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プロ・アマ交流で巨人OBが大学生を指導!全日本大学野球連盟「冬季特別トレーニング東日本2017」開催

2月14日(火)と15日(水)の2日間にわたり、全日本大学野球連盟主催の「冬季特別トレーニング東日本2017」が神奈川県川崎市多摩区の「読売ジャイアンツ球場・室内練習場」で行われた。

 東日本の40大学から190名近くの選手が参加した今イベントは、11年からプロ・アマ間の交流促進を目的に開かれており、読売ジャイアンツが施設の提供と講師役としてOBを派遣して協力している。

 今年は投手を元監督の堀内 恒夫氏と侍ジャパンテクニカルディレクターも務める鹿取 義隆氏、捕手は元一軍バッテリーコーチの西山 秀二氏が担当。打また、打撃は元・一軍打撃コーチの清水 隆行氏。守備は侍ジャパントップチームコーチの仁志 敏久氏。そして昨シーズンにユニフォームを脱いだばかりの鈴木尚広氏がトレーニング・ランニングを担当した。

 投手パートでは各投手がブルペンに入り、「まずは真ん中を狙って投げ、リリースを安定させること。そうやって、真ん中にしっかりと投げられるようになれば、当然、両サイドもコントロール良く投げられるようになる」「大切なのはトップの位置で肩とヒジが並行になっていること。これはどんなフォームでも共通で、正しい投げ方ができていれば故障もしません」(鹿取氏)2つの投手メソッドを軸に堀内氏や鹿取氏からマンツーマンで指導を受けた。

投球練習を指導する堀内恒夫氏

 実際に選手たちから声を聴くと、明治大のドラフト候補、水野 匡貴(新4年・静岡)はこの指導に接し「これまでの投球練習ではアウトコース低めに投げていましたが、真ん中を狙って投げるように言われました。教えて頂いたツーシームも練習で自分なりにアレンジを加えて、使えるようにがんばりたい」と、これまでと視点の異なる指導に接し、さらなる意欲を燃やしていた。

 また、早稲田大のサウスポー・二山 陽平(新4年・早稲田実)は「体が前に突っ込んで、ボールが荒れてしまう課題を鹿取さんに相談したところ、真っ直ぐ上げていた右足を、少し内側にひねるようにアドバイスされ後ろに重心が残り、突っ込む悪いクセが収まってきたと感じました。これからも継続して練習していきたいです」と笑顔をみせた。

体の使い方を指導する鹿取 義隆氏

 一方、捕手パートの西山氏は、捕手としての体の動かし方を細かく指導。ワンバウンドのボールを止める練習では「いかに早く良い姿勢を作るか、そのスピードが大切」と、素早く動くことを意識させ、ボールが体に当たる瞬間は「体の力を入れてしまいがとだけど、抜いたほうがボールが転がらないですむ」とアドバイスを送っていた。また、「ワンバウンドのボールをとめられる自信があればランナーが3塁にいるピンチの場面でもフォークボールのサインが出せるようになる」と、暴投、捕逸を防ぐことはリード面でのメリットも大きいことを身を持って伝えていた。

 最後の座学では「キャッチャーは考えるのが仕事。よくバッターボックスに入った打者を見ろというが、上のレベルになったら打者の立ち位置は変わらない。だから、前の打席の結果もふまえて、打者の心理という見えないものを見てください」と教え、配球については「ピッチャーは困ったらアウトローというけれど、キャッチャーは常に次のボールを用意しておくこと。そして、全球、なぜこのサインを出したのか説明できるようになってください」と目指す理想像を語っている。

捕手にゴロの処理法を教える西山 秀二氏

 マシンを使ったフリーバッティングやトスバッティングを行った打撃パートでは担当の清水氏が熱血指導を行った。

 まず「バッティングで大事なのはスイングの強さ、タイミング、そしてスイングの軌道」の3つのポイントをあげ、自らボールをトスをしながら指導。また、体が開きやすい選手に対しては傾斜のついた踏み台に投手側の足を乗せて、ノーステップでスイングをさせ、感覚をつかませていた。

 昨年11月には侍ジャパン大学代表選考合宿にも参加した法政大の大西 千洋外野手(新3年・阪南大高)はこの指導法について「ピッチャーから間をとって上体がつっこまないように下半身主導でスイングするように教わりました」と話し、その後のマシンを使ったバッティング練習では「良い感覚で打てた」と手応えを口にした。

