BASEBALL GATE

プロ野球

3年連続Bクラス、監督交代、主将が初球宴出場…西武の2016年10大ニュース


終始下位に低迷した西武ライオンズにとって、2016年は非常に苦しいシーズンだった。記録達成など、個人成績には明るい話題も少なからずあったが、最高借金21、8カード連続負け越し、失策数101など、チーム成績にはいくつもの厳しい数字が残った。苦戦したこの一年を、10大ニュースで改めて振り返ってみる。

■シーズン後に田邉監督が退任、辻新監督が就任

 終始下位に低迷した西武ライオンズにとって、2016年は非常に苦しいシーズンだった。記録達成など、個人成績には明るい話題も少なからずあったが、最高借金21、8カード連続負け越し、失策数101など、チーム成績にはいくつもの厳しい数字が残った。苦戦したこの一年を、10大ニュースで改めて振り返ってみる。

◯3年連続Bクラス

 田邊徳雄監督体制3年目(2014年は途中から指揮)とあり、今年こそCS出場に期待がかかったが、3年連続Bクラスという悔しい結果に終わった。開幕戦をサヨナラ勝利、2戦目は逆転勝利と、2試合連続で勝負強さを見せ、幸先良くスタートしたかに映ったが、5試合目から3連敗(3月30日・ソフトバンク戦~4月3日楽天戦)。それでも、逆に、4月3日から5連勝を飾り、貯金も4まで増やしたが、終わってみれば貯金はこの時が最大だった。

 4月19日(日本ハム戦)に借金生活に突入すると、以後、シーズン終了まで完済することはできなかった。原因は決して1つではないが、大きかったのが昨季チーム最多勝を挙げた十亀剣が開幕直後から不調で、最後まで復調できなかったことだろう。また、エース岸孝之も4月後半に故障離脱し、最終的に9勝止まりだったほか、野上亮磨も安定感を欠き、ローテーションを守りきれなかった。さらに守護神・高橋朋己が左肘を手術し復帰は未定。野手でも、主砲・中村剛也が昨季後半に悪化した膝の状態が芳しくなく、精彩を欠くなど、核となるべき主力選手の不振、故障が重なったのは痛恨だった。

◯田邊徳雄監督辞任で、後任に辻発彦新監督が就任

 2014年シーズン途中から指揮を執ってきた田邊監督が、3年連続Bクラスという成績不振の責任を取る形で自ら辞意を表明した。2002年に2軍打撃コーチに就任して以来、一貫して若手育成に携わっていただけに、多くの選手と信頼関係を築き、それぞれの特徴を熟知していたはずだったが、そのメリットを活かしきれず。愛弟子たちと『優勝』の悲願を達成することはできなかった。 
 来季からは、「黄金期」と評されたかつてのライオンズで田邊前監督と二遊間を組んでいた辻発彦監督が指揮を執ることとなった。「球際に強く」をテーマに掲げており、どのようにチームを再建していくのか、大いに期待したい。なお、田邊前監督は、来季から『球団本部チームアドバイザー』に就任することが球団から正式に発表された。

■エース岸は楽天にFA移籍

◯「コリジョンルール」に泣く

 本塁での危険な接触を防ぐために今季から導入されたコリジョン(衝突)ルールが、勝敗に大きな影響を及ぼした試合がいくつかあった。1つ目は5月6日の日本ハム戦(西武プリンスドーム)。6回1死満塁、同点に追いつかれた場面で高橋光成が投げたフォークボールが暴投となり、三塁走者に続き、二塁走者も本塁へ突入した。その際、高橋光はこれまで通りに走者と相対する形で捕球体勢に入り、ベース上で交錯。一度は「アウト」と判定されたが、審判団によるビデオ検証の結果、「左足が本塁ベースにかかっている」と、コリジョンルールが適用され、走者生還となった。昨季までであれば、明らかにアウトのケースだけに、ルール改定の難しさを痛感した一戦となった。

 6月14日の広島戦(マツダ)は、さらに痛恨だった。2-2の同点で迎えた9回裏2死一、二塁から、中前安打で二塁走者が一気に本塁へ。このクロスプレーが「アウト」の判定となったが、広島・緒方監督の抗議によりリプレー検証となった。結果、コリジョンルール適用で判定が覆り、一変してサヨナラ負けを喫することとなった。8カード連続負け越しなしと、少しずつ上昇し始めていたチームの流れが、この敗戦を機に14カード連続勝ち越しなしと、一気に降下していったのも、決して偶然ではないはず。それほど、チームにとって痛すぎる“判定負け”だった。

◯エース岸孝之がFA移籍

 2013年オフの涌井秀章(現千葉ロッテ)、片岡治大(現巨人)に続き、またしても主軸選手がFAで他チームへと去って行った。特に岸は、チームの絶対的エースであり、安定感を欠く先発ローテーションの中で「勝利」が計算できる存在だっただけに、この損失は痛恨と言わざるをえない。岸の抜けた穴を、誰が、もしくはどのように埋めていけるかが、来季ライオンズの最大のポイントと言っても過言ではないだろう。

