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兼任監督2年目、BC福島・岩村明憲監督のモットー「一を聞いて十を知る」


選手兼任監督として、ルートインBCリーグの福島ホープスでの2年目を終えた岩村明憲氏。球団代表という肩書きも増えた今季は、選手としての出場は3試合にとどまったものの、チームは前後期ともに2位、年間勝率2位の成績を収めた。球団

■“3足のわらじ”BC福島率いる岩村、

 選手兼任監督として、ルートインBCリーグの福島ホープスでの2年目を終えた岩村明憲氏。球団代表という肩書きも増えた今季は、選手としての出場は3試合にとどまったものの、チームは前後期ともに2位、年間勝率2位の成績を収めた。球団創設から2年連続で出場した地区チャンピオンシップでは、前後期を連覇した群馬ダイヤモンドペガサスの前に初戦敗退。リーグチャンピオンシップにコマを進めることはできなかった。岩村監督は、シーズン終了から2か月余りが経っても「悔しい。(前後期)両方ともぶっちゃけ優勝が狙えた」と振り返る。

 来季のさらなる躍進に向け、監督として戦力補強に努め、球団社長として地元に愛される球団作りに腐心する日々。シーズンオフも月の半分以上を福島で過ごす岩村監督に、今季のホープス、そして監督業について語ってもらった。

――今季の福島は前後期ともに2位。創設2年目ながら2季連続地区チャンピオンシップに進出しましたが、優勝に1歩及びませんでした。

「今季の成績が不満足ってことはない。でも悔しいね。(前後期)両方とも、ぶっちゃけ優勝が狙えたし、まったく全然違うよっていうレベルじゃなかった。両方とも群馬の平野(謙)監督にうまくやられたなって感じですね。選手は一生懸命やってくれていたけど、俺の力かな。

 前期も後期も、もしここで勝っていれば……っていう場面があった。特に、後期は調子の悪かった4位の武蔵(ベアーズ)に負けてしまった試合が大きく響いた。武蔵とはチームの差がありながら勝てなかった。取りこぼしというか、逆転負けだっただけに、その後も少し引きずった部分があったかもしれないね」

――前期後期に分かれて順位が決まるという方法は、1年を通じて戦う方法と違った難しさがあると思います。

「前期後期に分かれているのは、逆にありがたいと思う。最初は『なんで前後期あるの?』って思ったけど、去年うちは前期が最下位で後期に優勝したでしょ。実際に自分らが恩恵に与ってるんだよね。前期が終わって、間髪入れずに後期が始まるんだけど、メンタル的にリセットできるのは大きいですよ」

■選手に求めることとは…

――選手兼任監督1年目だった昨季は試行錯誤の部分が大きかったと思います。より監督業に専念された今季、采配で心掛けたことはありますか?

「あんまり自分が動かないことだね。選手にとってもチームにとっても、レギュラーだったり打線を固定した方が成績は落ち着くと思う。去年の始めは、やっぱり監督になって初めてだから、自分も浮き足立っていた。ここで守備を入れ替えようとか、ここで代打を投入しようとか、自分で動き過ぎていたから、去年の前期は最下位になってしまった。それで思ったね。監督っていうのは、とにかく忍耐だって。“仰木マジック”なんてあったけど、自分はまだその域にはないから」

――忍耐ですか……難しそうですね(笑)。

「とにかく我慢(笑)。もどかしさはすごくあったけど、基本は大きく変えない。打線だったら、4番にボウカーという軸がある。2番・貴規、3番・岡下(大将)で、5番は引退した小倉(信之)。打線が固定できたのはよかった」

――NPBでもMLBでも、強いチームは打線が固定されています。

「選手が腰を据えて試合ができると思う。自分の役割が分かっているから、慌てる必要もないし、勝負どころも分かる。自分のモチベーションを整えるだけじゃなくて、100パーセントのパフォーマンスを出せるように準備できるから、楽ですよね。

 選手に常に言っているのは、俺がどこでどういうことをやりたいか分かれよなっていうこと。それを理解して、自分らで考えて準備をしろって。相手の左投手が準備していたら、右打者、お前準備しろよ。足の遅い選手に打順が回ってきそうだったら、足の速い選手は代走準備しておけよ。こういうことは、こっちから言うんじゃなくて、自分たちで考えてできた方が次につながる。言われるがままにやるんじゃなくて、とりあえず自分で動く。それでズレていることがあるかもしれないけど、指示待ち人間より断然いいよ。それが一般に言う“仕事”でしょ。それこそ代打なんていったら、集中がすごく大事。その集中したピークを打席に合わせないといけない。それには、自分で動いて準備するしかないよね」

