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誰が正妻の座を射止めるのか? 個性ある3人の侍捕手考察
記事提供=Baseball Crix

(C)共同通信

 過去のWBCでは、里崎智也、城島健司、阿部慎之助と球界を代表する選手が務めてきた日本代表の正捕手。今大会、キャッチャーとして選出された嶋基宏、大野奨太、小林誠司の3名のうち、どの選手が正妻の座を射止めるのか。それぞれの選手の特徴を踏まえながら、数字で考察する。

打撃が長所の選手は誰

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 まずは捕手陣の打撃面について見てみよう。打者を評価する指標のひとつであるOPSでは、嶋がトップの成績を残していた(表1参照)。特に出塁率は.393をマークしており、これはもし規定打席に達していれば、NPBのトップ10にランクインするほどの好成績である。球界屈指の出塁能力を有していると言えるだろう。

 嶋の打撃には、さらにひとつの特徴がある。それはスピードボールへの対応だ。もともと、バッティングの良い捕手として知られていた嶋だが、昨季は球速145キロ以上の投球に対して打率.424と成績を残している(表2参照)。

 前回優勝のドミニカ共和国やアメリカなど、優勝へのライバルとなるチームにはメジャーで活躍する速球派投手も多くそろうだけに、嶋の打棒が大きな武器となる可能性がある。

守備面では不安も……

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 一方、嶋は守備面でいささか不安なところがある。昨季の盗塁阻止率.194は、規定試合数(シーズン全試合の半数)以上に出場した14捕手の中で、NPBワースト2位だった。

 その盗塁阻止の面で結果を残したのは小林だ。球界屈指とも言われる強肩を武器に、昨季は12球団トップの成績(表3参照)。また、ワンバウンド時に暴投や捕逸で進塁を許した割合も、3選手のなかで最も低い3.9%となっており、相手に進塁を許さないという点では小林に分があると言えそうだ(表4参照)。

 昨年11月の侍ジャパン強化試合ではワンバウンド投球の処理にもろさを見せた小林。ただ、数字が示す通りボールを止める能力自体は持っているだけに、各投手の球種の軌道や特徴を習熟することができれば、より安定したプレーを期待できそうだ。

バランスの取れた大野

 これまで打撃面で嶋、守備面では小林について触れてきたが、あらためてデータを振り返ると、バランスよく成績を残しているのが大野だ。加えて昨季は左投手相手に打率3割超をマーク(表5参照)し、得点圏に走者がいる場面でより結果を残す(表6参照)という傾向も見せている。打線のつなぎ役という面でも、ここ3年間の送りバント成功率は.831と3選手のなかで最も高い(表7参照)。

短期決戦に強いのは誰?

 もしプレーオフが行われなければ、WBCは決勝まで勝ち進んだとしても、合計8試合と短期決戦である。そこで3選手のポストシーズンでの通算成績を見てみると、最も高いOPSを記録したのは大野で、自身のレギュラーシーズン通算の同.602を上回る成績を残している(表8参照)。サンプル数の少なさなどもあってあくまで参考程度ではあるが、大野は短期決戦で結果を残せるタイプなのかもしれない。

 ポストシーズンという1戦の重みが増す舞台の経験も36試合で最も多く、昨季“日本一のチームをけん引した”という実績も加わった大野は、正捕手に近い存在であろう。

第3回大会までのキャッチャー起用法は?

 ここで過去大会から顧みて、今回の捕手の起用法を考えてみたい。第3回までは、軸となる捕手を置きながらも、途中交代などで1選手に偏り過ぎない体制を取るケースが多かった(表9参照)。

 第1回で正捕手を務めたのは里崎。第2ラウンドの1戦目までは、谷繁元信をスタメン起用するなど、他の選手と里崎を併用した。ところが、第2ラウンドの2戦目以降は里崎が全試合フル出場。バットの好調さを買って多くの打席機会を与えられ、里崎は結果的に打率4割超えで打線を引っ張り、捕手としてベストナインにも選出された。

 第2回でも同様の傾向があり、バットで好調さを見せていた城島が大会期間中に正捕手の座を固め、決勝の舞台では4番に抜てきされている(表10参照)。

 今回の捕手陣は、それぞれに一長一短がある反面、決め手を欠く印象も否めない。打撃戦が予想される場合は嶋、左投手が先発ならば大野、走塁意識が高いチーム相手には小林、といったようにおのおのが特徴を生かせる試合で出場し、そこから好調の選手中心へと徐々にシフトする。過去の成功例に則った起用法が、今大会において最も納得度の高いスタメン捕手の決め方なのかもしれない。

※文章、表中のデータはすべて2016年シーズン終了時点

(著者プロフィール)
データスタジアム株式会社
スポーツデータの解析や配信を手掛けるスペシャリスト集団
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