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社会人野球

元プロの想像を超える急成長、進化する本格左腕。中尾 輝(名古屋経済大)

「時は来た!ドラフト指名を待つ男たち」

中尾 輝 なかお・ひかる
杜若高→名古屋経済大
投手・左投左打・179センチ79キロ・1994年9月14日生(22歳)

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 日の目を見ることがない愛知大学リーグ2部で、プロ12球団すべてが獲得候補に挙げる最速151km/h左腕。まだ荒削りな部分は残しながらも、視察に訪れたプロ球団関係者も「球威で抑えられるので、ストライクゾーンで勝負できる投手ですね。投げ方が良くなれば、もっと伸びてくるでしょう」と称賛した。

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 杜若高時代はストレートの最速はわずか130km/h。体重も62kgとひょろっとした体格で、変化球中心に打ち取るスタイルで、かわす投球ばかりだった。現在の姿は本人もまったく想像できなかったという。
 そんな中、中尾に声をかけたのが名古屋経済大の平林二郎監督だった。平林監督は愛知・中京商高(現・中京大中京高)で1966年に春夏連覇を達成し、阪急でも内野手として15年間プレーした。元プロ野球選手の目に留まったのは、そのフォームの「素直さ」だという。
「高校1年の時にもたまたま見ていて好印象だったのですが、3年の時に観たらカーブばかりの投球になっていましてね。でもフォーム観たら、これは良くなるかなと思いました」

 大学入学後について中尾は「ストレートばかり投げていましたね」と振り返るように、平林監督と加藤英夫コーチ(平林監督とともに春夏連覇した元近鉄投手)は、変化球に逃げることなく、ストレートのキレをつけさせることに時間を割いた。
 また、中尾を成長させるため勝敗度外視の起用をすることもあった。2年の時には、序盤打ち込まれた中尾が、しきりにベンチに視線を送ってきたことがあった。しかし平林監督は「代えて欲しいということだったと思いますが、僕と加藤コーチで“開き直るまで投げさせるぞ”と言って代えませんでした。ベンチ裏では泣いていましたし、そこで悔しい思いをしたことが大きかったのではないでしょうか」と懐かしむ。
 中尾自身もまた、その経験を振り返り「“もうあんな思いはしたくない”と、あの日を境に練習への意識が変わりました」と言い切る。
 そして、3年春に球速が143km/hにまで上がると、その後も球速はグングンと伸びていき、「ここまで良くなるとは思いませんでした」とスカウトした平林監督も笑う嬉しい誤算となった。

 今はまだ閑散とした大学のグラウンドで試合を行っているが、この4年間の急成長を考えれば、数年後に大歓声を浴びマウンドに上がる姿も十分に想像できる。それだけの球を中尾は日々、投げ込んでいる。

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文・写真:高木遊

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