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V3逃したSBの誤算 現実となった工藤監督の言葉「ケガ人が戦力を落とす」


シーズン序盤は圧倒的な強さを見せながら、V逸の要因となったのは何だったのか。ソフトバンクの誤算を探る。

■11.5ゲーム差をつけながらV3ならず、代えの効かない重要選手に相次いだ負傷者

 2016年のシーズンも、残りわずかとなった。10球団がオフへと入り、日本ハムと広島が日本一の覇権を争う日本シリーズを残すのみとなった。セ・リーグは広島が圧倒的な強さを見せて独走V。パ・リーグは日本ハムが大逆転でリーグ優勝を勝ち取り、それぞれクライマックス・シリーズを突破した。

 一方で屈辱を味わったのが、日本ハムにつけた一時最大11.5ゲーム差をひっくり返され、3年連続のリーグ優勝を逃したソフトバンクだ。シーズン序盤は圧倒的な強さを見せながら、V逸の要因となったのは何だったのか。ソフトバンクの誤算を探る。

 第1回は「ケガ人」の続出だ。工藤公康監督は就任直後から「ケガ人がチームの戦力を落とす」とし、選手のコンディション管理には細心の注意を払ってきた。それでも、シーズン中にケガ人が出ることは避けられないもの。今季は、代えの効かない重要選手に負傷者が相次いだ。

 1人目が交流戦期間中、6月1日の中日戦(ヤフオクD)前に出場選手登録を抹消されたリック・バンデンハーク投手だ。開幕後2か月ほどで6勝1敗の好成績を残し、来日後負けなしの14連勝もマーク。「デビューからの連勝記録」と「外国人連勝記録」を樹立した右腕は、全身の疲労と首痛を訴えてチームから離れた。

■柳田は9月のほぼ全試合を欠場

 当初は短期での復帰が見込まれていたが、状態はなかなか上向かなかった。一進一退を繰り返し、1軍に復帰したのはリーグ終盤の9月18日のオリックス戦(ヤフオクD)。離脱期間は約3か月半にも及んだ。

 その間、代役として山田大樹、岩嵜翔、摂津正らが代役としてマウンドに上がったが、この3人が先発した13試合のチームの勝敗は6勝7敗。オランダ人右腕の不在が痛かったのは間違いない。

 日本ハムとのマッチレースの様相を呈してきた9月1日の西武戦(西武プリ)では、チームの中核中の中核、柳田悠岐外野手が飛球を処理しにいった際にボールが右手を直撃。右手薬指を骨折し、全治6週間と診断され、離脱した。

 このときまで打率3割6厘、18本塁打、73打点、23盗塁、出塁率は4割4分6厘。トリプルスリーを達成した昨季には及ばないながら、今季も好成績を残していた大砲を、残りの全試合を欠くことになった。

 9月2日以降、柳田が欠場した23試合は12勝10敗1分け。一方の日本ハムは22試合を14勝6敗2分け。ソフトバンクも勝ち越しはしたものの、9月21、22日の直接対決に連敗するなど、日本ハムの勢いを上回ることは出来なかった。

■左肘の張りを訴えた和田はCSにも間に合わず

 患部が完治していない中で、クライマックスシリーズには強行復帰。日本ハムとのファイナルステージ第2戦では決勝適時打を放ったものの、7試合で打率1割4分3厘、0本塁打、2打点に終わり、故障の影響を少なからず感じさせた。

 そして、リーグ最多勝を獲得した和田毅だ。9月8日のオリックス戦(京セラD)後に左肘の張りを訴えた。同13日の楽天戦(コボスタ)が雨天中止となり、登板予定だった14日の同戦の先発を大事をとって回避。17日のオリックス戦(ヤフオクD)に回り、5回2失点で勝利投手となったが、左肘の状態を悪化させた。

 9月23日に出場選手登録を抹消。残り2試合程度が見込まれた先発登板を回避することに。ここは中田賢一が今季チームで唯一の中4日で回り、何とか穴を埋めたが、結局クライマックスシリーズにも復帰は間に合わなかった。今季、重要な試合でことごとく好投してきた経験豊富な左腕を欠いたのは痛かった。

 日本ハムも近藤健介や岡大海、守護神のマーティンなどが負傷離脱したものの、何とかカバー出来た印象が強い。ソフトバンクに空いた穴は簡単には埋めきれないほど、大きな穴だった。「ケガ人が戦力をダウンさせる」という工藤監督の言葉は、今季、現実のものとなった。

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