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清宮から5三振を奪った「未完成のエース」 日大三の背番号8が秘める可能性

球場のどよめきは肌で感じ取っていた。日大三の背番号8のエース左腕、桜井周斗投手は昨秋の東京大会決勝で、怪物スラッガー、早実・清宮幸太郎から5打席連続三振を奪った。試合は逆転サヨナラで準優勝に終わったが、野球の神様も甲子園でこのチームを見たかったのだろうか。センバツ選考で、激戦となった関東・東京の最後の枠に滑り込み、東京から2校が選出。早実とともに6年ぶりの出場切符を手に入れた。

■早実の怪物から5奪三振、高校球界に名前をとどろかせた日大三・桜井周斗

 球場のどよめきは肌で感じ取っていた。日大三の背番号8のエース左腕、桜井周斗投手は昨秋の東京大会決勝で、怪物スラッガー、早実・清宮幸太郎から5打席連続三振を奪った。試合は逆転サヨナラで準優勝に終わったが、野球の神様も甲子園でこのチームを見たかったのだろうか。センバツ選考で、激戦となった関東・東京の最後の枠に滑り込み、東京から2校が選出。早実とともに6年ぶりの出場切符を手に入れた。

 桜井は埼玉県所沢市出身。ヤクルトから地元・西武に移籍してきた同じ左腕の石井一久に憧れた。「ストレートとスライダーで三振をたくさん取れるので魅力的だと感じています」。自分が同じような投手を目指すきっかけになった。石井が武器とした球種に磨きをかけて投球スタイルの基本を作り、清宮のバットもワンバウンドするようなスライダーで空を切らせた。

 打撃でも広角に打ち分けられる柔らかさを持っていた。打つことの方が得意だったため、高校進学を境に野手で勝負していくことを決めた。強打の日大三の一角を担って、全国制覇することを夢見た。しかし、転機が訪れた。

 昨夏。上級生の投手陣が故障し、中学時代の投手の経験を買われて、マウンドへ。緊急登板でも好投。突然の登板にも慌てることはなかった。高山俊(現阪神)ら多くの教え子がいる小倉全由監督は「将来が楽しみな素材」と投手でも打者でも一流に育てることを決めた。

■名将・小倉監督「本格的な投手の練習をしていない。非常に楽しみ」

 新チームに入り、背番号8ながら、岡部仁と2枚看板で投手をひっぱる。打っても3番打者。秋季東京大会でチームを決勝まで導いた。出場枠1の東京。センバツ出場への絶対条件は優勝すること。準優勝だと関東5校目との争いになる。だが、決勝で見せた清宮からの5三振は強烈なインパクトを残した。それが、選ばれるひとつの要因でもあった。

 ただ、これはまだ序章に過ぎない。

 小倉監督は「まだ本格的にうちでは投手の練習をしていない。この冬をどう乗り越えるか。まだまだ経験のない投手。非常に楽しみです」と話す。同校の冬の練習は早朝5時から始まる修業の場。走り込みや精神面の強化を乗り越えれば、まだまだ人間としても、選手としてもレベルアップができる、ということだ。

 技術面では「一番はスライダーのコントロール。今は力任せに投げている。腕が振れているから、相手も振ってくれている。けれど、もうひとつコントロールが絶対に狙ったところに投げられるようにならないといけない」と課題を挙げる。

 東京大会決勝で高校球界にその名をとどろかせた好投も、名将からみれば未完成の投手というところ。桜井は今、下半身を徹底的に鍛え、安定したフォームの習得に取り組んでいる。今年のセンバツは強打者に注目が集まっているが、ひと冬を越えてトレーニングを積んだ投手たちの中からも、きっと脚光を浴びる存在が出てくるだろう。

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