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仲間の励ましに溢れ出た涙 ドラフト指名漏れの桃太郎が「2年後」へ再出発


明治神宮野球大会の出場をかけた、第8回東北地区大学野球代表決定戦の準決勝が22日、宮城・仙台市民球場で行われた。仙台大は青森大に2-1で辛勝。20日のプロ野球ドラフト会議で指名漏れした仙台大の3番・松本桃太郎内野手(4年)は1打席目で先制点の足がかりになるセンター前ヒットを放った。

■ドラフト指名漏れの桃太郎に仲間の励まし、「2年後の指名」へ涙の再出発

 明治神宮野球大会の出場をかけた、第8回東北地区大学野球代表決定戦の準決勝が22日、宮城・仙台市民球場で行われた。仙台大は青森大に2-1で辛勝。20日のプロ野球ドラフト会議で指名漏れした仙台大の3番・松本桃太郎内野手(4年)は1打席目で先制点の足がかりになるセンター前ヒットを放った。

 負けたら終わりの一発勝負。2-1で辛くも逃げ切り、松本は「トーナメントなので負けたら次がない。点差や内容はどうあれ、勝てたよかった」と息をついた。

 いきなり、チームに勢いを与えた。1回、2死無走者。松本の打球は二遊間を抜け、センター前に転がっていった。暴投で二塁に進んだ松本は、5番・郷古裕樹外野手(4年)の左越え二塁打で先制のホームを踏んだ。四球で出塁し、郷古の二塁打で三塁にいた大坂智哉内野手(4年)が暴投で2点目のホームイン。「1、2番が倒れ、僕が打てないと悪い空気で試合が始まってしまうと思った。いい形で先制できたと思う」と頷いた。

 仲間の励ましに結果で応えた。仙台六大学リーグでプレーした4年間で、通算120本の安打を放った。この数字は歴代1位だ。今秋は打率、本塁打の2冠にMVPと活躍。特別賞も受賞した。プロ志望届を提出し、20日のドラフト会議で指名を待った。夢の扉に手をかけたが、松本に吉報は届かなかった。

 松本が誰よりも努力してきたことを指導者やチームメートはよく知っている。ドラフト会議直後に森本吉謙監督からは「神宮大会に出て日本一になろう」「日本一のスラッガーになれ」と激励された。寮に戻ると、鶴田剛也外野手(4年)には「お前なら絶対に2年後、プロに行ける。絶対に神宮に行こう」と声をかけられ、ほかのチームメートからも「僕らの中ではお前が一番だから」などと励まされたという。

■部屋に戻り溢れ出た涙、「自分のことでチームに迷惑はかけられない」

「ウルっときました。落ち込んでいる中、温かい言葉をかけてくれた。部屋に帰って、涙が出てきました」

 人前では堪えていた感情が、部屋に戻ると溢れ出た。指名されなかった悔しさ以上に仲間の温かさや気遣いに胸を打たれ、布団を濡らした。そして、みんなを神宮の舞台に連れて行くと誓った。

「負けられない戦いが始まっている。自分のことでチームに迷惑はかけられない。クヨクヨしていても仕方がない」

 気持ちを切り替え、この日、2死から先制点につながる安打を放ってチームを救った。

 チームへの献身を見せながらも、次への“戦い”は始まっている。卒業後はホンダ鈴鹿でプレーする予定で、「(アピールは)今日から始まっているので、新たなスタートだと思った。2年後に指名されるようにやるしかない」と前を向く。

 明治神宮野球大会への出場枠は1つ。決勝の相手は、阪神から2位指名を受けた小野泰己投手を擁する富士大だ。「明日、勝たないと先はない。4年生や監督さんのためにも神宮に行きたい」。大きく成長させてくれたチームのために、桃太郎が力の限りを尽くす。

高橋昌江●文 text by Masae Takahashi

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