- プロ野球
2019.09.20 12:00
快進撃の埼玉西武、再び爆発した「山賊打線」を徹底解剖【NISSAN BASEBALL LAB】
一時は福岡ソフトバンクの独走で決着するかに思われた2019年パ・リーグのペナントレースだが、昨季王者の埼玉西武が8月に17勝10敗と怒涛の追い上げ。9月も9勝3敗と白星を先行させて9月15日に逆マジック「9」を点灯させた。
この快進撃の原動力となっているのは、昨季から続くチーム自慢の「山賊打線」で間違いない。
■8月に大爆発、史上2位の月間172得点
特に8月がすごかった。27試合(17勝10敗)を戦った中で、計172得点(1試合平均6.4得点)をマーク。月間172得点は、1962年8月に南海が記録した173得点に次ぐプロ野球史上2位となった。
先発オーダーの個人成績(表1)を見ると、その“絶好調ぶり”がよく分かる。1番の秋山翔吾から6番の外崎修汰まで、さらに9番の金子侑司も合わせて9人中7人が月間打率3割超え。
打率2割台だった山川穂高は9本塁打で25打点、続く木村文紀も6本塁打で15打点とポイントゲッターとして働いて勝利に貢献。月間本塁打が5本未満の2人、源田壮亮は5盗塁、金子は6盗塁と持ち味を発揮しており、どこからでも点が取れ、どこにも切れ目のない打線が完成していた。
■浅村の穴を「森+外崎+中村」で埋める
破壊力抜群の「山賊打線」は昨季、1950年の松竹(908得点)、2003年のダイエー(822得点)に次ぐプロ野球歴代3位のシーズン792得点を奪った。改めてその基本オーダー(表2)を振り返ると、中軸以降の得点圏打率の高さと盗塁数の多さが目立ち、選手個人としては打率.323でOPS.937の1番・秋山、47本塁打124打点でOPS.985の4番・山川の働き、そして「3割30本100打点」をクリアしてOPS.910だった3番・浅村栄斗の存在が大きい。
しかし、オフにその浅村がFAで東北楽天に移籍。打線に大きな穴が空いたはずだったが、今季もここまでで計720得点とリーグ断トツトップの得点力を維持している。
2019年の基本オーダー(表3)を見ても、選手個々に若干の数字の低下が見えるとはいえ、全体的には昨季とほぼ遜色ない数字が残っている。大きかったのが、森友哉と外崎の成長。そして中村剛也の復活である。課題だった「浅村の穴」は、この3人によって埋められている。
■元本塁打王が「復活?」、「進化?」
「浅村の穴」を埋めた3人。森と外崎が予想を上回る成長を見せたことは大きいが、それ以上に予想外だったのは元本塁打王・中村の復活だろう。
2008年46本、2009年48本、2011年48本と年間40本塁打を3度クリアし、その3年に加えて、2012年(27本)、2014年(34本)、2015年(37本)と計6度の本塁打王に輝き、打点王のタイトルも3度(2009、11、15年)獲得した中村だが、2016年(21本塁打61打点)、2017年(27本塁打79打点)とタイトルを逃すと、昨季は開幕から打撃不振に陥り、怪我もあってシーズン初本塁打が6月となった。
その“事案”に加え、今年の8月で36歳という年齢、そして新4番・山川の台頭で、今季開幕前の時点で中村に対しては大きな期待を寄せる者は少なかった。案の定、4月、5月は調子が上がらなかったが、6月に月間打率.333で5本塁打27打点の活躍を見せると、7月も好調をキープ。8月中旬からは4番に復帰し、打線の軸としてチームの快進撃を支えた。
その中村において気になるデータが、今季の対ストレート打率だ。中村の2008年以降の年度別の対ストレートの打撃成績(表4)を見ると、これまで打率3割を超えたのは本塁打王と打点の2冠に輝いた2009年の1度のみ。だが今季は打率.362で本塁打数も29本中16本がストレートを弾き返したもの。打点数は自己最高を更新しており、この部分では「復活」というよりも「進化」という言葉の方がしっくりくる。
■過去の「○○打線」との比較
リーグ連覇となれば、埼玉西武の「山賊打線」に対する評価もさらに上がることになる。過去、NPBでは様々な「○○打線」(表5)が猛威を振るってきたが、それらと比べても「山賊打線」の破壊力は遜色がない。数字としては「本塁打」と「盗塁」が目立ち、「長打力×機動力」が相手に大きな脅威を与えている。
そして記録だけでなく、過去の「○○打線」と同じく、すでに強い記憶としてファンの脳裏に焼き付いているはずだ。この「山賊打線」は今後も破壊力を維持するのか、はたまた、さらに進化した姿になるのか。ペナントレースの最終局面、そしてCS、日本シリーズの戦いの中で、その行方を見てみたい。