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打てない広島“コイ煩い”打線を徹底分析 点を取れない理由と浮上へのキーマン【NISSAN BASEBALL LAB】

写真提供=共同通信




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■ほぼ全項目でリーグワーストの打線

 あまりにも予想外で、悲惨なスタートとなった。リーグ4連覇を狙う広島が、球団史上初の開幕5カード連続負け越し(4月16日時点)。過去、2007年に開幕4カード連続負け越しがあったが、そのワースト記録を更新。前年優勝チームが開幕5カード連続負け越しとなるのは2010年の日本ハム以来で、セ・リーグでは1979年のヤクルト以来40年ぶりのことになるという。

 勝てない原因を一つに断定することはできないが、開幕前からある程度の不安を抱えていた投手陣よりも、丸佳浩が抜けてもまだまだ自信があった打線がまったく機能していない方が、やはり驚きだ。それは数字でも如実に現れており、開幕5カードを終えた時点でのチーム打撃成績は惨憺たるたるものだ(表1)。チーム打率.212を筆頭に、得点、安打、盗塁、出塁率がリーグワースト(タイを含む)で、得点圏打率は.173。「打線は水物」だというが、ここまで干からびてしまっては、得点を奪うことは難しい。



■代打もダメで繋がらず、“盛り上がらない”打線

 現在のカープ打線にハッキリ言えることは、「繋がらない」というである。流行語にもなった「神ってる」から3連覇を成し遂げた過去3年を振り返ると、カープ打線の“繋がり”はやはり特筆すべきものがあった。

 同一イニング内の連続安打数(表2)を見ると、2016年は2連打以上が262回で3連打以上が78回、4連打以上25回といずれもリーグ断トツのトップ。翌2017年も2連打以上269回、3連打以上75回、4連打以上23回と爆発力を誇示した。2018年は2連打以上246回と数字を落としたが、「切れ間なく次々と相手に襲い掛かる」というイメージは維持。連打で相手に大きなダメージを負わしていた。しかし、今季は2連打以上が15試合で19回。143試合換算で181回という状況。単発のみのパンチで相手からダウンを奪うのは難しい。

 その中でも点を取るための一つの手段に「代打」がある。打席に立つ選手を代えて、無理やりにでも繋げるのだ。しかし、今季の広島の代打起用は35回あるが、30打数4安打でリーグワーストの代打率.133。併殺打も3本記録し、得点圏打率は.000(表3)。連打が生まれず、代打も決まらない状態では、ベンチにいる選手もスタンドのファンも盛り上がることができず、打線も波に乗れない。



■足りない“立ち上がり”の先制攻撃

 とはいえ、試合は続く。ここからどう浮上して行くか。一つの鍵が先制攻撃になるだろう。広島のイニング別打撃成績(表4)を見ると、3連覇した過去3年は立ち上がりの1回、2回に高いチーム打率を残している。特に初回の攻撃は、チームの全イニング(1回〜9回まで、延長は除く)の中で、いずれも2番目に高い打率が残っているのだ。



 しかし今季は違う。初回のチーム打率.211で、2回も打率.157と低迷。投手陣に疲れがない春先であることを差し引いても、非常に物足りない数字となっている。打順ひと回り目で、どう試合の流れを作るか。過去3年、“逆転のカープ”と呼ばれても来たが、“先行逃げ切り”が勝つための王道であることを忘れてはいけない。

■打率1割台に悩む2人が浮上へのキーマンになる

 選手個々に目をやると、15試合を終えた時点で、丸佳浩に代わって3番に座っている野間峻祥が打率.322をマークし、4番の鈴木誠也も途中自己ワーストの20打席連続無安打がありながらも6本塁打を放って奮闘している中、2人の打者の低迷が気になる。


 一人目が田中広輔。不動のリードオフマンだが、15試合を終えた時点で打率.190と低迷(表5)。2年連続30盗塁以上をマークしてきた男の出塁率が低く、それが故に盗塁数も増えずにカープの機動力野球の威力は半減。それが打線全体へ大きく影響している。

 二人目は、松山竜平だ。今季から背番号を変更して不動の5番打者として大きな期待を背負っているが、15試合を終えた時点では打率.184(表6)。現状、引退した新井貴浩、退団したエルドレッドを懐かしく、同時に存在価値を大きく感じてしまう。



 この二人に共通しているのが、「打てない球種」があるということ。田中の今季の球種別打撃成績(表7)を見ると、ストレートはしっかりと弾き返している一方で変化球をほぼまったく打てていない。対する松山は、変化球にはタイミングが合っているが、ストレートに対しては、14打数1安打の打率.071と苦しんでいる(表8)。これまでのシーズンでは、決して「田中=変化球×」、「松山=ストレート×」という訳ではなかった。まだ始まったばかりでデータ量が少ないという面はあるが、ここまで数字が極端に出てしまうのは良くない。

 田中が変化球を捉え、松山がストレートを打ち、2人の打率が上がって来れば、打順的にも打線は必ず繋がるようになる。そこで連打が生まれ、勝負所での代打も決まれば、ベンチ、スタンドも盛り上がり、チームとしての一体感を取り戻せるはずだ。かつては「コイの季節まで」と言われていたカープだが、今季は「コイの季節から」巻き返す。その前に少しでも打線の状態を上げておくことが、まずは大事な前提条件になる。

※データは2019年4月16日時点

データ協力:データスタジアム
文=三和直樹

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