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阿蘇地域の子供たちを笑顔に― こんなにもすごい“野球の持つチカラ”


12月18、19日の2日間、熊本県の東、大分県寄りに位置する阿蘇地域にてパ・リーグ6球団の7選手(北海道日本ハム・新垣投手、楽天・安樂投手、埼玉西武・岩尾投手、千葉ロッテ・二木投手、オリックス・伊藤選手、福岡ソフトバンク・高谷選手、牧原選手)による“野球を通じた社会貢献活動”が行われた。

■パ6球団合同で続けている社会貢献活動とは

 12月18、19日の2日間、熊本県の東、大分県寄りに位置する阿蘇地域にてパ・リーグ6球団の7選手(北海道日本ハム・新垣投手、楽天・安樂投手、埼玉西武・岩尾投手、千葉ロッテ・二木投手、オリックス・伊藤選手、福岡ソフトバンク・高谷選手、牧原選手)による“野球を通じた社会貢献活動”が行われた。

 この活動は、海外の多くのスポーツ団体が競技とは離れた領域で社会貢献活動を積極的に始めている状況を見聞きし、プロ野球としても必要だという声が高まったことでパシフィックリーグマーケティング(以下PLM)が中心となり2011年に始動。野球が持つ“チカラ”を活用し、社会的意義のある活動を行っていくことを目的としたパ・リーグ6球団合同での試みである。

 このPOB(POWER OF BASEBALL)活動ではこれまでにも、2011年に起きた東日本大震災後から3年間に渡って被災地支援として石巻、南相馬、茨城へ6球団の選手が訪問。それ以外にも老若男女問わず野球を楽しみ、親しみを持ってもらう活動として各地域の人々との交流を深めてきた。今回は2016年4月に熊本周辺で発生した震災がきっかけとなり、このような活動が行われる運びとなった。

「残念なことに今年の春に熊本、大分を中心に地震が起こり、大きな被害が出てしまいました。6球団の選手が訪問する南阿蘇エリアは、熊本市内までを結ぶ主要幹線道路だった阿蘇大橋が崩落し、未だ復旧していない状況です。現状を伝える報道も少ないですし、まずはこのエリアに多くの人の目が向けられるきっかけになればと思い、今回のPOB活動を行わせていただきました」

 PLMの上田元氏は今回のPOB活動が実現した理由についてそう語った。

 では、実際にどのような活動が熊本の阿蘇地域にて行われたのか。パ・リーグ6球団の7選手による2日間のPOB活動を振り返ってみたい。

【1日目・12月18日】
阿蘇ファームランド(大自然健康テーマパーク)
・阿蘇地域の人たちへの豚汁&おむすびの炊き出し
・パ・リーグ6球団のレプリカユニホームをかけたストラックアウトチャレンジ
・室内アトラクション 7選手とスコア対決

 阿蘇ファームランドに到着した7名の選手が、子供たちの待つ「元気の森」に到着。大きな選手たちを目の当たりにした子供たちからは大きな拍手が沸き起こり、いきなり会場のボルテージが最高潮に。そして選手一人一人がMC・古田優児氏からの紹介を受け、1日のイベントがスタートした。

 まずは温かい豚汁とおむすびの炊き出しが選手から子供たちを含む約400名の阿蘇地域の人たちに手渡しで配布され、その後は選手たちも各テーブルで一緒に食事。近くに座った野球少年たちからはたくさんの質問が飛び交い、野球のことから全く関係のないことまで、一つ一つの質問に丁寧に返答する選手たちの姿があった。

 食事を終えると、「パ・リーグ6球団のレプリカユニホームをかけたストラックアウトチャレンジ」へと移行。まずはプロ野球選手の実力を披露するべく、北海道日本ハムの新垣投手がチャレンジするも、なかなか的に当たらず、MCのあおりを受けた子供たちがブーイングをする場面もあり、会場が大きな笑いに包まれる。そして、それを払しょくしようとばかりに、埼玉西武の岩尾投手が次々に的を射抜いていく素晴らしいコントロールを披露し、子供たちにプロ野球選手の凄さを十分に見せ付けた。

 今度は子供たちがストラックアウトに挑戦し、見事的に当たった子供には好きな球団のレプリカユニホームにその場でサインが入れられ、選手から直接プレゼント。ユニホームを手にした子供たちは「やったー!!」と大きな声で喜びを表現し、ストラックアウトを大いに楽しんだ。

