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高校野球

将来は沢村賞を 大投手のDNAを引き継ぐ大型右腕 引地秀一郎(倉敷商)

「時は来た!ドラフト指名を待つ男たち」

引地 秀一郎 (ひきじ・しゅういちろう)
倉敷商
投手 右投右打 188センチ84キロ
2000年6月3日生まれ
【写真提供:山陽新聞/共同通信イメージズ】

 100回目の夏、ちょっと物議をかもした2年生ピッチャーがいた。創志学園の西純矢はマウンド上で吠えたり、ガッツポーズが派手で控えるように注意を受けた。この西と岡山県大会の準決勝、最高の投手戦を展開したのが引地秀一郎だった。
 その試合、最速タイの151キロを計測するなど気迫があふれた。ソロホームランなど2点に抑えたが、しかし西の投球が上回った。「全国制覇とストレートの甲子園最速」。目標を問われると、いつもそう答えてきたが、ついに叶わなかった。

 岡山市生まれで中学校では部活の軟式野球部だった。3年時に投手として全国大会に出場している。中学での最速は137キロ。余談だが、もし、倉敷商の先輩、星野仙一氏が生きていれば、楽天が指名するか明治大学に入学していたのではないか。

 体格に恵まれた本格派右腕。ノーワインドアップから腕を力強く振る。ボールの球質は重い。ストレートは平均140キロ後半の数字だ。スピードを殺した曲がりの大きなカーブも特徴。左打者の内角に食い込むスライダーも有効だ。
 今年の冬、故障もあって走り込みが十分でなかったが、その分、上半身だけで投げていたフォームを矯正できた。下半身から動き出して後から上半身がついてくるイメージだ。また柔軟性を増すトレーニングにも励んだ。その結果、体重移動がスムーズになり、平均スピードも格段に上がった。

 1年夏に146キロ、2年秋に151キロを出している。昨秋準優勝、この春に県大会優勝を果たした。この夏は3試合に先発しトータルで24イニングで被安打17本、24奪三振5失点。甲子園の舞台で見たい投手だった。

 倉敷商の先輩に高校、明大ではピッチャーだった岡大海(現千葉ロッテ)がいるが、「投手としての能力、素質は岡を数段、上回る。日本で一番速いボールを投げられるようになれ」と森光監督が叱咤してきたという。
 本人は甲子園では金足農の吉田投手に注目していたという。「脱力して工夫するフォームが上手くて感心した」そうだ。力んでバランスを崩すことが多かったので参考になるだろう。
 将来は沢村賞を取る、と既にプロでの目標が明確だ。誰も手のつけられない投手が理想だそうで、ハートも強い。西もそうだが、岡山の投手は熱いのだ。