 移籍先は地元・仙台の球団である楽天。苦渋の決断だったとはいえ、この上なくやりがいのある環境であることも間違いない。ライオンズには、岸に憧れ、目標としている若手投手が多数いる。早々に楽天のエースに君臨し、対西武戦では、そうした後輩投手たちと手に汗握る投手戦を繰り広げてくれることを、ぜひとも期待したい。

◯栗山巧が初のオールスター出場で本塁打

 意外にも、プロ15年目にして初めてのオールスター出場。結果的には監督推薦枠での出場決定となったが、ファン投票でも、西武ファンがSNSなどで選出を後押し。ファンにとっても、また、5年連続キャプテンを務める「チームの顔」として球団にとっても念願叶っての夢の舞台出場となった。

 その第1戦(福岡ヤフオクドーム)、7回から左翼守備で出場すると、打席が回ってきたのは9回だった。史上16人目となる、オールスター初打席初本塁打を記録し、敢闘賞にも輝いた。「プロ野球ファンが注目するところで結果が出せて、すごく嬉しかったです」と話すなど、栗山自身にとっても忘れ難い経験となった。

■金子が盗塁王&菊池が初2桁勝利

◯金子侑司が盗塁王獲得

 53盗塁で、糸井嘉男選手(オリックス)と共に『盗塁王』を初受賞した。これまで21盗塁が自身最多だったが、激増した裏には、何と言っても自己変革が欠かせなかった。昨季までの派手な長打狙いの打撃を捨て、今季は「つなぎ役」「泥臭さ」に徹したことが奏功。元々、足の速さには定評があり、盗塁にも期待されてきたが、その武器を生かすためには、出塁しなければならない。その基本的な部分でプロ入り3年間伸び悩んできたが、今季は「試合に出続ける」「どんな形でも塁に出る」に強い意識を持ったことで、ポテンシャルを大いに発揮しての大活躍となった。

◯菊池雄星投手がプロ7年目で初の2桁勝利

 プロ入り後、常に「2桁勝利」を目標とし続けてきた。2009年、15年と二度、9勝までは到達したものの、どうしても「あと1勝」が挙げられず、涙を飲んできた。そして今年8月26日(日本ハム戦、大宮)、ついに10勝の壁をクリアしたのだった。試合終了直後、「長かった・・・」と、しみじみとつぶやいていたが、その後は内容もさらに充実。最終的に12勝をマークし、チーム最多勝、さらには初めて規定投球回にも到達し、防御率2.58はリーグ2位の成績となった。岸の移籍により、来季はいよいよ本格的にエースとしての結果が求められそうだ。

◯森友哉選手が2年ぶりに捕手復帰

 春季キャンプは捕手として参加したものの、練習試合、オープン戦と打撃で結果が残せず。その原因が『捕手』の守備負担にあると考えた首脳陣は、今季も森の捕手起用を封印した。ところが、7月に一転。再び背番号10がマスクを被る姿が見られるようになった。特に9月からは先発マスクも増え、フルでの捕手起用、勝利に導く試合も重ねていった。また、懸念された打撃への影響もほとんど感じさせず、むしろ打率はプロ3年で最高の.292をマークしたほどだ。体を張った、ガッツ溢れる捕球なども評価され、来季から指揮を執る辻新監督も「捕手としてしか考えてない」と明言。日本球界全体も熱望する「打てる捕手」となれる逸材の来季の飛躍が楽しみだ。

◯「助っ人」ウルフ投手

 先発としてバンヘッケン、ポーリーノ、中継ぎにバスケス、C.C.リーと、「助っ人外国人投手」として多大なる活躍が期待されたが、先発陣は0勝。リリーバーもバスケスは19試合、C.C.リーも18試合の登板のみで、どちらも7月に1軍登録を抹消されてからは、1度も再昇格はできず。戦力となることはできなかった。

 これを受け、球団は7月20日に急遽、日本ハム、ソフトバンクなどで結果を残したブライアン・ウルフを獲得。その初先発(8月28日・日ハム戦)で勝利を挙げてみせると、その後も登板した試合はすべて白星で飾り、外国人投手としては唯一、来季の契約更新を勝ち取った(郭俊麟は除く)。4戦4勝という結果はもちろんだが、球速、またはキレのある直球で押すタイプの投手が多いライオンズ投手陣にとって、少ない球数で内野ゴロに打ち取っていくその投球内容は、「新鮮だった」という。他投手が投球の幅を広げるための参考にもなるという点から見ても、プラスの存在となったことは間違いない。

◯人工芝張り替え

 08年から使用してきた西武プリンスドームの人工芝が全面リニューアルされた。ミズノ株式会社と積水樹脂株式会社が共同開発した「MS Craft Baseball Turf(エムエスクラフト ベースボールターフ)」という、野球専用の人工芝で、本拠地で採用するのは初となった。天然芝に近い性能を誇り、そのクッション性により野球用スパイクを履いた時の衝撃吸収性が格段にアップ。当然、慣れ親しんできた以前とは、打球のバウンドに変化が生じてしまうデメリットも皆無ではなかったであろうが、それ以上に足への負担が軽減されたことは、選手にとっては大きいはず。実際、今季は主力野手で大きな怪我で離脱した選手はほとんどいなかった。

 監督が代わる来季こそは、CS出場を果たし、10大ニュースのすべてが良い内容で溢れることに期待したい。

関連リンク