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Future Heroes

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果敢に強気に 骨折から復活遂げ甲子園初出場を目指すプロ注目左腕 米山魁乙(昌平高3年)【Future Heroes Vol.5】

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★甲子園初出場を狙う好左腕

 観ていて清々しい投げっぷりの良さが光る好左腕が甲子園未出場の昌平(しょうへい/埼玉)にいる。今年3年生となる米山魁乙(かいと)は、角度の良い最速140キロのストレートで左右の打者のインコースを果敢に突き、変化球もスライダー、スローカーブ、チェンジアップを投げ分ける。本塁打を打たれた後に連続三振を奪うような気迫のこもった投球は見応えがある。
 昨夏は2回戦で春日部共栄を破るなど快進撃を牽引し北埼玉大会4強に導き、プロ数球団や強豪大学が熱視線を送る存在だ。

2001年9月28日生まれ。
埼玉県さいたま市出身。
埼玉杉戸ボーイズ(硬式)→昌平高3年。
投手。左投左打。
176cm80kg。

★まさかの骨折

 夏の終わりはまさかのものだった。昨夏の北埼玉大会準決勝の上尾戦。米山は先発登板したが1対1で迎えた3回裏、バントを試みた際に投球が顔面近くに来て慌てて避けたところ、左人差し指がボールとバットの間に挟まれることとなり骨折。交代後の医務室で悔し涙を流した後に病院へ運ばれ、スマートフォンの画面でチームの敗退を知った。最後の夏を終えた先輩たちからは「今までありがとう」「来年頑張れよ」と声をかけてもらったが泣くに泣けなかった。
 秋は東部地区の県大会出場決定戦で花咲徳栄戦に、5日前に投球を再開したばかりというぶっつけ本番で臨み1対8で大敗を喫した。
「もしかしたら勝てるかも」という自信は折らずに投げたが「少しでも甘く入ったら打たれてしまいました」と全国大会常連校の強さを肌で知った。

 指が治るまでは走り込みも指に影響が出るため、下半身のウェイトトレーニングを通常よりも軽い負荷で回数多く行った。また秋季大会敗退後には、練習試合で登板を重ねて投球術を磨いていくと、11月のくまのベースボールフェスタ(和歌山県熊野市)では甲子園常連の敦賀気比(福井)から3失点完投勝利を奪った。その際に球場で見かけたドラフト上位候補右腕・西純矢(創志学園高3年)の体格の良さに刺激を受けてウェイトアップにも努めた。
さらに地道なリハビリ期間を経て「試合で感情をコントロールできるようになりました」と、たくましい精神力を身につけてきた。

★他律から自律

 今年は武器であるインコースへの攻めを磨くとともにスライダーの種類も増やして、より投球に幅をもたせている。また、社会人野球のシダックス(現在廃部)で野村克也監督の指導を受けた黒坂洋介監督のもと、野球ノートで自らを見つめ、目の前の一つひとつのことを大切にして精進を続ける日々だ。
 目標を聞くと「春は関東大会に出ること、夏は甲子園に出ることです」ときっぱりと答えた米山。座右の銘とする「他律から自律」との言葉通り、自らを高めてチームをこれまでにない高みに導きたい。

文・写真=高木遊