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日本Sの行方は…鍵握る広島打線の出来、栗山采配は「神がかってる」以上!?


日本シリーズが22日に開幕する。2位に17.5ゲーム差をつける独走Vを飾った広島と、最大11.5ゲーム差を大逆転した日本ハムが、順当にクライマックスシリーズ(CS)を突破。まさに、今季のセ・パ最強チームが激突する頂上決戦となる。

■日本ハムが有利? 最大の理由は二刀流右腕の存在「それだけ大谷は異次元」

 日本シリーズが22日に開幕する。2位に17.5ゲーム差をつける独走Vを飾った広島と、最大11.5ゲーム差を大逆転した日本ハムが、順当にクライマックスシリーズ(CS)を突破。まさに、今季のセ・パ最強チームが激突する頂上決戦となる。

 本拠地で第1戦を迎える広島は左腕のクリス・ジョンソン投手が先発。一方、日本ハムは日本球界の歴史を塗り替え続ける二刀流右腕・大谷翔平投手がマウンドに上がる。「エース対決」の勝敗は、シリーズの行方を大きく左右することになりそうだ。

 広島が日本一なら32年ぶり、日本ハムなら10年ぶりとなるが、どちらが有利なのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団でプレーした野球解説者の野口寿浩氏は「単純にCSの戦い方を見ていると、日本ハムが有利かなと思います」と予想した。

 今季の広島は圧倒的な打力でセ・リーグを制した。破壊力のある打線については野口氏もシーズン中から高く評価していたが、CSでは決して状態は良くなかったと見ている。リードオフマンの田中が打率.833、出塁率.882という圧巻の活躍を見せたが、丸は.154、菊池は.167と打率1割台。今季ブレークした鈴木はわずか1安打で打率.083だった。新井(.250)とエルドレッド(.222)も打率2割台だが、勝負強いタイムリーや貴重な一発でチームを勝利に導いた。

「田中は大当たりしましたけど、他の選手はそうでもなかった。ここぞという時につながったから勝ちましたけどね。もちろん、その点は『さすが広島』でしたけど、日本ハムのピッチャー陣がそれを許すかどうか。申し訳ないですが、CSで対戦したDeNAのピッチャーと日本ハムのピッチャーを比べると、日本ハムの方が上でしょう。CSファーストステージで巨人と3試合を戦ったDeNAは、ファイナルステージでは第1戦から『裏ローテ』が投げましたし。ただ、広島打線は(1番手の)井納には(第3戦で)抑え込まれた。日本ハムには、井納のようなピッチングを出来る投手が何人かいますからね。

 やはり気になるのは丸、菊池、あとは鈴木ですね。鈴木の最終戦のヒットは『おっ』と思わせたヒットではありましたけど、あれでシリーズが終わってしまったので。その翌日も試合があれば、3安打くらいしたかもしれませんが、(感覚を)つかみかけたところで終わってしまったのが、彼個人としては痛かったかなと。当然、チームは勝ってよかったでしょうけど」

■広島打線がカギは? 「菊池や丸が打たないといけない」

 田中の大当たりで「つなぎ役」に徹した菊池は、2番の仕事をきっちりこなした。ただ、打撃の状態はまだ今一つだと野口氏は指摘する。

「田中があれだけ出塁したから、菊池はバントばかりでした。そういう意味では素晴らしい働きをしたと思いますけど、田中があそこまで出塁できなかった時に、菊池が代わりに出塁するようなバッティングが出来るかというと、まだ彼本来の状態じゃないかなという気はします。井納が先発した時(第3戦)にバントしないで強行していましたけど(結果は一飛)、あの時の打撃を見ると、井納が良かったというのもありますけど、ちょっとどうなのかなと。リーグ優勝を決めた後から、少し振りが大きくなってきたかなという感じはありましたよね」

 プラス材料となりそうなのは、第3、4、5戦と札幌ドームで戦うため、指名打者制があること。相手先発投手の右・左で使い分けてきた松山とエルドレッドを同時に出場させることができる。

