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プロ野球

福岡ソフトバンクホークス 松田宣浩が発起人
昨年から本格始動した地元への恩返しプロジェクト


今から4年ほど前、福岡ソフトバンクホークスの松田宣浩選手と東北楽天ゴールデンイーグルスの則本昂大選手が、彼らの地元・滋賀県で行われた野球教室に初めて一緒に参加した。松田選手は中学まで滋賀県に住んでいたが、その後中京高校(愛知県)、亜細亜大学(東京)へと進み、プロ入りしてからはずっと福岡に住んでいる。

「生まれ育った滋賀県にまだ恩返しができていない」と感じていた松田選手は、その野球教室の主催者だった一般社団法人滋賀アスリート夢クラブに「滋賀の子どもたちに何かしてあげたいので、県人会のようなものを作ってほしい」とお願いし、則本選手などほかの同郷選手にも自ら声を掛けた。そして、それまであまり交流のなかった滋賀県出身のプロ野球選手たちが、松田選手の思いのもと集結することになった。

◆「夢を見ること」の大切さを子どもたちに伝えたい

「プロ野球滋賀県人会」は、約3年間の準備期間を経て、昨年本格的に活動をスタート。現在は、大きく分けて三つのプロジェクトを行っている。一つは「夢作文コンテスト」で、県内の小学生に将来の夢について作文を書いてもらい、審査員の先生方に優秀作を選んでもらう。受賞した子どもたちは「夢ツアー」に招待され、松田選手らの試合を生で観戦し、交流会にも参加できる。

二つ目のプロジェクトは「夢授業」。プロ野球選手と子どもたちを交流させたいと願う学校を募集し、その中から応募動機が県人会の趣旨と合う学校を選択。シーズンオフの12月に選手たちが分担してその学校を回り、子どもたちに夢の大切さを語る。昨年は県内11の学校で夢授業が実現したという。

三つ目は、メインプロジェクトとも言える12月の「滋賀オールスター野球教室」。全選手が集結し、ファンも子どもから大人まで約5000人が集まるビッグイベントだ。これらのプロジェクトはすべて、滋賀県や教育委員会などがバックアップし、地元企業による協賛で実施している。

◆2024年に向けて、滋賀県のスポーツ熱を高めたい

小中学校には強いチームもいくつかあるという滋賀県だが、高校生になる頃にはいい選手が県外に流出してしまうという課題がある。そんな背景もあって、県内の甲子園優勝校はこれまで出ていない。プロジェクトに参加しているプロ野球選手たちも、「地元で野球を頑張って盛り上げていこう」というメッセージを子どもたちに送っている。

松田選手と則本選手は、この活動を通して「しがスポーツ大使」にも就任した。盛り上がりを見せるこの活動を知ったJリーガーからは「プロサッカーの県人会も作ってほしい」という声も上がり、現在その実現に向けて動いているところだという。スポーツの垣根を越えて、いずれは「アスリート滋賀県人会」を作ろうという話もあるようだ。

「2024年の滋賀国体に向けて、県内のスポーツ熱をさらに盛り上げていきたいんです」と語るのは、プロ野球滋賀県人会を運営する滋賀アスリート夢クラブの代表理事・小寺学さん。将来的には、選手たちが引退した後、滋賀に戻ってきやすい環境を作り、選手たちのセカンドキャリアのサポートも行っていきたいという。