慮したうえで計算をおこなう。

 今回は、各チーム表1,2のようなローテーションでCSを戦うと想定し、もしCSファーストステージが2戦で終了した場合は、3番手の投手が、3戦で終了した場合4番手の投手がCSファイナルステージの初戦に先発するものとしてシミュレーションをおこなうこととする。(表3,4)

 また、現時点ではセ・リーグ3位は広島、阪神の2チームに可能性が残っているが、今回は自力でCS進出が可能な広島が3位でCSに出場する想定で話を進めていく。

表1

表2

表3

表4

それではセ・パ両リーグの結果を見てみよう。

■CSファーストステージ 広島優位のセ、初戦の勝敗に注目のパ・リーグ

表5

表6

 今季13勝11敗1分と広島に勝ち越したDeNA。しかしシミュレーションでは、広島の勝ち上がり確率が53.7%とやや広島優位の予想が出ている。

(表5)第1戦で先発が予想される今永が今月19日の広島戦で5回途中7失点と崩れるなど、8月,9月に入ってからDeNAの先発投手陣が不安定なこともあり、このような結果となったようだ。

(表6)今永対ジョンソンの投げ合いが予想される第1戦も含め3戦すべての試合で広島有利の予想が出ており、DeNAからすると、今永をはじめとした先発陣が立ち直れるかがこのステージ勝ち上がりのカギになりそうだ。

表7
表8
表9
表10

 対するパ・リーグはソフトバンクの勝ち上がり確率が58.8%とセ・リーグと比較すると差がつく結果となった。(表7)楽天は今季パ・リーグ内で1試合平均得点が最も低いソフトバンクとの対戦ということもあってか、苦戦が予想されている。

(表8)シミュレーションをおこなった3試合のうち、最も接戦と予想されたのは第1戦のソフトバンク・千賀と楽天・則本の投げ合いで、ソフトバンクの勝率51.7%、楽天の勝率が47.2%、引き分けが1.1%という結果であった。

 もしこの初戦に勝利すると、ファーストステージを勝ち上がる確率は、ソフトバンクの場合は81.9%、楽天の場合は67.0%まで上昇する。(表9,10)CSいずれのステージにおいても初戦が重要であることは間違いないが、特にこの試合は両チームの今シリーズの明暗を大きく左右する一戦となりそうだ。

■CSファイナルステージ 盤石の巨人と対戦チームが気になる西武

 リーグ優勝チームに1勝のアドバンテージが与えられるファイナルステージ。今回はセ・パ共にファーストステージの勝ち上がり確率を考慮したうえで、1位、2位、3位すべてのチームの日本シリーズ進出確率を算出した。

表11
表12
表13
表14

 まずセ・リーグだが、5年ぶりのリーグ優勝を果たした巨人の日本シリーズ進出確率は76.4%となった。

(表11)巨人はDeNAとの対戦となった場合は78.7%、広島との対戦となった場合も74.5%と、いずれのチームがファーストステージを勝ち上がってきた場合も、安定して高い日本シリーズ進出確率を記録した。

(表12,13)今季巨人は、セ・リーグでは広島にのみ負け越したが、広島戦のシーズン通算成績を見てみると、1試合平均得点4.36に対して1試合平均失点は4.08と得点が失点を上回っていた。昨年と異なり互角かそれ以上の結果をのこしていてもおかしくない成績であったことが伺える。

(表14)そういった点も考慮され、広島が2戦・3戦いずれの試合数でファーストステージを勝ち上がった場合も、ファイナルステージの6試合中5試合で巨人有利の予想結果が出ていた。DeNA、広島の進出確率はそれぞれ9.9%、13.7%だった。

表15
表16
表17

 パ・リーグ連覇を果たし、11年ぶりの日本シリーズ進出を狙う西武。日本シリーズ進出確率は61.1%という結果になった。

(表15)仮に、ファイナルステージ全ての試合の勝利確率が五分五分の場合、アドバンテージを得ているチームの日本シリーズ進出確率は、65.6%となるため、西武にとっては、やや苦戦を強いられることを示唆する予想結果となった。

 西武にとっての脅威は、やはり昨年もCSファイナルステージで敗れたソフトバンクだ。楽天との対戦となった場合、日本シリーズ進出確率は66.9%だが、ソフトバンクとの対戦になると57.0%と約10%近くも下がってしまう。

(表16,17)今季はソフトバンクに対しても楽天に対しても負け越している西武。シーズン後半戦の怒涛の追い上げでリーグ連覇を飾ったものの、ソフトバンクとの戦力差は圧倒的に優位というわけではなさそうだ。西武はファーストステージの勝負の行方から目が離せない。

 ソフトバンク、楽天の進出確率は、それぞれ25.3%、13.6%となっている。

■全カードの発生確率

表18

 最後に今年の日本シリーズで実現する可能性がある9通りの対戦カードを、発生率の高い順に示しておく。

(表18)最も可能性が高いのはリーグ優勝チーム同士の巨人VS西武の組み合わせで46.7%だった。以下巨人VSソフトバンクの19.3%、巨人VS楽天の10.4%と続く。そして今年最も「下克上」の可能性があるチームはソフトバンクで、その確率は25.3%である。

 今年はリーグ優勝チームの本拠地がセ・パいずれもドーム球場ということで、一昨年の広島対DeNAのように雨天中止などで休養日ができ、下位チームがCSファイナルステージの早い試合で好投手を投入できるような状況は発生しにくい。

 しかし短期決戦ならではの奇策や先発ローテーションの組み立てなどで、今回の想定と異なる選手起用が生じれば少なからず予想結果も変わってくる。今回の想定と実際の試合の、選手起用の違いなども比較しつつシリーズの行く末を、予想と共に楽しんでいただければ幸いである。

※データは2019年9月25日時点
文:データスタジアム株式会社 大川 恭平