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夢はオールアジアの架け橋に 台湾球団で働く日本人職員が描く夢【Global Baseball Biz vol.1】

【写真提供=戸嶋ルミ】



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 2019年3月14日(木)15日(金)の二日間、千葉ロッテマリーンズと台湾のプロ野球チーム・Lamigoモンキーズの交流試合がZOZOマリンスタジアムで行われた。両チームの練習試合はロッテの春季キャンプ期間中の2月9日(土)に石垣島でも行われており、2019年に入ってから3試合目。開幕前とはいえ、なぜ? そこにはLamigoで働く日本人球団職員の想いがあった。


【写真提供=戸嶋ルミ】


 礒江厚綺(いそえ・こうき)さんは、Lamigoモンキーズで働く、唯一の日本人球団職員。西武鉄道沿線に生まれ育ち、子供の頃から西武球場を中心に球場観戦を楽しんで育ったという。高校三年生の時に東京ドームで開催されたアジアシリーズ(2008年大会)で台湾チームの試合を観戦した際、初めて触れる台湾の野球文化や、台湾の野球ファンの温かさに新鮮さを覚え、台湾野球にのめり込むようになった。

 野球をきっかけに台湾に魅了されていった礒江さんは、大学進学後は中国語を先攻するまでに。大学時代はアルバイト代を貯めては定期的に台湾へ通い、台湾プロ野球を観戦し続けた。三年時には台北に一年間交換留学し、ちょうどそのタイミングでアジアシリーズ(2011年大会)が台湾で開催された。募集に出ていた通訳のアルバイトに思い切って応募し、見事採用される。これが礒江さんの台湾球界での初仕事となった。この経験がきっかけとなり台湾球界とのつながりを持ち、後に社員としてLamigoモンキーズで働くこととなる。

 台湾で日本野球は人気があり、プロ野球のみならず春のセンバツから夏の甲子園まで放映されている。陽岱鋼選手(読売巨人)は大スターで、2019年シーズンからは「台湾の大王」こと王柏融選手がLamigoから北海道日本ハムファイターズに入団し、更に注目度が高まっている。

 現在台湾プロ野球はLamigoを含めた4つのチームで1つのリーグを形成している。3月末から6月末、7月上旬から9月末まで前後期制に分かれ、年間120試合を行っている。チーム間での移籍は少なく、ほとんどの選手が入団から退団まで生え抜きのまま引退する。日本をはじめとする海外チームに挑戦したい選手は多いそうだが、4チームだけで対戦し続けていては自分たちの本当の実力を知ることは難しい。そういった事情もあり、世界の中での実力を知るためにもワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やプレミア12などの世界大会、アジア・ウィンターリーグへの参加、今回のような国際交流試合を企画しているという。日本球団との架け橋を礒江さんが作り、野球を通じての国際交流から台湾球界のレベルアップにまで貢献されているのだ。

 なぜLamigoはロッテを始め日本球団と積極的な交流試合やイベントを行っているのか、理由はここにあった。

 近年日本でもスポーツビジネスは注目を集めており、働きがいを求めて転職する人も多い。では同じアジアの台湾のスポーツ界はどうだろうか? 礒江さんの働くLamigoマーケティング部は、土日を除く平日週5日勤務。シーズン中やイベント前などの繁忙期には残業もある。基本的には、台湾も日本のサラリーマンと同じような勤務形態のようだ。しかし、台湾人のおおらかな国民性があってか、社内の風通しはよく、働きやすいと感じるそうだ。意見や提案も積極的に聞き入れ、裁量の大きい仕事も任せてくれるという。もちろん言葉や文化の壁はあるが、それを超えた先のやりがい・達成感は大きく、前向きに働けるという。こういった環境もあって、Lamigoでは積極的な国際遠征が実現されている。


【写真提供=戸嶋ルミ】


 3月にZOZOマリンスタジアムで行われたロッテとの交流試合では、Lamigo側は敢えて台湾現地の応援スタイルをそのまま日本に持ち込んだ。これも礒江さんの狙いの一つで、選手や球団だけでなく、応援文化やファン同士も積極的に交流をしてほしいという意図があった。


【写真提供=戸嶋ルミ】


 Lamigoのチアガール「LamiGirls」はロッテのチアM Sprash!!と一緒にイニング間イベントなどにも積極的に参加し、ロッテファンとの交流を図るなどして場を盛り上げた。

 Lamigoの攻撃中はMCの男性と一緒に内野スタンドに用意されたお立ち台に登り、DJが流す音楽に合わせて観客を盛り上げる。台湾からLamigoファンが多く駆けつけ、応援団と一緒に歌って体を動かし声を出す。まるで社会人野球の「都市対抗野球大会」のような盛り上がりだった。


【写真提供=戸嶋ルミ】

【写真提供=戸嶋ルミ】


この応援スタイルは台湾野球や韓国野球を知っている人であればおなじみの光景だが、ロッテファンの中には「初めて見た」という人もいたと思う。この二日間をきっかけに少しでも台湾野球興味を持ってくれたら、ぜひ現地へ遊びに来てほしいと礒江さんは言う。今後、第二の礒江さんのような人物が増えてくれたら、アジアの野球の懸け橋はより大きなものになるだろう。

写真・文/戸嶋ルミ

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