 その後、体育館ほどの大きさの室内施設「健康チャレンジ館」に場所をうつし、ここでは選手とのアトラクション対決を実施。全力疾走でどれだけの距離を走れるかという対決や、記憶力勝負、リズム感勝負などのアトラクションで各選手と対決。成績上位者には同じくサイン入りのユニホームが配布された。

■土砂崩れの現場で捧げた黙とう、子供たちとの交流

【2日目・12月19日】
阿蘇大橋
・土砂崩れ現場視察、黙とう

南阿蘇西小学校
・トスバッティング体験
・キャッチボールクラシック対決
・選手と一緒に食べる給食タイム

 2日目はまず、主要幹線道路だったものの現在は土砂崩れにより通行止めとなっている阿蘇大橋を訪問。報道で目にした現場に足を踏み入れた選手たちは言葉を失い、その場で黙とうをささげた。

 その後、近くの南阿蘇村立南阿蘇西小学校を訪問。ここでは体育館でのトスバッティング体験や、キャッチボール対決が行われ、楽天の安樂投手は「勝負だから絶対に負けたらだめ」という勝負の厳しさをしっかりと教える場面も見られた。それ以外にも、福岡ソフトバンクの牧原選手が子供たちと一緒に円陣を組む姿や、オリックスの伊藤選手や千葉ロッテの二木投手が笑顔でプレーを見守るなど、心温まる場面もたくさん見ることができた。

 運動後には教室で選手たちと一緒に給食を食べるシーンがあり、ここでもプロ野球選手に興味津々の子供たちは次から次へと質問し、これに選手たちが真剣に答える貴重な場が設けられた。常に笑顔が絶えない楽しいひとときを過ごしたのち、クラスの全員が教室の中央に集まり、選手と記念撮影を行うなど、子供たちにとっては何ものにも代えがたい交流が行われた。

 2日間のPOB活動を終えた選手たちは、口をそろえて「元気を与えに来たのに、僕たちが逆に元気をもらいました」とコメント。各選手それぞれのコメントは以下の通りである。

■高谷「個人的にはこういう活動がもっとできたらいいなと感じた」

日本ハム・新垣
「1日でも早く復興してもらいたいと思いましたし、活躍した姿を見せて、元気を与えられればと思いました」

楽天・安樂
「そんなに簡単にできることではないですが、九州の試合であったり、何かしらの形で少しでも元気を与えられるようなプレーをしていきたいです」

西武・岩尾
「頑張って九州の新聞に載って、この学校まで、そして子供たちまで届くように頑張るのが一番いいかなと思いました」

ロッテ・二木
「実際に生で触れ合った僕らが活躍して、それが一番うれしく思ってもらえると思うので、シーズン通して活躍して、僕らの姿を見てもらえるように頑張ります」

オリックス・伊藤
「シーズン中は義援金とかそういう活動しかできなかったので、実際に被災地に来て子供たちと触れ合ったり、ともに時間を過ごして元気だなと感じることができました。これからも僕らが支えていけるように頑張りたいと思います」

ソフトバンク高谷
「個人的にはこういう活動がもっとできたらいいなと感じました。僕らにできることは野球しかないので、その野球を一生懸命頑張っている姿を見せて、元気になってもらえるようなプレーをしたいと思います」

ソフトバンク牧原
「来シーズン、ここで触れ合えた子供たちが胸を張って、『この選手と触れ合ったんだよ』と言ってもらえるように頑張ります」

 観光協会理事も務める阿蘇ファームランド渉外部長・竪山裕史氏は「こんなに多くの子供たちがいっぺんに集まったのは震災後初めての出来事でした」と語り、「これは6球団の選手がいらっしゃらなければ実現しなかったことです」と興奮気味にコメントした。

 前出のPLM上田氏は「これまで伺った地域の皆様に対して、一度来たから終わりということにはしないこと。こういった活動に賛同いただけるパートナーさん達を増やしていくことを軸に、選手の意見もいただきながら活動を続けていきます」とこれからの活動について語り、締めくくった。

 今回のPOB活動の2日間を取材したことで、野球には、プレー以外でも“人を笑顔にする強いチカラ”があると再認識することができた。復興するまで、そして復興してからも。野球の持つチカラで、子供たちをはじめとする、地域の人々の笑顔や元気をこれからもずっと増やしていってくれるだろう。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」編集部 松下雄馬●文

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