 清水氏は質疑応答の時間でも丁寧な対応。スランプ時の対処についての質問では「相手投手に『どうやって対応しようか』と考えるよりも、『走る量を増やしてみよう』とか『スイングの数を増やそう』というように自分でできることに集中したほうが良い。そして、考え方としては『○○をしない』ではなく『○○をしよう』。例えば『ボール球を振らないようにしよう』ではなく、『ストライクを打っていこう』とした方が良い」と返答。

 さらに変化球対応への方法論については「変化球が苦手でも、まずは真っ直ぐに絶対の自信を持つことが大事」と持論を述べ、真っ直ぐに対する自信がついたら「ティーバッティングで真っ直ぐを待ちながら、低めのゆるいボールをセンター前に打つ練習をすれば変化球にも対応できるようになる」と経験談を語った。

清水 隆行氏指導で踏み台を使ったスイング練習に取り組む

 そして今回、初めて実施された守備パートでは仁志氏が内野守備に必要な動きを身に付けるため、細かいダッシュを繰り返しながら前後左右に動くトレーニングを伝授。続いて、ボールを前に出て捕ったり、横や下から送球をする練習を行った。

 ここで仁志氏は「守備はノックだけやればいいわけじゃない。体の動かし方とスタートと送球が組み合わさったものがノックなので、その一つひとつをしっかりと練習することが必要」と諭した。

 また、仁志氏はヒザ立ちの体勢になった選手に向かってノックをし、打球を処理する時は体の前でグラブを「∞の形」に動かして、さばくように捕球するように指示。「体で止めにいくと、キャッチできたとしても体勢が崩れているので送球が遅れてしまう。それに体勢を引いて体の近くで捕ろうとすると、ボールが死角に入って見づらくなってしまうし、グラブに入っても衝撃が小さくてこぼしやすい。だから、なるべく体から離れた位置でグラブで捕るようにしたほうがいい」と一つ上のレベルのプレーを要求した。

∞の形にグラブを動かす仁志 敏久氏

 トレーニング・ランニングパートで鈴木氏が掲げたテーマは「ケガをしない体作り」。様々なトレーニングを伝授していくなかで最も特徴的だったのは、侍ジャパン大学代表候補の慶應義塾大・岩見 雅紀外野手(新4年・比叡山)が「自分はヨガをやっているのですが、息を吐ききっていたつもりでも、実はまだまだだったことが分かった」と目を丸くした呼吸法についての持論であった。

 ここで鈴木氏は「緊張すると呼吸が荒くなって体が固くなります。つまり緊張は呼吸に表れるんです。だから、逆に深く呼吸すれば、体に多くの酸素が取り込まれて緊張の度合いが下がりリラックスできるんです」と概要を説明。具体的には「ヒザを曲げて寝転がって3秒腹から吸って、6秒で吐ききる。そして、吐くときに背中を地面にくっつけるようにし、横隔膜の下にある大腰筋を緩める意識するのがポイント」と話した。

呼吸法を指導する鈴木 尚広氏

 鈴木氏は通算盗塁成功率歴代トップ(200盗塁以上)の極意も惜しげもなく披露。
 「盗塁はスタート、スピード、スライディングが大事だと言われますが、そのなかでも一番大切なのはスタートです。スタートが良くないと中間でスピードが上がりませんし、スピードがなければ良いスライディングもできません」。

 そのスタートについても「ベンチでも常に相手投手を観察し、筋肉がすぐに反応すように準備をしておくことです。あと、実際に盗塁を試みる際は体の力を抜くこと。その方が素早く横に動けて、良いスタートが切れます」と「大学生を指導するのははじめてで、自分もすごく勉強になった」と話す中でも、現役時代さながらの鮮やかな説明をおこなった。

「プロで長く続けてこられた方の言葉は間違ってはいない」(岩見)。「自分では分からなかったところを指摘してもらえたので来てよかった」(二山)と大学生たちも元プロ選手からの金言に何度もうなずいた「冬季特別トレーニング」の2日間。彼らはこの時間で得たすべてを各大学に持ち帰り、自らはもちろん大学野球界、しいては日本野球界のレベルアップに活かしていく。