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変わりゆく先発投手の役割【NISSAN BASEBALL LAB】

【写真提供:共同通信】

  

 昨年初めて両リーグともに規定投球回到達者の数が1ケタだったNPB。今季はそれどころか、パ・リーグでは5人を切ってしまう可能性がある。8月25日時点で規定投球回に到達している6投手のうち、山本由伸(オリックス)は故障で離脱中、二木康太(ロッテ)は不調の影響で25日に出場登録を抹消され、8月末時点で4選手になる目算だ。

 シーズンを通して先発投手の役割を果たした目安ともいえる規定投球回は、在籍球団の消化試合数と同数以上のイニングを投げることを指す。現行のレギュラーシーズンは143試合のため、単純計算すると中6日のローテーションを守れば24度の先発機会があり、1登板あたり6イニングを投げることで規定投球回に到達する。つまり、規定投球回到達者の減少はローテーションを守っている投手の数、あるいは先発投手が1試合で投げるイニングに関連していると考えてもいいだろう。

表1 2004-19NPB先発投手データ

 表1に先発投手の年間イニングに関係しそうなデータを整理した。なお、今季と過去年度の条件を平等にするために、各チームが115試合を消化した時点で統一している。この表から、18年の規定投球回到達者の少なさはローテーションを守っている投手の減少に起因していると考えられる。それに加えて、今季は平均投球回や投球数が例年にないほど少なくなった。リリーフ投手を先発させ、その後に先発も務まる投手をつなぐ“オープナー”戦術を多用している日本ハムを除いても平均投球回は5.56で、12球団にある程度共通する傾向のようだ。

 この投球回や投球数減少は先発投手の力が落ちてきたから、とは考えづらい。投打の結果は相対的なもので、打者全体の変化や道具の変更など何らかの要因でバランスが変われば自然と結果も変わってくる。その確認をすべく1試合平均得点4.31(前年比 -0.01)や打者1人あたりの投球数3.98(前年比 ±0.00)を探ったところ、投打のバランスが著しく変わったことを指し示す変動はなかった。そのため、今季から実施された一軍の出場登録枠拡大によって、ベンチ入りできる救援投手を増やせるようになった影響が大きいと判断し、書き進めていく。

■登録枠拡大の影響

表2 2015-19NPB 1試合平均救援起用数

 1試合平均の救援起用数を見てみると、やはり今季は過去のシーズンよりも顕著に増加している(表2)。前述のオープナー戦術を用いる日本ハムと原監督が3度目の指揮を執る巨人は前年比で1人ほど増えており、減少したチームはDeNAのみ。一軍登録枠の増加を継投の幅を広げるために使うチームの多さがうかがえる。

 とはいえ、このデータは救援投手がどのタイミングで登板しているかまでカバーできていない。リリーフを小刻みに起用している場合でも、回数が増えてしまうのだ。そこで先発投手の降板タイミングが実際に早くなっているかどうかを以下の方法で調べてみた。

・5回を投げきっている先発投手
・その際の投球数が90球以下
・かつ3失点以下

これらは先発投手からオープナーを除外し、かつ投球結果から続投の判断に迷うと思われる条件を想定している。

■早め継投の日本ハム、続投の巨人

図1NPB先発投手の5回降板割合

 データのある2004年以降で前述の条件の先発が5回で降板した割合を見ると、2019年は12.6%で初めて10%を超えていた(図1)。もっとも18年の段階で9.3%と近年では高めの数字になっていて、一軍登録枠の拡大がその流れを助長したと考えてもいいのかもしれない。勝負の9月を迎えることを考えると、今後さらに割合が上昇する可能性もある。

図2 2019年NPB先発投手の5回降板割合

 先ほどの降板割合を今季のチーム別で算出したのが図2で、日本ハムの数字の高さは一目瞭然だ。2位のDeNAも同様だが、オープナーを使うことが多く先発を見切るタイミングも早い両チームは、先発投手が3巡目の打者と対戦するリスクを避ける意識が強いのかもしれない。

 一方、日本ハムに次いで救援投手の起用数が多かった巨人が上記条件で先発を降板させたのは中5日で登板した5月4日の今村信貴のみで、基本的に先発を引っ張る傾向にあるようだ。エースの菅野智之が例年ほど支配的ではないこと、勝利の方程式が流動的だった影響などが考えられるが、その巨人にも9月1日の試合をリリーフ投手だけで継投していく“ブルペンデー”にするという報道がある(※1)。チーム事情に左右される面はあるものの、他球団も日本ハムやDeNAの動きに追従する可能性は十分で、登録枠拡大元年となった今季は投手運用が大きく変化した一年になりそうだ。

■交代機の見極めが焦点に

表3 2015-19NPB先発投手の結果別チーム勝率

 最後に、先発投手の結果によってチーム勝率がどれくらい変わるのかに触れておきたい。表3からわかるのは、例えば先発が5回以上6回未満で2失点だったときの方が、6回以上7回未満の3失点時よりも高い確率で勝利しているということだ。もちろんこれは一般的なもので、救援陣の力量や疲労度などを考慮するとどんな状況にも該当するわけではない。逆にいうと、強力なブルペン陣を構築できれば、先発を続投させるリスクを鑑みての継投につながるデータでもあるだろう。

 NPBは一軍と二軍の昇降格がMLBと比較するとはるかに自由で、今季からは登録枠も拡大されて投手起用に柔軟な発想を生かしやすいリーグとなった。継投のタイミングは試合のターニングポイントと目されやすく、首脳陣の意思が如実に反映されるシーンでもある。今後は的確な交代機を見いだす手段の模索に以前よりも力を割くチームが現れても不思議ではないし、仮に先発投手の疲労蓄積時の傾向を可視化することができれば、継投の決断に大きなインパクトをもたらすはずだ。各球団がどのようなアイデアでチームを勝利に近づけていくのか、注目していきたい。

※1 「巨人宮本コーチ、今季初のブルペンデー導入を示唆」 (2019年8月26日) 日刊スポーツ

※データは2019年8月25日時点

文:データスタジアム株式会社 小林 展久