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指名漏れの悔しさから1年、阪神指名引き寄せた右腕に恩師「本当に成長した」


20日に開催されたプロ野球ドラフトで、阪神は6巡目に四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに所属する福永春吾投手を指名した。徳島で過ごした2年間、その成長を見守ったインディゴソックスの監督で、元日本ハムの中島輝士氏は「去年から見たら本当に成長した」と目を細める。

■一時は野球断念、独立L経て阪神6位指名の徳島・福永春吾、元日ハムの中島監督も太鼓判

 20日に開催されたプロ野球ドラフトで、阪神は6巡目に四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスに所属する福永春吾投手を指名した。高校時代に一度は野球を諦めた22歳の152キロ右腕。ドラフト候補と噂された昨年は指名漏れの悔しさを味わったが、今年は晴れて地元・阪神に支配下選手として指名された。徳島で過ごした2年間、その成長を見守ったインディゴソックスの監督で、元日本ハムの中島輝士氏は「去年から見たら本当に成長した」と目を細める。

 大阪の強豪・金光大阪で野球に励んだ2年夏に右肘を骨折。一時は野球を離れ、アルバイトに明け暮れた。同学年の高校球児が甲子園でプレーする姿をテレビで見て「もう一度野球がやりたい」とグラウンドに戻った。

 関西独立リーグの06BULLSで2年プレー。さらなる高みを目指そうと、昨年四国ILの徳島に入団すると、いきなりソフトバンク3軍を相手に9回16奪三振無失点と快投した。17試合に投げて6勝6敗、防御率2.44。106奪三振を記録して、奪三振王にも輝いた。150キロを超えるパワフルな速球で押すスタイルはスカウトの目に留まり、ドラフト候補に名が挙がっているという噂は本人の耳にも届く。昨年10月22日のドラフト会議。徳島から2選手が掛かったが、福永の名前は呼ばれなかった。

 天国と地獄。人生の明暗が分かれた球団事務所での様子を、福永は「いや、もう体験したくないですね。あれだけきっついことはない」と振り返る。そんな右腕と一緒に心を痛めていたのが、中島監督だった。

■悔しさバネに―、「ドラフトの次の日から練習していた」

「一緒に入った吉田(嵩)が中日に育成(2位)で行ってね。ピッチャーだったら、福永の方が先に(NPBに)今年行くんだろうって思ってたら、後期から調子を上げた吉田が先に指名された。相当悔しかったと思うよ。俺も福永のことを思ったら、その夜は寝られなかった。辛かったよ」

 もう1年、徳島でNPBを目指すことにした福永は、今季は15試合に投げて6勝6敗、防御率1.38と圧倒的な成績を残した。奪三振数も97に上り、2年連続で奪三振王のタイトル獲得。「その(去年の悔しい)経験が今年は生きているのかなと思う」という本人の言葉に、中島監督も大きくうなずく。

「悔しさをバネにしたと思う。ドラフトの次の日から練習してたしね。練習態度もよくなったし、角が取れてきたっていうか大人になった」

 人間的にもピッチング面でも、大人になった。力任せに投げていた昨季に比べ、「今年は周りが見えるようになって、ピッチングの幅が広がった。打者を打ち取るコツも大分勉強できたんじゃないかな。それが一番大きなこと」と、その成長ぶりを褒めた。

■「ある程度の基礎はできている」、独立リーグの期待を背負う右腕

 ここまで紆余曲折の道を歩いたが、ようやく立てたスタートライン。決して甘くはないプロの道で成功できるか否かは、本人次第だ。

「ある程度の基礎はできていると思いますよ。ここ(徳島)では先発しかさせてないけど、中継ぎから入ることもあるでしょう。どういう形でも、与えられた場所をしっかりやってくれれば、チャンスはいっぱい出てくる。

 又吉(克樹)があれだけ頑張って、角中(勝也)が首位打者を取って……。このリーグ出身の選手が1人でも多くNPBで活躍してくれれば、四国アイランドリーグ自体が盛り上がる。もっと活気が出るようになるね」

 NPBで結果を出すことは、自分のためだけではなく、独立リーグからプロを目指す後進の後押しにもつながる。野球を諦めずに続けられた環境に感謝しつつ、阪神に福永あり、と言われるような存在まで成り上がりたい。

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