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2019.04.05 12:00
「開幕白星」は無関係!? 開幕直後の戦いがペナントレース制覇にどう影響する?【NISSAN BASEBALL LAB】

開幕戦の延長サヨナラ勝ちから好スタートを切ったソフトバンクだが、果たしてこのまま優勝まで突き進むのか!?【写真提供:共同通信社】
■優勝チームの開幕戦は勝率.474
2019年のペナントレースが、ついに幕を開けた。3月29日にセ・パ同時に行われた開幕戦には、ファンや報道陣だけでなく、普段はあまり野球を観ない一般の人々も注目し、多くの者たちが熱視線を送った。
日本シリーズや優勝に王手をかけた一戦を除けば、おそらくシーズンの中で最も注目度が高い開幕戦。当然、監督、選手たちは普段以上に気合を入れて試合に臨み、普段以上に勝利を目指したはずだ。単なる「143分の1」ではない。開幕戦というのは特別な試合なのだ。

表1
エースがマウンドに上がり、チーム全員が照準を合わせて臨む開幕戦。その試合に勝利する意味は大きいはずだが、“開幕星”がそのまま優勝に繋がるかと言われれば、やや疑問が残る。
過去10年のセ・パ両リーグの優勝チームの勝敗(表1)を振り返ると、その疑問が確信に変わる。昨季こそ、西武、広島の両チームともに白星スタートを切っていたが、それが珍しいほど。2009年の日本ハムと巨人、2016年の日本ハム、広島がともに黒星スタートを切っているように、全体としては過去10年で9勝10敗1分けの勝率.474で、勝率5割を下回っている。このデータから見ると、開幕戦での勝敗はそれほど重要ではないと言わざるを得ない。
■開幕3連勝=71%、開幕3連敗=76%
しかし、である。開幕白星からそのまま3連勝した場合は、その限りではない。昨季のリーグ覇者である西武が27年ぶりの開幕8連勝、同じく広島も開幕4連勝スタートを決めたように、過去10年で開幕3連勝スタートを決めた計17チーム中5チームがリーグ優勝を飾っている(表2、赤)。条件をAクラスにすれば、計17チーム中12チームが3位以上の好成績でシーズンを終えている。その確率、実に71パーセントに上る。

表2
反対に、開幕3連敗スタートを切った場合の影響も大きい。過去10年を見ると、開幕3連敗スタートとなったチームは計17チームあるが、そこからリーグ優勝を果たしたのは、2009年の日本ハムの1チームのみ(表3)。2011年のヤクルト、2013年の広島、2018年の日本ハムはAクラス入りまで持ち直しているが、それ以外の13チームはBクラスでシーズンを終え、最下位も4チームある。

表3
2009年の横浜が開幕6連敗スタート、2010年の楽天、2017年のロッテが開幕4連敗から最下位でシーズンを終えたように、開幕直後に躓いたまま最後まで低空飛行を続けてしまうチームも多い。過去10年の開幕3連敗スタートのチームがBクラスとなった確率は、実に76パーセントに上るのだ。
今季で言えば、ソフトバンクが開幕3連勝、西武とオリックスが開幕3連敗(オリックスは1分けを挟む)スタートとなったが、果たしてどうなるか。
■開幕15試合までに勝ち越しを!
開幕からの3連勝、3連敗のスタートがシーズン全体に与える影響は、データを振り返っても確かにあるだろう。では、もう少し条件を緩めて「開幕3試合を勝ち越した」場合はどうなのだろうか。
過去10年のデータ(表4)を見ると、開幕3試合を勝ち越した優勝チームは20チーム中12チーム。確かに昨季の西武、広島はスタートダッシュからそのまま独走態勢に入っていったが、「勝ち越し割合60パーセント」というのは、その根拠としては弱い。開幕カードに負け越しても、「3連敗でなければ十分に巻き返しは可能である」と言う方が、合点がいく。

表4
開幕3試合の負け越しスタートからのリーグ優勝は、それほど難しいことではない。だが、これを開幕15試合に伸ばすと、途端に難易度の高いものになる。
過去10年の優勝チームの開幕15試合の勝敗を振り返ると、20チーム中15チームが勝ち越しており、その割合は75パーセント。2011年の中日がちょうど勝率5割で、2013年の楽天、2017年のソフトバンクも借金1ということを考えても、開幕15試合の時点での大きな出遅れは禁物。開幕3連敗スタートからリーグ優勝した2009年の日本ハムも、開幕4戦目から4連勝を飾ってすぐに巻き返しているのだ。対戦チームが一巡した時点では貯金生活に入り、今季のチーム力を他球団に見せ付けておくことが、その後のペナントレースを優位に進める上で非常に重要であると言えるだろう。
開幕戦の勝敗はそれほど重要ではないが、開幕3連勝、もしくは3連敗スタートの影響は大きい。そして開幕直後の出遅れは、やはりその後の戦いに響く。過去10年のデータを振り返ってみて、改めてそのことがしっかりと分かる。まだシーズンは始まったばかりだが、その滑り出しは、やはり重要である。
データ協力:データスタジアム
文=三和直樹