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【4月4日東都大学野球開幕!】再浮上狙う長身サブマリン右腕・高橋礼(専修大)

高橋礼(たかはし・れい)・・・小:松戸ボーイズ(硬式)→中:流山ボーイズ(硬式)→高:専大松戸→専修大4年。186cm77kg。右投右打。今秋のドラフト候補にも挙がる長身のアンダーハンド右腕。

★「戦国東都」で味わった天国と地獄

昨年11月に行われた東都大学野球1部2部入替戦。

「“2部に落ちたら野球人生は終わり”というくらいの気持ちで臨みました」と悲壮な覚悟を持って、専修大のエース右腕・高橋礼(4年・専大松戸)は神宮球場のマウンドに向かったという。

潜水艦を意味するサブマリンとも称されるアンダースローに転向したのは中学時代。専大松戸高では甲子園出場こそ果たせなかったが、投手育成に定評のある名将・持丸修一監督の薫陶を受け、力を伸ばした。

そして、専修大では1年秋から登板機会を得ると、2部リーグで5試合32回3分の2を投げて、自責点はわずかに4。1年生ながら黒木優太(立正大→オリックス)、戸根千明(日本大→巨人)、原樹理(東洋大→ヤクルト)らを抑えてリーグトップとなる防御率1.10の成績を残し、2部リーグ優勝に貢献。入替戦でも2試合に登板し、翌春から学生野球の聖地・神宮球場で戦う権利を持つ1部リーグ復帰を決めた。

勢いに乗る専修大は、1部復帰して初となる春のリーグ戦でも優勝。高橋もリリーフとして、この快挙に貢献した。

そんな快進撃を支えていたのが、アンダーハンドから浮き上がるストレートだ。ただでさえ見慣れない球の軌道に加え、それを186cmの体全身を使って最速140km/h前後で投げてくるのだから、大学球界トップレベルの打者たちも容易に太刀打ちはできなかった。

夏には侍ジャパン大学代表にも選出され、ユニバーシアードで登板し好投。貴重な国際経験を積み、さらに自信を深めると秋には4勝を挙げた。

だが3年生となり、エースを任されるようになった昨年は大きく苦しんだ。春は2勝3敗で防御率4.06。秋にいたっては0勝4敗で防御率5.83。チームは最下位に沈んだ。

「相手の“間”で投げてしまっていたし、ストレートを狙われて打たれているのは分かっていたのですが、修正できませんでした。」と高橋は当時を振り返る。一般的な投手とは異なるダイナミックなフォームゆえに、修正も難しかった。

それでも、リーグ最終戦から約2週間後の入替戦で結果を残さなければ、2部リーグ降格となってしまう。そこで高橋は「下半身が使えず手投げになっていた」というフォームを、下半身を使いスピンの効いた球を投げられるように修正を図った。

そして迎えた入替戦初戦で高橋は、それまでとは見違えるな腕の振りから放たれるストレートを中心に国士舘大打線から凡打の山を築き、7回2安打1失点に抑える好投でチームの勝利に貢献。これでリズムが生まれた専修大は入替戦を連勝し、1部残留を決めたのだった。

★人と同じことをしていては意味がない

昨年の反省を生かし、この冬は走る量やウェイトトレーニングを増やして下半身の強化に努めた。「人と同じことをしては意味がない」と毎日練習し、体をバランス良く使えるようにすることにも重点を置いた。また、テレビ観戦したWBC では同じアンダーハンド右腕の牧田和久(西武)の投球にも目を凝らした。

「牧田さんは自分の“間”で投げているのが凄かったです。打者に“まだ?”とか“もう?”というタイミングで投げて優位に立っていたので」と大きな刺激を受けた。

今年はエースとして完投もどん欲に目指していく。「三振を取れる投手ではないので、押したり交わしたりすることで3巡目・4巡目の打者も抑えていきたいです」と抱負を語る。

開幕戦の相手は、昨年1度も勝てていない亜細亜大と対する。ドラフト上位候補左腕・高橋遥人(4年・常葉橘)ら好投手を多く揃えるだけに、投手戦は必至だ。

この3年間で経験した浮き沈みを自らの糧にし、さらなる成長を遂げた高橋。「初戦をまずはしっかり取ること。そこに貢献していきたいです」とチームの命運を背負い、雪辱の舞台となるマウンドへ向かう。

文・写真=高木遊