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驚異の成長&対応力!森友哉、史上4人目の“首位打者捕手”から更なる進化へ!【NISSAN BASEBALL LAB】

西武―ソフトバンク22  1回西武1死一塁、森が左中間に先制2ランを放つ=メットライフドーム

【写真提供:共同通信社】西武―ソフトバンク22  1回西武1死一塁、森が左中間に先制2ランを放つ=メットライフドーム

  

 ペナントレースもいよいよ勝負の9月に突入し、各タイトル争いも最終盤を迎える。ここ十数年、獲得選手が毎年変わって来た首位打者部門では、9月3日終了時点でセ・リーグでは鈴木誠也(広島東洋)が打率.333、そしてパ・リーグでは、森友哉(埼玉西武)が打率.337をマークしてトップに立っている。

 そして、チームの正捕手でもある森がこのまま首位打者を獲得すれば、1965年の野村克也(南海)、1991年の古田敦也(ヤクルト)、2012年の阿部慎之助(巨人)に続く史上4人目の“首位打者捕手”が誕生することになる。

■レジェンドたちに肩を並べ、上回る可能性も

 これまで捕手として首位打者に輝いたのは、たった3人。改めて「打てる捕手」だった先人たちを振り返ってみたい(表1)。

捕手の首位打者獲得者&森友哉の今季成績(表1)

 1965年の野村克也は、首位打者だけでなく、42本塁打、110打点で三冠王に輝いた自身のベストシーズン。計9度の本塁打王に輝いた野村だが、首位打者はこの年の1度のみ。自身の最高打率でもあった。

 続いて1991年の古田敦也。オールスターで3度盗塁を刺してMVPに輝いたプロ2年目のシーズンで、最終的に中日・落合博満に3毛差という僅差で上回って首位打者に輝いた。この年も含めてプロ18年で打率3割越えを8度(規定打席以上)記録したが、首位打者はこのシーズンのみ。野村同様に、この年が自身の最高打率だった。

 そして記憶にも新しい2012年の阿部慎之助。4番としてチームを引っ張り、リーグ優勝に貢献するとともに、首位打者、打点王、最高出塁率のタイトルを獲得した。また、この年の阿部の打率.3404は、1991年に古田が記録した打率.3398を上回る捕手の最高打率でもあった。

森友哉の年度別成績(表2)

 ここで気付くのは、彼らが首位打者に輝いた年は、彼ら自身のベストシーズンだったと言える点。高卒1年目から1軍に出場している森の年度別成績(表2)を見ると、今季がこれまでのベストであることは間違いないが、まだ24歳で今後の更なる成長を見込める。まずは今季、捕手として史上4人目の首位打者だけでなく、捕手の歴代最高打率更新に期待がかかる。

■優れた対応力と成長スピード

 今年がプロ6年目の森は、ここまで順調に成長してきたと言えるだろう。安打数、打率、本塁打数といった表面的な成績だけでなく、スイングの内容を見てもその進化ぶりが分かる。

森友哉のカウント別&球種別の打率(表3)

 プロ1年目からのカウント別&球種別の打率(表3)を見ると、ファーストストライクへの強さは相変わらずだが、特に今季は2ストライクに追い込まれた際の打率が、昨季の.190から.262に大幅アップしていることが分かる。
 
 2017年は38試合出場と出番自体が少なかったことを考えても、今季の“粘り強さ”が目下、首位打者となっている大きな要因だ。また、球種別の打率ではストレートとカットボールの昨季からの打率アップが際立っている。ストレートに力負けせず、流行りの“動くボール”にも対応。1年でここまで数字を改善させたことは驚きに値する。

 そして投手の左右をも苦にしない。森の左右投手別成績(表4)を見ると、1年目の2014年は左投手に苦しみながら2年目に克服。昨季は再び対左に苦しんだが、今季はしっかりと修正している。この対応&成長力が、森の大きな魅力である。

森友哉の左右投手別成績(表4)

■まだ24歳、さらなる進化のために必要なものは?

 高校時代から圧倒的な打棒で文句なしの実績を残した森だが、当時から170センチという低身長を懐疑的に見る声はあった。しかし、プロ入り以降は球団の優れた育成プランの下で期待通りに成長し、昨季は捕手としてチーム最多の81試合、そして今季は不動の正捕手として守備面でも成長の跡を見せている。そして、彼がまだ24歳という発展途上の年齢なのだ。

 今後の発展・改善点はどこか。一つのヒントが、2019年のファウル率ランキング(表5)に隠されている。打者のファウル数、その確率が分かるが、森はファウル率で現在2位、パ・リーグではトップの数字となっている(9月3日終了時点)。よく言えば「粘っている」と評価できるが、悪く言えば「捉えきれていない」とも言える。

2019年のファウル率ランキング(表5)

 現にファウル率ワースト5を見ると、トップはセ・リーグの首位打者である鈴木誠也(広島東洋)でファイル率.115。以下、デスパイネ(福岡ソフトバンク)、ブラッシュ(東北楽天)というスラッガーに鈴木大地(千葉ロッテ)、そして山田哲人(東京ヤクルト)と続く。特に現在の球界トップとも言える鈴木と山田のファウル率が低いのは注目すべき点だ。

 そしてそれは、森の今後の「伸びしろ」を意味する。これまでファウルになっていた打球をフェアゾーン、あるいはスタンドへ放り込むことができるようになれば、打率、さらに本塁打の数はさらにアップする。その時には、2004年の松中信彦(ダイエー)を最後に生まれていない三冠王も見えてくるはずだ。残りシーズン、森の首位打者獲得と、その先にあるものに夢を抱きながら、過ごしてみよう。