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打球速度考察、MLBにおける新たな指標「Exit Velocity」とは?【NISSAN BASEBALL LAB】

ジャンカルロ・スタントンがホームランを打ったところ

写真提供:共同通信社

■スタットキャスト導入による「打球速度」の計測、MLB最強打者は?

 新たなテクノロジーの開発とともに発展を続ける野球界。新たなデータが次々と提示されているが、その中で今、最も注目を集めている指標が「打球速度」である。

 2015年にMLB全球場で新たなデータ収集システム「Statcast」(スタットキャスト)を導入。

 これまで打者を評価する指標として「打率」、「打点」、「本塁打」といった基本的なものから「OPS」といった数値などもあったが、高精度カメラと軍事用のレーダーを用いた特殊装置によってボールや選手の動きを細かく分析することが可能となり、その中で打者が放った打球の初速を表した「Exit Velocity」(打球速度)の計測も可能となった。

 打者が放った打球の初速を示す「Exit Velocity」。

 今季(6月25日まで)の打球速度ランキング(表1)を見ると、全体トップを記録したのが、ヤンキースの主砲、ジャンカルロ・スタントンの194.1キロ。2017年にシーズン59本塁打を放つなど本塁打王に2度輝いたスラッガーが、頭一つ抜け出た形となっている。

 今季は開幕早々に故障で離脱し、ここまで出場9試合で9安打1本塁打のみだが、その中でも1位と3位にランクインしている点は驚くべきことだ。

 さらに2018年シーズンのランキング(表2)を見ると、その驚きはさらに大きくなる。スタントンが2018年も8月9日に放ったホームランが全体トップの195.9キロを記録するとともに、トップ20の中で12本がスタントンの打球となっている。まさに、この新しい指標においての“最強打者”だと言えるだろう。

表1_2019MLB 打球速度トップ20

表2_2018MLB打球速度トップ20

 その他、改めて2019年のランキング(表1)を見ると、スタントンと同じヤンキースでは26歳の正捕手、ゲーリー・サンチェスが4位と11位にランクイン。2018年も2位の打球速度を記録したサンチェスは今季、59試合出場の段階でリーグ2位の23本塁打を放っており、打球速度が成績にも如実に表れている。

 また、昨季のナ・リーグMVPにして、今季はここまで打率.336、29本塁打、63打点で三冠王を狙える位置に付けるクリスチャン・イエリチ(ブリュワーズ)も7位と14位にランクイン。

 その反面、2019年の2位と14位にランクインしたウラジミール・ゲレーロJr(ブルージェイズ)は今季メジャーデビューしたばかりの20歳。ここまで50試合で7本塁打と成績的にはまだ不満が残るが、荒削りで不完全ながらも、「打球速度」の面から見ると最も優れた将来性、潜在能力を持った若手だと言える。

■打球速度×打球角度が重要!?

 「打球速度」=「強打者」の図式は確かなものだ。だが、打球速度が速ければ、必ず良い結果(本塁打)を生むという訳ではない。

 2019年の打球速度ランキングをさらに細かくした詳細版(表3)を見ると、トップ3はいずれも単打。

 ゲーリー・サンチェス(ヤンキース)が5月3日に放った打球、ピーター・アロンソ(メッツ)が4月11日に放った打球が、ともに190.4キロを計測して本塁打となったが、今季の打球速度トップ20の中で本塁打となったのは4本のみ。2018年もトップ20の中で本塁打は6本と少なかった。

表3_打球速度ランキング詳細版

 ここで重要となってくるのが、「Launch Angle」(打球角度)である。打球が上がらなければ、どれだけ打球速度が速くても単打になるということ。

 だがその一方で、一般的なホームランの理想の角度が30度前後とされている中で、サンチェスとアロンソの本塁打の角度(20.1度、17度)が証明しているように、打球速度が速ければ、“理想”よりも低い角度でもスタンドインできる。

■「Distans」(飛距離)から見えるもの

 打球の飛距離の面から見てみたい。2019年の本塁打飛距離ランキング(表4)を見ると、トップはノマル・マザラ(レンジャーズ)が6月21日のホワイトソックス戦でレイナルド・ロペスの152.4キロを捉えた一発で、153.9メートルを記録した。

 打球速度は176.5キロとトップ20には入らないが、打球角度が27.2度で、唯一の150メートル超えを記録した。

 2位以下の本塁打を見ても、打球速度でトップ20入りした打球は1本もないが、打球角度は25度〜30度までが大半(11本中8本)を占める。飛距離は、打球速度だけでなく、その角度、そして投球球速などにも影響を受けることが分かる。

表4_2019MLB本塁打飛距離ランキング

■今季の平均データトップはジョイ・ガロ

 もう一つ、2019年の平均データを見てみたい(表5)。平均の打球速度トップを記録したのは、ジョイ・ガロ(レンジャーズ)。2017年に41本塁打、2018年に40本塁打を放った25歳のスラッガーは、自慢のアッパースイングで平均打球速度157.2キロを計測するとともに、ここまでチームトップの17本塁打を放っている。

 2位にも実力者のアーロン・ジャッジ(ヤンキース)が入ったが、3位のデレク・フィッシャー(アストロズ)は意外。昨季までのメジャー2年間で9本塁打、今季も17試合出場で1本塁打のみ。平均打球角度が2.6度と低く、打球さえ上げれば、成績アップ&本塁打数増加が見込めるはずだ。

表5_2019MLB 【平均】打球速度飛距離打球角度

 ジョイ・ガロ(レンジャーズ)は、2018年も平均打球速度153.5キロ(平均飛距離74.2メートル、平均打球角度20.3度)を計測して全体のトップを誇った。

 果たして今季もこのまま首位を維持できるか。それとも2017年に152.9キロ(平均飛距離72.1メートル、平均打球角度15.2度)で全体トップだったアーロン・ジャッジ(ヤンキース)が逆転するのか。

 はたまた、2015年にトップの平均打球速度158.5キロ(平均飛距離73.6メートル、12.0度)を記録し、昨季も全体5位タイの平均打球速度152.7キロ(平均飛距離63.8メートル、平均打球角度10.3度)だったジャンカルロ・スタントン(ヤンキース)が故障からの復帰とともに巻き返すのか。

 MLBの新たな指標「Exit Velocity」は、我々に新たな強打者の判断基準と、野球の楽しみ方を提供してくれている。

(注)成績は全て6月25日現在


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