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激動の1年― 輝き取り戻したヤクルト坂口が激白「FAは全く頭になかった」


信念を貫き、裸一貫で勝負を挑んだ男が再び輝きを取り戻した。昨年オフにオリックスからヤクルトに移籍した坂口智隆外野手。「もう一度、野球人として勝負したかった」と、自ら自由契約を選択してまで挑んだこの1年間を本人に振り返ってもらった。

■「独立リーグでも野球をやるつもりだった」―、新天地で輝き取り戻した32歳

 信念を貫き、裸一貫で勝負を挑んだ男が再び輝きを取り戻した。昨年オフにオリックスからヤクルトに移籍した坂口智隆外野手。春季キャンプ、オープン戦と結果を残して自らの手でレギュラーを勝ち取り、主に「1番・中堅」として141試合に出場。155安打を放ち、打率.295、39打点、7盗塁。141試合、607打席はチームトップだった。

「もう一度、野球人として勝負したかった」と、自ら自由契約を選択してまで挑んだこの1年間を本人に振り返ってもらった。

――プロ14年目の今季は自身初のセ・リーグで迎えた。トップバッターとしてチームを支えたのは間違いない。1年前に今季の状況を想像できましたか?

「去年の今頃は不安の方が大きかった。チームが決まらなかったら独立リーグでも野球をやるつもりだったので。でも、自分の中ではまだできる。試合に出続けることが出来れば、ある程度の数字を残せる自信はあった。そういった環境を作ってくれたヤクルトには本当に感謝しています」

――150安打はオリックス時代の2011年以来(この年は175安打で最多安打)。セ・パでリーグは違うが、見事な復活劇でした。

「シーズン中は『セ・リーグの投手は打ちやすいの?』とか聞かれることが多かったですが、そんなことは全然ないですね。『何か変えた?』とかも言われましたが、今までとほとんど同じだったから。強いて言えばずっと試合に出ることができたことかな。生きたボールを見て、体もそれに慣れてくる。ここ数年はずっと試合に出ることが少なかったから、シーズン当初は体が疲れてましたね。いい意味での張りとか久しぶりの感覚がどこか嬉しかったりした」

■誓う「恩返し」、「1年だけ数字残しても意味がない」

――シーズン途中から1、2番に固定されチャンスメーカーとしてチームに欠かせない存在に。四死球71はプロ入り14年目で最多の数字だった。守備ではリーグ最多の捕殺9、失策0とゴールデングラブ賞4回獲得した実力を見せつけた。

「打率、安打数のことよりも自分自身は四球の数が増えたことはよかった。1番、2番の役割は塁に出ること。ここの数が増えることで出塁率は上がるから。チームが自分に何を求めているのか考えたらそこになる。打点を挙げるのは哲人(山田)、バレンティン、慎吾(川端)、畠山さんといっぱいいるから。守備に関してもまだやれる所は少しは見せられたと思います。あとはチームが優勝できなかったことが一番。去年、優勝していて今年は5位ですからね」

――人生で初めて関西の地を離れ1年。東京での暮らしはどうですか?

「初めは右も左も分からなかった。同級生の大引に球場まで送ってもらったりしました。家を決めるのもだいぶ悩みましたから。でも、慣れれば住み心地もいいし、今はもう関東人です(笑)。オフに関西に戻ってきても標準語で話してやりますから(笑)」

――オフの契約更改では4000万円増の7000万円で一発サイン。保有していた国内FA権も行使せず残留することになった。

「FAは全く頭になかったです。拾ってくれたヤクルトに恩返しすることが一番ですから。1年だけ数字を残しても意味がない。来年は優勝した上で今年以上の数字を残せるようにしたいですね」。

 激動の1年だったが、本人は「あの経験は自分を成長させてくれた」と笑顔で振り返る。12月は地元・兵庫に戻り連日、自主トレーニングを行っている。オリックスで栄光をつかみ、そして挫折も味わった坂口智隆。プロ野球人生の第2章はまだ始まったばかりだ。

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