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HOT GAMES 中根仁が斬る『5月7日 横浜DeNA 対 ヤクルト』

 淡々とシーズンが進んで行く中で、気になるのが本調子ではないWBC組の様子だ。開幕からひと月が経とうとする今も、まだ本来の姿を取り戻せていない感が拭えずにいる。今回、直近のカードを見て感じた各チームを語ってくれたのは、元近鉄、横浜で活躍した中根仁氏。打撃コーチを務めた経験もある中根氏が、スラッガーふたりの現状を考察してくれた。

——中根さん、開幕から30試合近くが終了しておりますが、まだまだ本調子ではない選手がいます。今回注目していたDeNA対ヤクルトの試合でも、今季の活躍に期待が集まった“二人”がまだ本調子ではないですね。

「山田哲人選手と筒香嘉智選手ですね。このカードではふたりともそれなりに当たりが出ていたようですが、まだ本調子ではないとあらためて感じます」

——山田選手は二日連続本塁打を放つなど、少し上り調子のようには感じました。

「結果が出ていますので、最悪の状態からは抜け出しているんでしょう。ただ、バッティングを見る限りはまだ本調子ではないですね。」

——どの辺りがまだだという風に目についたでしょうか?

「第一打席の三塁打にも象徴されるんですが、打球が上がりがちですよね。タイミングのずれた力のないフライが上がってしまうんです。山田選手のいいときは速い打球の三遊間のゴロや、打った瞬間にそれとわかるようなライナー性の打球が多いのですが、まだそういったような打球があまり見られませんからね」

——開幕前にWBCの影響が少なくないという声も多いですが、そのあたりはどうでしょうか?

「あまり、その点を議論するのは好きではないのですが、影響がないとは言えないですよね。選手自身もコメントしているのを目にしましたし、少なからずあるでしょう」

——具体的にはどのあたりが影響してしまうのでしょうか?

「これについては多くの評論家の方がいろいろな説を話していますね。これはあくまで私の見解として聞いてほしいのですが、外国人投手へと対応しようとすると、“間”の違いに苦労するんです。想像してほしいんですが、外国人投手はテンポよく、足を上げてすぐに投球してくることが多いんです。日本でいう、“タメ”があまりないんですよね」

——タイミングのとり方が難しいのでしょうか?

「難しいというよりは、“合う、合わない”といったところでしょうか。山田選手は特に足を大きく上げて、絶妙なバランスで間をとって打ちにいくバッターです。きっと日本的な間の捕り方のほうが合っていると思います。それが、テンポよくあまり間を置かずに投げ込んでくる外国人投手ばかりでしたから、対応するために少し間を変えたのでしょう」

——その変えた間に苦しんでいると?

「おそらくですけどね。本当に微妙な差だと思います。テンポよく投げ込まれることに対応するために、足を早く地面に着けてしまっている。それだと日本的な間ではまだボールがこないので、待たないといけない。その分、力みが生まれてしまいます。これは筒香選手をみてても思うんですが、まっすぐの打ち損じがすごい多いんです。最初に言いましたけど、差し込まれがちで打球が上がってしまうんですよね。スイング自体が崩れているわけではないので、うまくタイミングがとれたらいい当たりが出るとは思うのですが…。」

——タイミングのズレを直すのは難しい?

「今回は勝ち進んでいたこともあり、期間も長かったですからね。その分、直すのに時間がかかっているのでしょう。おそらく二ヶ月ぐらいは苦しみます。だからもう少しですよね」

——この日の試合自体は、他の打者の頑張りもあり、12対5という大味な試合になりました。

「DeNAもヤクルトも、上を目指すためには主砲の復活が待たれます。調子の悪さが重なっていないだけいいですよね。彼らが復活すればチームは必ず上向くと思うので、まずはふたりが本調子を取り戻すのを見届けたいと思います」

 調子を取り戻すまではあと少しと語る中根氏。セ・リーグのこれからを占いそうなふたりの主軸の姿から目がはなせない。


中根 仁(なかね・ひとし)
球歴:東北高→法政大→近鉄→横浜
パンチ力ある打撃と俊足&強肩で活躍した元・近鉄戦士。近鉄で9年間活躍したのち、97年オフに横浜へと移籍。左キラーとして翌年のVに大きく貢献した。東北高では甲子園にも出場し、ひとつ下の後輩に佐々木主浩。現在は引退後のアスリートを応援するポータルサイト『アスリート街.com』の代表をつとめる。宮城県出身。右投げ右打ち。外野手。