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高校野球

新兵器を駆使して7回11奪三振の星稜・奥川恭伸 広陵・中井監督「現段階ではお手上げ」【明治神宮野球大会 2回戦 広陵高 - 星稜高】

 第49回明治神宮野球大会の高校の部は、10日の第1試合から2回戦に入った。星稜はエース奥川恭伸が好投し、9対0(7回コールド)で広陵に完勝。奥川は被安打3、四死球0、奪三振11の快投を見せて完封勝利を挙げた。

奥川が広陵の先頭打者に投じた初球は148キロのストレート。てっきり飛ばしているのかと思ったが、奥川本人は「いつも通り7,8割で、しっかりコースを狙って投げることを考えた」と試合後に振り返っていた。とはいえ初回に3奪三振を奪うと、2回、3回はいずれも2奪三振。圧巻の奪三振ショーだった。
奥川は0-0で迎えた4回表一死2塁のチャンスに、ライトオーバーのタイムリー三塁打を放ち、打のヒーローにもなっている。

奥川恭伸(星稜)


広陵の中井哲之監督は奥川をこう絶賛する。
「このチームであんなピッチャーは見たことがない。現段階ではお手上げです。変化球でストライクが取れて、変化球で勝負ができる」

広陵は11月3日の中国地区大会準決勝で、創志学園の好投手・西純矢を攻略して7得点を奪った。西は奥川とともに2019年のドラフト上位候補で、今夏の選手権で創成館(長崎)から16三振を奪い、完封勝利を挙げた実績も持っている。しかし広陵の名将は奥川には西とまた違う強みがあったと説明する。

「速いといえば西くんの方が少し速かったんですけど、コントロールだとか、緩急だとか、精度は今の時点で奥川くんの方が上。西くんを打つためにはずっと練習をしていて、西君は打てたんです。ボール球を振らずに、真っすぐ仕留めることができていた」

 広陵打線が手を焼いたのは奥川のフォークだった。筆者のカウントでは11奪三振のウイニングショットはフォークが5、スライダーが4、速球が2でフォークが最多。彼のフォークは時速130キロ台と「並の高校生投手の速球」と同等の球威があり、低めのストライクゾーンからボールに落ちる。そんな「キレ」「精度」も持ち合わせていた。

奥川のフォークは今年3月のセンバツ前から投げ始めた新球種で、春夏の甲子園ではほとんど使っていない。しかしそれが神宮では決め球になった。奥川は明かす。

「いつもスライダーばかりになってしまうんですけれど、全国大会で自分の力を試すという意味で、フォークを多めに投げたいと思っていた。しっかり低めに落ちてくれたので、そこはすごく良かった。フォークの練習はあまりしていなかったんですけれど、昨日の練習で少し調整して、行けそうだったので今日は使おうと山瀬(慎之助/捕手)と話し合った。今は投げ方も握り方も全部自分の形でやっています」

7回11奪三振という結果を見れば「狙いに行った」部分もあるのだろうが、彼は7イニングを78球で終えている。そのようなメリハリについて、彼はこう説明する。

「2ストライクまで行けば(三振を)狙って投げます。そこまではしっかりコースを突いて、打って凡打してくれたらラッキーという思いです」

広陵打線も追い込まれた後のスライダー、フォークは警戒していた。しかし内外角のコースを突く奥川の速球を捉えることも決して容易でない。8番・捕手の秋山功太郎は「追い込まれる前に打っていこうと話をしていたけれど、そこを捉え切れなかった」と述べる。

広陵戦の最高球速は自己最速の150キロの迫る149キロ。球速に限っても高2世代の投手の中で屈指だが、奥川は変化球、制球といったスピード以外の武器を既に持っている。

奥川は自身が目指す投球をこう説明する。
「しっかりコースを突くピッチングだったり、力で押せるところは押したり、バッターを見た上手い投球を目指してやっている」

奥川が持つ「引き出しの多さ」「可能性」を強く感じた、神宮大会初戦の快投だった。

【奥川写真】
来秋ドラフト上位候補に挙がる奥川が圧巻の投球を見せた←写真キャプション

★第49回明治神宮野球大会2回戦
星稜 0007002=9
広陵 0000000=0
(7回コールド)
【広陵】●石原、河野、森-秋山
【星稜】○奥川-山瀬

文=大島和人
写真=馬場遼