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2019.08.23 12:00
令和の新大砲!高卒2年目・村上宗隆が狙う歴史的記録と成長の証!【NISSAN BASEBALL LAB】
暑さも問題なし。高卒2年目の19歳、東京ヤクルト・村上宗隆のバットが真夏の神宮ファンに驚きを与え続けている。
開幕からスタメン出場を続けながら4月6本塁打、5月8本塁打、6月5本塁打とアーチを量産。7月は1本塁打と大人しかったが、8月に入って再び勢いを取り戻して20日までの17試合で、すでに自身の月間最多に並ぶ8本塁打をマーク。
8月12日の横浜DeNA戦(神宮)では山﨑康晃から史上最年少(19歳6カ月)でのサヨナラ弾を放つと、同18日の中日戦(神宮)では自身初の1試合2発。ここまで打率.236ながら、29本塁打、リーグトップの84打点をマークしている(8月21日終了時点)。
■本塁打&打点ともに清原に匹敵!中西越えも間近!?
この村上の活躍を過去の大打者たちと比べると、その“凄さ”がさらに際立つ。高卒2年目までのシーズン本塁打ランキング(表1)を見ると、村上は現時点で歴代3位タイ。
殿堂入りしている王貞治や豊田泰光、松井秀喜らの記録をすでに抜き、上には清原和博の31本塁打(高卒1年目)と歴代トップの“怪童”中西太の36本塁打の記録があるのみ。村上の現在の本塁打ペースを143試合換算すると「36.1本」。中西の36本にちょうど並ぶ。
同じく高卒2年目までの成績で、記録更新が“ほぼ確実”なのが打点だ。高卒2年目までのシーズン打点ランキング(表2)を見る。村上はすでに84打点をマークし、王貞治、松井秀喜、土井正博らの記録を悠々と抜き去るとともに、清原和博の高卒2年目(83打点)を抜いて歴代2位。中西太が持つ86打点も目と鼻の先という状況で、村上がトップにおどり出るのは間違いない。
■傑出するファーストストライクへの集中力
高卒2年目、しかも1年目は1軍出場6試合(14打席)のみという経験不足の中で、なぜここまでアーチを量産できるのか。もちろん天性の長打力と自身の工夫、試行錯誤があってこそだが、それを下支えしているのが打席内での「積極性」、そして「集中力」にある。
村上の今季のカウント別打撃成績(表3)を見ると、0ストライク時の成績が68打数30安打の打率.441を誇り、初球打ち7発を含む計10本塁打をぶっ放している。
ほぼ全ての打者が、ストライク数の少ないカウントほど打撃成績が良いのだが、同チームの先輩である山田哲人(0ストライク時:67打数25安打6本塁打、打率.373)やセ・リーグの首位打者である坂本勇人(0ストライク時:98打数39安打10本塁打、打率.398)と比べても、ファーストストライクへの集中力の高さは傑出している。
■対ストレートへの対応力向上
開幕からスタメン出場を続ける中、多くの三振を奪われながらも、打席内での積極性を失わずにバットを振り抜いてきた村上。その中で徐々に成長してきた部分の一つが、「対ストレート」への対応が挙げられる。
2019年の月別成績&対ストレート(表4)を見ても分かるように、好調だった5月は対ストレート打率.310で6本塁打を放ったが、6月は対ストレート打率.152と低迷した。だが、7月を我慢して迎えた8月は、ここまで対ストレート打率.333で、計6安打のうち5本をスタンドインさせた。プロの一線級のストレートへの対応力は確実に上がって来ている。
■ターゲットは史上最年少での打撃タイトル獲得
怪我がない限り、今後もスタメン出場を続け、コンスタントにアーチを重ね、打点を稼ぐことは間違いない。そこで狙うのが、しっかりとした「形」として残るタイトルである。
歴代最年少の本塁打王は、プロ野球初年度の1936年秋に2本塁打で本塁打王となった藤村富美男(大阪タイガース)と1953年に36本塁打を放った中西太(西鉄)の20歳。
王貞治(巨人)が初めて本塁打王に輝いたのは22歳の時だった。同じく打点王も、2リーグ分立後の最年少が1953年中西太(西鉄)の20歳。セ・リーグ記録は1958年の長嶋茂雄(巨人)、1962年王貞治(巨人)の22歳である。2000年2月2日生まれのミレニアムベビーである19歳の村上には、歴史的な記録更新に期待がかかる。
令和最初のシーズンでタイトルを獲得し、新時代到来を叫ぶことができるか。その瞬間は刻一刻と近づいている。