 野口氏は「相手が右だろうが左だろうが、札幌ドームにいけば新井を含めて3人まとめて使えます。そういう意味ではいいかもしれません。新井についても、状態というのはあまり関係なくて、ここというところで打ってくれればいい。勝ちにつながる打点を挙げてくれれば、というところなので。逆に、新井にそういう仕事をさせるためには、菊池や丸が打たないといけない。田中は状態がいいので、CSほどではなくても、4、5割くらいは打てるとは思います」と分析した。

 では、日本ハム打線はどうか。CSでは持ち味が十分に出ていたと野口氏は話す。

「派手さはないけど、いつの間にか点を取ってくる。CS第5戦は、まさにそうでした。ジワリジワリと追い上げて、逆転した。CSでは中田翔が良かったし、近藤も当たっていました。日本ハム打線も3番・大谷、4番・中田ときた後の5番バッターが絶対にキーになる。近藤は状態がいいですし、ジョンソンが左だからというなら岡がいるし、陽岱鋼を5番に上げてもいい。思い切って矢野謙次だって使える。そう考えると、日本ハムはバリエーションが豊富です。

 あとは、杉谷が第5戦であれだけハッスルしていい仕事をしたので、シリーズ初戦は多分、杉谷で来るでしょう。特にジョンソンだから、杉谷はスイッチで右でも打てるので。そのまま2番で使っていいと思います。日本ハム打線はソフトバンクの強力投手陣と対戦して、ああいう成績を収めて上がってきたので、状態はいいでしょう」

■栗山監督の采配も光る日ハム、「『神がかっている』では片付けられない」

 投手陣に目を向けると、両チームともに先発陣は充実。ブルペンでは、日ハムの守護神マーティンが負傷で帰国したが、CSでも登板は限られていただけに、影響は最小限に抑えられそうだ。いい勝負となりそうだが、野口氏は大谷翔平という絶対的な存在こそが、今年の日本シリーズで日本ハムが有利と予想する最大の理由だと説明した。栗山監督は当初、大谷を先発投手として起用しない可能性もあることを明かしていたが、予告先発に合意し、第1戦の先発として公表した。

「広島は初戦のジョンソンで負ける訳にはいかない。マツダスタジアムから始まりますしね。もし大谷が投げなければ、日本ハムの初戦先発は増井だったはずです。増井でも投手戦になっていたでしょうけど、やはり大谷ほどのインパクトは残せない。それだけ大谷が異次元ですから。ソフトバンク戦と同じように初戦でピシャリといってしまうと、相手の心を折ることができる。大谷が投げるとなると、日本ハムの4勝1敗でシリーズは終わりそうな気がします」

 ただ、広島も精神的支柱の黒田が今季限りでの現役引退を表明。チームの士気が上がっていることは間違いない。野口氏は「黒田の引退発表がどう影響するか。もし大谷にやられても、広島は黒田では勝つのではないでしょうか」としながらも「ただ、選手は(シーズン中から)感じ取りますから。あらかじめ、今季で黒田が辞めるかもしれないと感じていた選手もいるかもしれません」と推測する。

「もちろん、CSファイナルでジョンソンの凄さを見ていますから、そうそう点は取られないでしょう。でも、大谷と投げ合うと、1点取られてしまうと負けという感じなってしまうので。大谷が投げなければ、最終戦までもつれそうな感じがしていましたけどね」

 そして、何よりも大きな理由となるのは、その大谷の起用法も含めて、絶妙な采配を続ける栗山監督の存在。野口氏は「本当にすごい。今年は打つ手、打つ手、全部当たってしまう。しかも、ちゃんとした裏付けがあるのでしょうから。ただ『神がかっている』という言葉では片付けられない」と脱帽する。

 史上最強の二刀流プレーヤーを抱える日本ハムが勝つのか。それとも、広島が日米で偉大なキャリアを積み上げてきたベテラン右腕の花道を飾るのか。見どころ満載の日本シリーズとなることは間違いない。

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