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高校野球

先輩・松井秀喜氏が始球式
星稜が新たな歴史にむけて好発進

【写真提供=共同通信社】 藤蔭―星稜  藤蔭に快勝し、応援席へ駆けだす星稜ナイン=甲子園

100回の記念大会。今回は歴史に名前を刻んできた先輩たちが始球式をする。開幕日は石川の星稜OBの松井秀喜氏が務めることが発表されていた。
「松井さんがされるので、なんとしても100回の甲子園に出なければ、というプレッシャーが実はあリました」と林和成監督がゲーム後、苦笑いした。
 星稜は石川大会で戦った4試合、投手陣は37イニング無失点、打っては決勝戦で22得点というように4試合で53得点と圧倒して優勝した。
 2年生エースでU―18日本代表候補の奥川恭伸、4番の南保良太郎は県大会5ホーマー、5番のキャプテン・竹谷理央は県大会決勝で4ホーマーとそれぞれ、新記録を作るなどタレント揃い。
 今日の大分・藤蔭との初戦も実力通りの力を発揮した。初回、併殺崩れの間に先制。一度は追いつかれるが、3回、河井陽紀、内山壮真の連続長打で3点。4回は鯰田啓介の3塁打などで2点。6回にも3点を追加、大量リードしてゲームを決定づけた。
 投げては奥川も終盤、ストレートを狙われて3失点したが、「悪いなりによく投げてくれた」と林監督。
 奥川は春の県大会の決勝でセンバツベスト8の日本航空を完封して、さらに成長した。林監督がつづける。
「石川の決勝戦が終わって二日後には肩とひじの状態を確認して、ブルペンにも入ったので、甲子園の先発を決めてました」
 一方の打線は11安打を放ったが、南保が不発。
「またホームランを打ってやろうと力んだ。彼のいいところでもあるので」と監督は次に期待した。

92年夏、「松井の5敬遠」を2年生ショートで経験した林監督。
「甲子園が決まって石川での練習でも、開幕戦からいくから、と言っていた。まさか、その通りになると思ってもみなかったんですよ」
 縁が繋いだ。星稜はまず、大先輩、松井さんに導かれた。
「こういう記念の素晴らしいところで投げられて感謝しています。星稜が開幕戦になって驚きました。自分が着ていた黄色のユニフォームの選手がバックにいて夢のようだった。両チームとも力を出し切ってほしいが、母校の試合は母校を応援したい」
 松井さんは喜びを語った。
 松井さんの現役時代と変わらないフォームからのボールはまだまだ、球速はあったが、ワンバウンド。ボールを受けたキャッチャーの山瀬慎之助は「松井さんの始球式は、いいボールが来ると思っていたんで。しっかり捕ろうと思ったらワンバウンドが来てびっくりした」と笑った。
「センターから松井さんを見ましたが、背中だけでも大きい」と言ったのは鯰田だった。
 林監督は昨日、松井さんに電話した、と言う。
「オレの始球式は関係無い。意識するなと言われました。監督のお前が一番心配だと(笑)ワンバウンドで、そう言う自分が力んでいましたよね。松井さんと三遊間を組んでいたんだなと感慨深くて、ひとりでジーンときてました。星稜を卒業してから、母校の野球を見るのは初めてだと言っていたので、校歌を歌ってくれましたか、と。無失策で星稜の野球を見せられた。どうですか、当時よりいいゲームができていたでしょ、と言いたい」
星稜ナインは「マウンドの松井さんの後ろで守りたい」とゲーム前、思っていたそうだ。先行後攻のジャンケンに勝って、1回の表は守りについて、願いがかなった。
 星稜は95年の77回大会に準優勝しているが頂天には立っていない。今年のセンバツはベスト8だった。
「まだまだその上の力は足りないんだよ、と言われているんだと思います」
 林監督はセンバツで負けたゲーム後に、夏の巻き返しを誓っていた。
 そういえばこんなことも。
「今年の冬は雪が膝ぐらいまで残っていて多かった。その分、室内でじっくりティーバッティングをして基礎を固めてきました。(松井さんを育てた)山下智茂名誉監督が言うんです。星稜の野球は冬に上手くなる、と」
 このチームは自分が監督になって最も力の無いチームと思ったそうだ。そこから打線も強化され、エースも成長。この夏には中学時代、全国優勝の経験のある1年生の内山を3番ショートに抜てきして、強力なチームに育てあげた。
 レジェンドとの幸運な共演は終えた。
松井さんはマウンドで投球が終わったあと、奥川に言葉をかけた。
「楽しんで」
楽しんだ先に、星稜のさらなる高み、新たな歴史をつくる夏になるだろうか。
(文・清水岳志)