- 高校野球
2017.04.08 12:00
【THE INSIDE】「第89回選抜高等学校野球大会」の総括…史上初・大阪勢同士の決勝、連日の接戦など
「第89回選抜高等学校野球大会」の組み合わせが決まった時点で、「もしかしたら、決勝戦で大阪勢対決もあるかもしれない」と思われたが、その通りになった。
昨年秋の明治神宮大会を制した履正社(大阪)は、打ち勝ったかと思えば投手戦を戦ってスミ1(※)で勝ったり、終盤までは辛抱戦で終盤にドカンといく力強さを示すというバラエティーに富んだ形で勝ち上がってきた。
※:1回表または1回裏に1点が入り、そのまま1-0で試合が終了した得点経過のこと
一方、大阪桐蔭(大阪)は近畿大会ベスト4だったが、やはり選手個々のポテンシャルは高い。2回戦の静岡(静岡)戦では初回に6点取りながら、すぐに追いつかれ、2回に逆転され後半に追加点も奪われながらも、最後にはひっくり返す力強さを示した。静岡は2回と7回に1点ずつを奪いリードして8回を迎えたが、ここで逆転された。最後にひっくり返す大阪桐蔭の強さも改めて見せつけられた。
そんな両校の対決となったが、近年は大阪だけではなく近畿の高校野球を引っ張る両雄でもある。最終的には、大阪桐蔭の破壊力が出て4本の本塁打などで5年ぶりの優勝を果たした。しかし、履正社も3点のビハインドを8回に一旦追いつくなどの粘り強さを示した。
スタンドは連日満員
最後には大阪桐蔭の勝負強さが示されたということであろう。9回の代打本塁打などは、その象徴でもあった。きわめてレベルの高い試合だったが、夏にこの両校が激突する可能性のある大阪大会は非常に興味深い。
大会としては7日目に、延長15回引き分け再試合が2試合続くという珍現象があったことに象徴されるように、接戦が相次いだという印象だ。確かに、延長戦も多かった。この日の試合に象徴されるかのように、各チームの力は拮抗していたと言ってもいいだろう。
福岡大大濠(福岡)の投手・三浦銀二君は、延長に入ってからでも142~3キロのスピードを表示していた。むしろ初回よりもいいリズムで投げていた。それだけ投げ込んでいくことに自信があったということであろう。滋賀学園は、その三浦君の立ち上がりを突いて奪った1点のみだった。福岡大大濠は8回に追いついて、その後はどちらも投手が踏ん張り0行進だった。
そして、健大高崎(群馬)と福井工大福井(福井)の試合は、9回に健大高崎が持ち前の機動力を生かして、一か八かの本塁盗塁を仕掛けて追いついた。7対7で延長に突入したが、その後の6イニングはお互いに0が並んだ。こういうことがあるから、野球はわからないとも言える。
健大高崎と福井工大福井の試合はナイターに
そうした中で、大会前から評判の高かった近畿勢が、その評判通りの戦いを示したと言っていいだろう。この春で勇退を公言していた報徳学園(兵庫)の永田裕治監督だったが、「少しでも長く、監督と一緒に野球をやっていたい」という思いの溢れた選手たちのひたむきな戦いぶりも好印象だった。
また、滋賀学園(滋賀)は、延長14回と延長15回引き分け再試合を立て続けに戦い、2回戦で敗れはしたものの38イニングを戦った。2年連続のベスト8進出はならなかったが、失点の少ない確かな野球は印象的だった。
近畿大会準優勝で挑んだ神戸国際大附(兵庫)も力があったが、接戦で東海大福岡(福岡)に屈した。その東海大福岡は、2回戦では注目された清宮幸太郎君らを中心とした強力打線が看板の早稲田実(東京)を下したのも光った。
初戦では明徳義塾を相手に、9回二死からまさかの逆転勝ちをおさめた早稲田実。相手に対して、目に見えないプレッシャーがあったようだ。ベテラン馬淵史郎監督をして、「早実には野球の神様がついとる」と言わせたが、その早稲田実を2回戦で強打で下した東海大福岡の安田大将君の粘り強い投球は素晴らしかった。この日は、次の大阪桐蔭と静岡の試合も11対8というスコアの試合で、同スコアが2試合続いた。こういうハイスコアでまったく同じ得点の試合が続くことも珍しい。打ち合っても、守り合っても、接戦が多かったというのが今大会の印象でもあった。
全国各地では、既に春季大会が開催されている地域もある。一つ終わればまた次が始まっていくのが高校野球だ。そして、そんな中から新しく好チームを発見していくことも、見る側の楽しみでもある。