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12球団最少4人指名も満点ドラフトのSB、王会長も笑顔「思い通り過ぎて…」


どよめきが起こる会場内。その中心で「交渉権確定」の文字が記されたクジを右手で掲げた。ソフトバンクの工藤公康監督だ。5球団競合となった今ドラフト最大の目玉、創価大の田中正義投手の交渉権を賭けたクジ。

■工藤監督の“黄金の右手”が創価大・田中正義を引き当てる

 どよめきが起こる会場内。その中心で「交渉権確定」の文字が記されたクジを右手で掲げた。ソフトバンクの工藤公康監督だ。5球団競合となった今ドラフト最大の目玉、創価大の田中正義投手の交渉権を賭けたクジ。見事にそれを引き当てたのは、昨年も3球団が競合した県岐阜商・高橋純平投手を呼び寄せた工藤監督の「黄金の右手」だった。

 最速156キロを誇る即戦力右腕。「右手で行こうと決めていました。引き当てることが出来てよかった。日本を代表する投手を目指してほしいと思いますし、彼の投げるボールを早く見たい。即戦力として考えていますし、開幕投手を目指すくらいの気持ちで頑張ってほしいなと思います」と、工藤監督は熱くラブコールを送った。
 
 今季目指していた3年連続の日本一を逃したソフトバンクにとって、100点満点のドラフトだった。「ウチのデータから言えば、思い通り。思い通り過ぎて、4人で終わっちゃった」と笑みが絶えなかった王貞治球団会長の言葉が全てを表す。大本命の「意中の恋人」を射止めたこともさることながら、少数精鋭の4人で終えた指名は、的確にチームの補強ポイントを押さえていた。

 先に記した通り、1位指名は創価大の田中正義。アマ球界No.1投手で最速156キロを誇る即戦力投手だ。V逸を喫した今季の先発陣は、和田毅、武田翔太、千賀滉大が2ケタ勝利。東浜巨も9勝を挙げ、約3か月半の離脱があったリック・バンデンハークは7勝。その一方で、5年連続開幕投手を務めた摂津正が2勝、左腕の大隣憲司が1勝止まりだった。

 2014年の盛岡大付・松本裕樹、2015年の県岐阜商・高橋純平と、2年連続で将来性ある右投手をドラフト1位で獲得していたこともあり、来季を見据えると、あと1枚、開幕ローテを担える即戦力が欲しいところだった。そこを完璧に埋めてくれるであろう田中の交渉権獲得は大きい。

■手薄な左腕、高齢化の捕手、松田の後継者探し…V奪還に必要なもの

 2位指名の江陵高・古谷優人投手は最速154キロを誇る将来性豊かな左腕。ソフトバンクにとって左腕は近年の補強ポイントの1つだった。

 今季のローテを担った左腕は35歳の和田1人。中継ぎを務めた飯田優也の他、実績ある大隣やウエスタン・リーグ最多勝の9勝を挙げた笠原大芽や山田大樹がファームにもいるが、千賀、武田のローテ投手に加えて松本、高橋と層の厚い右投手に比べ、3年後、5年後を見据えた時に手薄なのは間違いない。1位指名で消えていてもおかしくないほどの素材を、2位で指名出来たことは、ソフトバンクにとって幸運だった。

 そして、3位指名は秀学館高の九鬼隆平捕手。高校日本代表でも正捕手を務めた将来性ある若者だ。今季、主にマスクをかぶったのは36歳の細川亨、35歳の鶴岡慎也、34歳の高谷裕亮の3人。向こう10年、15年間、マスクを任せられる捕手が育っていない現状がある。

 23歳の拓也と斐紹が伸び悩み、2年目の栗原もケガがち。他にも谷川原健太、今季途中に支配下登録された張本優大といるが、捕手は育成が難しいとされるポジションだけに、編成上の人数バランスを考えても、未来の正捕手候補という点で考えても、補強しておきたいポジションだった。

 最後は、身長185センチの大型遊撃手、青森山田高の三森大貴を4位で指名。ソフトバンクの遊撃手といえば、球界No.1の守備力を誇る25歳の今宮健太だ。打力に物足りなさは残るが、その守備力は打力を補って余りあるだけに遊撃手の座は不動。むしろ必要なのは、33歳となった三塁手・松田宣浩の後継者だろう。

 今季も27本塁打を放つなどチームの象徴的存在だが、その後継者がまだ育っていない。ウエスタン・リーグの最多安打記録を更新した塚田正義がいるが、27歳と決して若くない。若手内野手に目を広げても、高田知季、牧原大成といった俊足巧打タイプが多いため、三森は松田のような中長距離砲の内野手として育てたいところだ。

 12球団で最も少ない4人の指名ながら、ポイントポイントをしっかりと押さえた今季ドラフト。即戦力あり、将来性あり。左右の投手に、捕手、内野手と、まんべんなく指名。来季のV奪還に向け、幸先のいいドラフトになったと言えるだろう。

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