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高校野球

継投策の仙台育英 一人エースの鳴門を破る【第101回全国高校野球選手権大会第9日】

 来年のセンバツから、球数制限が導入されるかも、と言われている。賛成、反対はともかく、高校野球の新しい時代がそこまできている。

【写真提供=共同通信】鳴門―仙台育英  鳴門戦に2番手で登板した仙台育英・大栄=甲子園

【写真提供=共同通信】鳴門―仙台育英  鳴門戦に2番手で登板した仙台育英・大栄=甲子園

 仙台育英は1回戦、飯山相手に20得点で大勝している。その一方で、宮城県大会同様、当たり前のように投手を継投させてもいた。

 順番に左の笹倉世凪(1年生)が先発して3イニング33球、エースの大栄陽斗(3年生)が3イニング36球、伊藤樹(1年生)が2イニング25球、最後は鈴木千尋(3年生)が1イニング12球。

「ビデオを見たら笹倉が一番、噛む(抑える)と思うので、先発させた」と須江航が言っている。

 須江監督は綿密に分析し、策を練り、充てはめる。システマチックにプランに落とし込んでいけば、ある意味オートマチックにゲームは流れていく現代野球だ。

 鳴門戦の解説も明解だった。

「先発は笹倉か鈴木千尋か迷ったんですが、映像見たら、鈴木千尋の持ち玉がハマるなと思ったんです。結果、3回をゼロなので、合格点はあげられる」

 そして4回に入って鳴門。無死からエラーと連打でまず1点。一、三塁のところで大栄にスイッチ。鈴木は45球を投げていた。大栄はバントと単長打で3点を失うが、これは想定内。

「大栄はハマれば打たれないと思いました。ヒット2本でランナーを返されちゃったんですが、そのあと、5、6回と2イニングを0、0と抑えてくれた。ゲームの主導権を渡していないんで問題ないんです」

 須江監督はきっぱり。

 大栄は56球。7回の頭からは笹倉がマウンドに上がり、48球、無失点で逃げ切るのだ。

「案の定、左が残っていてよかった。笹倉が大胆に抑えてくれた。鳴門高校さんが思ったほど、左投手のリアクションが良くなかったので、ランナー二人出るまではこのまま笹倉でと。二人でたら笹倉もしんどいでしょうからね」

 須江監督は普段から球数をしっかり管理していると言う。

「一週間の球数制限をして、予定の中で動いてます。練習日の球数やメニュー、ゲーム前のブルペンでのことも。目安、日程もあるんですが、ゲームで基本的には一人50、60球で回したい。打たれて3、4回投げるとそれぐらいになる。スイスイ抑えれば35、40でいくこともある。理想的には30、40球でしょうね。3年生は多少は多くてもいいと思っていますが、少ないに越したことはない」

 エースの1番を3年生の大栄がつける。

「一番信頼している投手ということ。1番をつけた選手が後ろにいるのは理想ですね」

 大栄は、一番ゲームのポイントでの登板を任される。

 それと、1年生の二人。

「後ろを1年生でも任せられる。高知高校に森木君という、松坂大輔さんや根尾君よりポテンシャルを持ってる投手がいます。うちの1年生は彼と中学の全国大会の決勝でやってる。1点やったら森木君に勝てないという戦いをしている。度胸があって心が座っているので不安はないです」

 豊富で盤石な投手のコマを仙台育英は持つのだ。

 かたや、対戦した鳴門は対象的だった。エースの西野知輝(3年生)が徳島県大会から1回戦の花巻東も一人で投げきってきた。

 仙台育英に初回、6安打を集められ一挙に4点を先行された。

 森脇稔監督が言う。

「西野のコンデションはケアもしてるけど、県大会の疲れもあったり、精神的なものもあったかも。継投は終盤、考えたんですが。捉えられながら点差も1、2点で、後半も粘れるかなと思った。8回、打順が回ってきたところで代えました。西野を代えなかったのは? もう、何回も聞かれてます、何回も(笑)試合展開です」

 代わった竹内勇輝(3年)が言う。

「今日は西野が崩れたらいくぞと言われていた。西野は疲労感は出ていたが、ここまで投げられてすごいなと思います」

 西野は9回のみ、竹内にマウンドを譲ったが、県大会5試合と甲子園で17イニングを投げ、963球を投じた。

 西野のこれ以上の貢献はなかった。

「今年の夏は一人で投げきりたいと思った。いろんな状況が違いますから、完投か継投か、どちらとも言えないと思います。自分の力負けです」

 西野の胸中は投げられる限り、それがチームのためならマウンドを守り続けたかった。

 高校野球の趨勢は大黒柱の完投型のチームは減りつつある。ケガ予防から球数制限をせざるを得ない。よって複数投手を持つチームが断然有利になってきている。

 森脇監督が今の流れを私見で語った。

「継投が主流なんでしょうが、意見はいろいろあります。公立私学の立場もある、まあ、それを言うと話が終わるんですけど(笑)」

 これ以上、あんまり言うたら、アレなんで、と森脇監督は苦笑いだった。

 森脇監督の言葉が現状の全て、鳴門も複数いたら、代えたのだ。

 一人エースの西野が降板した時点で、今年の鳴門は結果が出ていた。

文・清水岳志