BASEBALL GATE

侍ジャパン

【Baseball Gate Analysis】二軍成績からブレーク候補投手を探る

 いよいよ始まった春季キャンプ。侍ジャパンのメンバーを筆頭に、各チームの主力や新入団選手の一挙一動に注目が集まっている。その中で、若手の動向を気にかけるファンも多いはずだ。練習試合やオープン戦などの実戦を含めて、この時期は首脳陣にアピールする絶好のチャンスといえる。そんな一軍実績が少ない選手の期待値を計る上で、参考に用いられる材料が二軍成績だろう。

 近年を振り返っても、2012年にウエスタンで最優秀防御率のタイトルに輝いた千賀滉大(ソフトバンク)が翌年にリリーフでブレーク。15年にイースタン最多の122奪三振を記録した高梨裕稔(日本ハム)が昨年の新人王に選出されたケースなどがある。では、二軍成績から一軍での活躍を計れる指標はないだろうか。今回は投手に絞って見ていきたい。

■見るべきは「奪三振」と「与四球」

 まず、直近の傾向を知るうえでのサンプルとして、のべ339投手の各種データを年度間の相関係数で表した(表1参照)。基準を一定の登板機会が与えられた投手に限定するため、対象は当該年の二軍投球回と翌年一軍投球回がそれぞれ20以上とした。11年の二軍成績と12年の一軍成績を比較、12年の二軍成績と13年の一軍成績を比較…といった具合だ。なお、シーズン中に移籍を経た投手(15年の矢貫俊之[日本ハム→巨人]など)や、両リーグに所属した投手(14年の山中浩史[ソフトバンク→ヤクルト]など)の成績は1年内で合算している。

 相関係数は0に近いほど関係は薄く、1(-1)に近づくほど関係が強い。表を見る前から想像がついた方も少なくないだろうが、どの成績も翌年の一軍で再現させることはかなり難しい。特に勝利数や勝率といった、起用法や投手以外の力が関わる数字の相関はほとんどなかった。

 以上を踏まえたうえで、比較的相関のありそうなものが「奪三振率」と「与四球率」だ。前年に二軍で奪三振率が高かった投手はその力を、与四球率が良かった投手はフォアボールの少ない投球を見せる可能性を秘めている。また、それぞれのデータの元となる「奪三振」と「与四球」は、所属チームや球場の広さなど、周辺による影響を受けづらいと考えられる。一軍で一定の登板機会を与えられた場合、という前提があるにせよ、参考にする価値のあるデータといえるだろう。

■ダークホースは育成出身右腕

 では、ここからは昨年の二軍奪三振率と与四球率を基準にして、2017年のブレークが期待される選手を見ていく(表2参照)。表中で右上に近いほど、奪三振率と与四球率の両面で能力を備えた投手となっている。注目したいのが、奪三振率13.00で両リーグトップとなった白村明弘(日本ハム)。昨季は二軍で36投球回52奪三振と圧倒的な数字を残し、与四球率も3.00とまずまずだ。15年には一軍で50試合、16年も22試合に登板した実績を持つ右腕。ブレーク候補と表現するにはそぐわないが、さらなる活躍を期待できることは確かだ。

 与四球率で好成績ながら奪三振率が芳しくない投手も多い中、与四球率1点台で奪三振率がNPB平均を上回った石橋良太(楽天)、山田大樹(ソフトバンク)、秋山拓巳(阪神)、安樂智大(楽天)なども押さえておきたい選手だろう。

 一軍経験のある投手の名前が並ぶ中、まだ一軍登板がない投手の有望株は三ツ間卓也(中日)だ。15年育成ドラフト3位で入団した昨季は二軍で35試合に登板。7月以降から先発を任されるようになり、投球回がウエスタン11位タイながら奪三振はリーグ3位の83個を記録した。このオフに晴れて支配下登録を結び、春季キャンプも主力メンバーが名を連ねる北谷組で迎えたことを踏まえると、チームからの期待の大きさを感じさせるところ。二軍では奪三振9.58で与四球率2.42の成績を残したサイド右腕。今季一軍のマウンドで躍動できるか、注目してほしい。

※データは2017年2月1日現在

文:データスタジアム