■投手起用へのこだわり、「…はさせたくない」

――自主的に準備をする姿は、監督やコーチも見ています。

「もちろん、しっかり準備をする姿を見れば、使ってやりたいなって思う。だって人間だもん。でも、俺も今のこの立場になって、初めて気付いた部分もあるんだよね。選手の時は、監督の指示がないと『なんだ早く言えよ』みたいに思ったこともあった(笑)。だからこそ、俺のやり方は大きく変えずにいくから、選手はそれを理解した上で、自分で考えながらプレーしてほしいね」

――投手起用にもこだわりがあるようですね。

「俺はイニングまたぎ(で投げさせること)はさせたくない。あまりいいことはないと思うんだよね。イニングをまたいで投げさせるっていうことは、9回に出る抑え投手を8回の2アウトに投入したり、比較的ピンチの時にお願いしている。例えば、5回2/3で先発ピッチャーが降板したとする。その後に対戦する打者が右右左左だとしたら、2番手でマウンドに上がったリリーフは最初に右打者と勝負。ここでしっかり抑えて6回を終えたとしよう。7回先頭は右打者だけど、その後は左が2人続く。じゃ、どうしますかって考えた時、右打者だから『もう1人行こうか』って2番手投手をそのまま投げさせると、大体フォアボールなんですよ。ここで左投手を持ってきても遅い。フォアボールの段階で流れが相手に行っちゃっているから。

 6回2アウト、ランナー二、三塁、もちろん満塁でもいいんだけど、ピンチの場面で自分がマウンドに上がって、ものすごい集中力の中でアウトを取ってピンチを乗り切ったら、誰だってマウンドからベンチに戻る時に、少しはホッとするでしょ。ホッとした後に、また集中力を高めるのは難しいんだよね。大体落とし穴が待ってるから。それがフォアボールだったり、ヒットだったり。だから、イニングをまたいで投手を起用するのは、俺はあまり好きじゃない。だったら、回の頭から変えた方がピッチャーは投げやすいと思うんだよね」

■「野球はやっぱり二手三手先のことを考えていかないと…」

――なるほど。その他にも、チームを指揮する上で意識することはありますか?

「うちのモットーは『一を聞いて十を知る』なんですよ。何でかっていうと、今の子たちって、七を聞いてやっと十を知れるかどうか。一じゃなくて七聞かないと分からないんだよ。過保護と言ったら言い過ぎかもしれないけど、近いものはある。昔はヒントしか与えられなかったのに、今はすべてのインフォメーションを与えてしまう。ある程度の答えを教えた後で、本回答を求めている感じ。でも、野球はそれじゃダメだって。野球はやっぱり二手三手先のことを考えていかないと『お前そんなのも分からないの?』って言われるから」

――確かに、与えられる情報が多いと、自分で考えなくなりますね。

「頭でっかちになるから、すぐ屁理屈ばっかり言って、イラッとするんだよ(笑)。だから、選手には『一を聞いて十を知りなさい。空気を察しなさい。できる選手は空気が読めるぞ』って話をしている。耳にタコができるくらい言ってるから、俺が『できる選手は?』って言うと、選手は『空気が読めます!』って答えるんだよ。

 もう1つある。守備練習の時に、選手がノックの球をグラブの土手に当てて弾くことがあるでしょ。もしグラブを弾かないで、かすめもしなかったら仕方ない。だけど、グラブに当てたら、取れる可能性はある。最後は自分のさじ加減なんだから、ノックをしながら『絶対に取らんかいっ!』って言い続けてたの。だから、今では俺が『グラブに当てたら?』って聞くと、選手は『はい、絶対捕ります!』って合い言葉みたいになった(笑)。この2つはかなり浸透したね。

――(笑)、チームを指揮する上で、岩村さん流を確立しているところだと思いますが、これまで出会った監督を参考になさっている部分も多いと思います。その中でも、今季シカゴ・カブスを108年ぶりの世界一に導いたジョー・マドン監督との出会いは大きかったんじゃないですか?

「デカイですよ。ジョーの存在は」

(続く)

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